「小」の意味 大と小のはなし(Ⅱ)

大小、小の意味
大小、小の意味

「小」の意味はいくつある?

小鼻 突然ですが、鼻の両脇にある小さなふくらみを日本語でなんというか知っていますか?

 答えは「小鼻」(こばな)です。小さい鼻という意味でしょう。同様の身体部分に「小」をつける言い方として「小首をかしげる」「小腹が空く」などが代表的です。

 では「小首」つまり小さい首ってどこにあるんでしょうか、そして「小腹」も…。謎ですね。

 次の4つの言葉、それぞれ意味がわかりますか?

 ・小正月   ・小ぎれい   ・小腹が空く   ・小一時間
 ひとつづつ確認していきましょう。

小正月(こしょうがつ)

小正月の小豆粥

小正月の小豆粥

正月十五日または十四日~十六日に渡って行われる新年のお祝い。中国の元宵節にあたるものです。現代の日本ではあまり意識されることもなくなりました。お正月(ちなみに日本では陽暦1月1日元旦)の小規模版ということなので、この「小」は「small」という意味ですね。「小鼻」の「小」もこれに当たります。

小ぎれい(こぎれい)

 特に「きれい!」と言うほどではないけれど、ほど良く整っていて清潔なようすをいいます。「小ぎれいな部屋」「小ぎれいな服装」とよく言います。ここでの「小」は「はっきり認められないが、その傾向を示す」という意味合いになります。

小腹が空く(こばらがすく)

 これは「少しお腹が空く」という意味です。「小腹」という場所があるわけではありません。この「小」は「少し~」という意味です。つまり「小腹が空く」とは「少しお腹が空く」という意味になります。

ネガティブな小もあるので注意

 この意味の「小」については「小利口」「小細工」「小手先」「小汚い」などのように「話者が本来の言葉よりも不愉快な印象を持っている」ことを意味するものもあるので注意しましょう。

小一時間(こいちじかん)

 小一時間は一時間に少し足りない程度。具体的には50分ぐらいのイメージで「一時間足らず」と同じぐらいです。ですからこの「小」は「もう少しで単位量に届く」ぐらいの意味になります。辞書的には「小一里」「小一年」「小一時間」などがありますが、実際使うのは「小一時間」ぐらいだと思います。

「小」の意味まとめ

以上4つの意味についてまとめます。

「小」の4つの意味と例

「小」の4つの意味と例

「(はっきり認められないが)~の傾向がある」「少し~」の意味については、慣用的な表現が多いので、例文をあげておきましょう。

小首をかしげる

小首をかしげる

  • 彼女は安いアパートに住んでいるが、いつも小ぎれいにしているで住みやすい。
  • 彼は派手ではないが、小ざっぱりした身なりをしているので印象が良い。
  • 遅刻しそうになったので二人は小走りで教室に向かった。
  • 日経平均は小じっかり、下落の心配はない。
  • 彼女は小首をかしげている、どうやらよくわかっていないようだ。
  • 小腹が空いたので、ビスケットを3枚食べた。
  • 彼が留学するという噂を小耳にはさんだ
  • 小太りのおじさんがすき家で牛丼を食べていた。

小股の切れ上がった女性とは?

 死語になりつつある言葉かもしれませんが、女性の容姿を読める言葉に「小股の切れ上がった」というのがあります。最新の辞書によると、

小股の切れ上がった:またが普通より少し上の位置まである〔女性の〕足が長くて腰が高く、すらりとした様子。「—女」 三省堂国語辞典第八版
素敵な女性 とあるように、上にまとめた「小」の意味の中では「少し~」つまり「少し股が切れ上がった」という解釈になっているようです。実際Yahooで「小股の切れ上がった」で画僧検索をしてみると、いかにも足の長い女性の姿が出てきます。
 しかし、この言葉は江戸時代から使われていた言葉とか。江戸時代なら男性も女性も和服を着ていた時代、スカートのように足を露出する習慣はなかったので、足の長さを女性の容姿の基準にすることもなかったのではと思ってしまいます。
 画像検索では「小股の切れ上がった女性」として左のような写真も見つかりました。
洒落本から どうも足長という意味ではないらしいということで、「小股」というのを身体の別のところにある「小さな股」つまり”small”と解釈して足の親指と人差し指の股である、あるいはどこが股なのかよくわかりませんが、うなじのことであるという俗説もあるようなのです。
 そういうわけでねとで調べてみると、小学館の辞書サイトの中のコラム「WEB日本語」にかなり信頼できそうな記事がありました。以下、図版共に引用させていただきます。
 「江戸時代の安永4年(1775)に出版された洒落本『後編風俗通』の中に描かれた「小股の切れ上がった女性」の絵が右のものという。説明には「その容姿は首が抜け出たように伸び、胴が短く足が長く腰細くて股が切れ上がり、前かがみで腰下は反るようなスタイル」とあるといいます。」
 つまり首元、から胴体、足、姿勢まで含めた総合評価で魅力的な女性を「小股の切れ上がった」簪(かんざし)というその特徴で代表させている、一種の比喩表現のようなものとして説明されているそうです。
 さらに「WEB日本語」の記事は続きます。
「もっとはっきり表現している資料がないかと調べると日本人にとっては馴染みの深い「弥次さん喜多さん」の登場する『東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)』を書いた十返舎一九(じっぺんしゃいっく)の滑稽本『於都里綺(おつりき)』(文化7年〈1810〉刊)の中で、簪(かんざし)の影絵が紹介されており。筆者はそんな簪(かんざし)を評して「やつぱりこんなに小またのきれあがつたやつがいいね」と記している。」とのことです。
 「小股の切れ上がった」に関しては依然、諸説ありということかと思います。
(以上、三省堂国語辞典第八版、ニホン語日記②井上ひさし著 文芸春秋刊、「小股の切れ上がった女性」の解釈については図版とも小学館WEB日本語中のシリーズ記事「その言葉、江戸っ子だってね!?」から全面的に参考にさせていただきました。)
 

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