『VIVANT』に出てくる難しい日本語6選|意味と出典をやさしく解説

「VIVANT」難しい日本語6

  人気のテレビドラマ「VIVANT」。ときどき、普段の会話ではあまり耳にしない、少し古風で難しい表現が出てきます。「天網恢恢」「鶏群の一鶴」などとなると、日本人でもすぐには意味が分からないかもしれません。ところが調べてみると、こうした言葉の多くは中国の古典や昔の日本語に由来しています。今回は、最近テレビで耳にした印象的な表現を6つ取り上げ、意味と出典を簡単に見てみましょう。


① 天網恢恢疎にして漏らさず

天網恢恢疎にして漏らさず読み:てんもうかいかい そにして もらさず
意味:悪いことをした人は、一時は逃げられたように見えても、最後には必ず報いを受けるという意味です。
 「天網」は天が張った網、「恢恢」は広く大きい様子を表します。
つまり、
「天の網はとても広く、網の目も粗く見える。しかし悪人を決して取り逃がさない」
というたとえです。

出典:中国の古典『老子』第73章。

『老子』には「天網恢恢、疏而不失」という言葉があります。「疎にして失わず」と覚えている人もいるかもしれません。現在の日本語では「疎にして漏らさず」という形で定着しました。

② 禍福は糾える縄の如し

禍福は糾える縄の如し読み:かふくは あざなえる なわのごとし
意味:幸福と不幸は、より合わせた縄のように互いに絡み合っているという意味です。「禍」は災い、「福」は幸福。
「糾う(あざなう)」とは、二本のものをより合わせて縄にすることです。
今日、不幸だと思ったことが後になって幸運につながることもあります。逆に、幸運だと思っていたことが災いの原因になることもあります。

「人生の幸・不幸は簡単には決められない」という、なかなか含蓄のある言葉です。
出典:一般には中国の『史記』「南越伝」に由来するとされます。「禍が福に変わり、成功と失敗がより合わせた縄のように転じていく」という趣旨の記述があります。

③ 浅い川も深く渡れ

浅い川も深く渡れ

浅い川も深く渡れ

読み:あさいかわも ふかくわたれ
意味:簡単そうに見えることでも油断せず、慎重に行動せよという意味です。
川が浅そうだからといって、適当に歩いて渡ると転んだり、思わぬ深みにはまったりするかもしれません。ですから、
「簡単な仕事ほど油断するな」
「念には念を入れよ」
という教訓になります。

これは中国古典から来た故事成語ではなく、日本で古くから使われてきたことわざです。『精選版 日本国語大辞典』では、1656年の『俳諧・世話尽』として「あさき川もふかふ渡れ」という用例が確認できます。

④ 皇天親無く、惟徳を是れ輔く

皇天親無く、惟徳を是れ輔く読み:こうてん しんなく、ただ とくを これ たすく
※「皇天無親、惟徳是輔」と書かれることもあります。
意味:天は特定の人だけをえこひいきすることはなく、徳のある人を助ける、という意味です。
もっと現代風に言えば、
「天は誰かの味方なのではない。正しい行いをする者の味方になる」

という考え方でしょう。
出典:中国古典の『尚書(書経)』「蔡仲之命」。原文には「皇天無親、惟德是輔」とあります。

⑤ 鶏群の一鶴

鶏群の一鶴読み:けいぐんの いっかく
意味:平凡な人が大勢いる中で、一人だけ際立って優れた人がいることです。
文字通り、
「ニワトリの群れの中に、一羽だけ鶴がいる」
姿を想像すると、とても分かりやすいですね。
背の高い鶴がニワトリの群れの中に立っていれば、一目で目立ちます。
出典:中国の歴史書『晋書』「嵇紹伝」。晋の嵇紹という人物が、人々の中にいる姿を「野鶴が鶏の群れにいるようだ」と評された故事から来ています。

⑥ 眼光紙背に徹す

眼光紙背に徹す読み:がんこう しはいに てっす
意味:文章の表面的な意味だけでなく、その奥に隠された意味まで読み取ることです。「紙背」は「紙の裏側」。
したがって、
「目の光が紙の裏まで突き抜けるほど深く読む」
という、とても視覚的な表現です。
現代語なら、
「行間を読む」
「相手の真意まで読み取る」
に近いでしょう。

面白いのは、この言葉は古代中国の故事成語そのものではないことです。辞書では、江戸時代末期の儒学者・塩谷宕陰が安井息軒を評した文章「安井仲平の東遊するを送る序」にある「書を読むに眼は紙背に透る」という表現に由来するとされています。

6つをまとめると

表現意味出典
天網恢恢疎にして漏らさず悪事は最後には必ず報いを受ける『老子』
禍福は糾える縄の如し幸福と不幸は表裏一体『史記』など
浅い川も深く渡れ簡単なことでも油断するな日本のことわざ
皇天親無く、惟徳を是れ輔く天は徳のある者を助ける『尚書(書経)』
鶏群の一鶴大勢の中で一人だけ抜きん出ている『晋書』
眼光紙背に徹す文章の奥の意味まで読み取る江戸末期の漢文調表現

日本人にとっても難しい言葉です。覚えておくと、思わぬところで役に立つかもしれません。

以上

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