「~にかかっては」と「~にかけては」
「~にかかっては」(「~にかかったら」「~にかかると」)と「~にかけては」は、形だけを見るとよく似ています。
しかし、前に来る言葉と、文の中で注目しているものが違います。
| 表現 | 前に来る言葉 | 意味 | 注目するもの |
|---|---|---|---|
| ~にかかっては | 人・組織など | その人の手によると | 人が対象に与える影響 |
| ~にかけては | 分野・能力・技術など | その分野については | 人が得意とする分野 |
まず、例文を比べてみましょう。
① 田中さんにかかっては、どんな難しい機械の故障も、すぐに直ってしまう。
→ 田中さんの手にかかると、難しい機械も直される。
② 機械の修理にかけては、田中さんの右に出る者はいない。
→ 機械の修理という分野では、田中さんが最も優れている。

1.「~にかかっては」の意味と使い方
「~にかかっては」は、ある人や組織の力、能力、技術、性格などによって、対象が大きな影響を受けることを表します。
名詞+にかかっては
・あの名医にかかっては、難しい手術も簡単に見えてしまう。
・料理のプロにかかっては、残り物も豪華な一品に変わる。
・先生にかかっては、私の小さなうそなどすぐに見破られてしまう。
・いたずら好きの弟にかかっては、新しいおもちゃも一日で壊されてしまう。
この表現では、前に来る人が「何を得意としているか」よりも、その人の力が対象に及ぶと、どのような結果になるかに注目しています。
よい結果にも、悪い結果にも使える
「~にかかっては」は、優れた能力を表す場合だけでなく、困った性格や強い影響力を表す場合にも使えます。
| 結果 | 例文 |
|---|---|
| よい結果 | あの医師にかかっては、どんな患者も安心して治療を受けられる。 |
| 悪い結果 | あの悪徳業者にかかっては、知識のない客は簡単にだまされてしまう。 |
| 意外な変化 | 子どもたちにかかっては、古い段ボールも立派な秘密基地になる。 |
後ろには「~てしまう」「~られる」「~になる」など、対象に生じた変化や結果を表す文がよく続きます。
2.「~にかけては」の意味と使い方
「~にかけては」は、ある分野や能力について、その人が特に優れていることを表します。
名詞+にかけては
・数学にかけては、彼の右に出る者はいない。
・料理にかけては、母はプロにも負けない。
・人の名前を覚えることにかけては、彼女は社内で一番だ。
・商品の知識にかけては、山田さんほど詳しい人はいない。
前に来るのは、「数学」「料理」「記憶力」「経験」「技術」など、評価や比較の対象となる分野です。
後ろには高い評価が続く
「~にかけては」の後ろには、次のような高い評価を表す表現がよく続きます。
・誰にも負けない
・右に出る者はいない
・一番だ
・人並み以上だ
・専門家にも引けを取らない
そのため、普通は否定的な評価には使いません。
〇 計算の速さにかけては、彼はクラスで一番だ。
△ 計算の速さにかけては、彼はクラスで一番遅い。
二つ目の文は文法的に完全な誤りとは言い切れませんが、「~にかけては」は長所や優れた能力を取り上げることが多いため、不自然に感じられます。
3.二つの違いを同じ場面で比較
料理人の場合
・あの料理人にかかっては、普通の野菜も高級料理に変わる。
→ 料理人の手によって、野菜が変化する。
・野菜料理にかけては、あの料理人は日本でも有数の腕前だ。
→ 野菜料理という分野で、料理人を評価する。
名探偵の場合
・あの探偵にかかっては、複雑な事件もすぐに解決されてしまう。
→ 探偵の力が事件に及ぶ。
・事件の推理にかけては、あの探偵にかなう者はいない。
→ 推理という分野で探偵を評価する。
| 確認ポイント | ~にかかっては | ~にかけては |
|---|---|---|
| 前の名詞 | 力を及ぼす人・組織 | 得意な分野・能力 |
| 中心となる意味 | その人の手にかかると | その分野については |
| 注目点 | 対象に起こる変化や結果 | 人の優れた能力 |
| 評価 | よい結果・悪い結果の両方 | 基本的に高い評価 |
4.「人」と「分野」を見分けよう
二つを使い分けるときは、空欄の前にある名詞を確認すると分かりやすくなります。
・田中さん(人)__、どんなパソコンの故障もすぐ直る。
→ 田中さんにかかっては
・パソコンの修理(分野)__、田中さんは会社で一番詳しい。
→ パソコンの修理にかけては
5.よくある間違い
間違い① 人の後ろに「~にかけては」を使う
× 山田さんにかけては、どんな機械も直してしまう。
〇 山田さんにかかっては、どんな機械も直されてしまう。
「山田さん」は分野ではなく、機械に力を及ぼす人です。
間違い② 分野の後ろに「~にかかっては」を使う
× 機械の修理にかかっては、山田さんの右に出る者はいない。
〇 機械の修理にかけては、山田さんの右に出る者はいない。
「機械の修理」は、山田さんを評価するための分野です。
注意:「病気にかかっては」は別の形
次の「~にかかっては」は、今回説明しているN1文法とは異なります。
・今、病気にかかっては困る。
この文は、動詞「病気にかかる」に条件の「ては」がついた形で、「病気になったら困る」という意味です。
N1文法の「~にかかっては」は、次のように人や組織の影響力を表します。
・あの先生にかかっては、難しい文法も簡単に理解できる。
6.練習問題
( )に「にかかっては」または「にかけては」を入れてください。
① この職人( )、普通の木も美しい家具に生まれ変わる。
② 木工技術( )、この職人は国内でもトップクラスだ。
③ あの弁護士( )、不利な裁判も逆転してしまうことがある。
④ 交渉力( )、彼にかなう社員はいない。
① にかかっては
② にかけては
③ にかかっては
④ にかけては
まとめ
| 表現 | 簡単な意味 | 覚え方 |
|---|---|---|
| ~にかかっては | その人の手にかかると | 人の力によって対象が変化する |
| ~にかけては | その分野については | 得意分野で人を評価する |
以上です。



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