「ワンチャン」??
「ワンチャンある」「ワンチャン行ける」「ワンチャン間に合う」――。
若い人の会話やYouTubeなどを見ていると、「ワンチャン」という言葉をよく耳にします。「ワンチャンス(one chance)の略だろう」ということは分かっても、実際にどう使えばいいのか、いまひとつ分からないという人もいるのではないでしょうか。
会話では、「もしかすると」「ひょっとしたら」「可能性はある」という意味で使われます。
『三省堂国語辞典 第八版』にも「ワンチャン」は収録されています。同辞典では、もともとの「一回のチャンス」という意味に加え、2010年代に広まった用法として、副詞的に「もしかすると」という意味で使われることが説明されています。
用例として挙げられているのが、
「今日はワンチャン残業かも」
という文です。
なるほど、意味は分かりました。では、実際にはどんな場面で使うのでしょうか。今回は、「ワンチャン」を自然に使えるようになることを目標に、たくさんの例を見てみましょう。

「ワンチャン」の基本は「もしかしたら」
現代の「ワンチャン」は、多くの場合、次のように言い換えることができます。
| ワンチャンを使った表現 | 普通の言い方 |
| ワンチャン間に合う | もしかしたら間に合う |
| ワンチャン勝てる | ひょっとしたら勝てる |
| ワンチャン雨かも | もしかしたら雨かもしれない |
| ワンチャンある | 可能性はある |
つまり、「可能性は高くないかもしれない。でも、ないとは言えない」というときに便利な言葉です。
①「ワンチャンある」― 可能性は残っている
最もよく聞く使い方の一つが、「ワンチャンある」です。
「でも最後の問題できたんでしょ? ワンチャンあるんじゃない?」
これは、
「合格する可能性はまだあるんじゃない?」
という意味です。
ほかにも、
・「まだ3点差だから、ワンチャンあるよ」
・「キャンセルが出たら、ワンチャンあるかも」
・「この時間なら、まだワンチャンある」
などと言えます。
②「ワンチャン+動詞」― もしかしたらできる
「ワンチャン」は動詞の前にもよく置かれます。
「走ったらワンチャン間に合うんじゃない?」
この場合は、「走れば、もしかしたら間に合うかもしれない」という意味です。
同じ形で、いろいろな動詞と一緒に使えます。
・ワンチャン勝てる
・ワンチャン行ける
・ワンチャン間に合う
・ワンチャン買える
・ワンチャン受かる
・ワンチャン会える
・ワンチャン予約できる
・ワンチャン逆転できる
このように見ると、「ワンチャン」はかなり「もしかしたら」に近い働きをしていることが分かります。
③「ワンチャン~かも」― ひょっとするとそうなる
もう一つ非常によく使われるのが、
ワンチャン + ~かも
という形です。
「忙しいから、ワンチャン残業かも。」
つまり、「もしかすると残業になるかもしれない」ということです。
・「天気悪いね。ワンチャン雨かも」
・「先生まだ来てないね。ワンチャン休講かも」
・「あの店、今日ワンチャン休みかも」
・「電車止まってるから、ワンチャン遅刻かも」
「もしかしたら」よりも軽く、くだけた感じになります。
④「ワンチャン~じゃない?」― もしかしてできるんじゃない?
相手に可能性を示すときには、「ワンチャン~じゃない?」もよく使われます。
「当日券ならワンチャン買えるんじゃない?」
これは、
「当日券なら、ひょっとしたら買えるんじゃない?」
という意味です。
・「今から行けば、ワンチャン間に合うんじゃない?」
・「あと一本ホームランが出れば、ワンチャン逆転できるんじゃない?」
・「直接頼んだら、ワンチャンOKしてくれるんじゃない?」
「ワンチャン」は「可能性が低い」ときだけ?
ここが少し難しいところです。
「ワンチャン」は一般に、可能性がそれほど高くないものについて「でも、ひょっとしたら」と言うときによく使われます。
たとえば、
「残り10分で2点差。ワンチャンあるぞ!」
と言えば、「勝つ可能性は十分高い」というより、「厳しいけれど、まだ可能性は残っている」という感じがあります。
ただし、実際の会話ではそこまで厳密ではありません。
単に「ひょっとすると」「場合によっては」ぐらいの軽い気持ちで使われることも増えています。
「一回だけチャンスがある」という意味ではない
英語の one chance から考えると、
ワンチャン = 一回だけチャンスがある
と思ってしまいそうです。
しかし、今の若者言葉としての「ワンチャン」は、そうではありません。
たとえば、
「明日、ワンチャン雪かも」
と言っても、「雪が降るチャンスが一回ある」という意味ではありません。
「もしかしたら雪が降るかもしれない」という意味です。
ここまで来ると、「ワンチャン」は単なる「ワンチャンス」の略というより、一つの副詞のように使われる日本語になってきたと考えたほうが分かりやすいでしょう。
「ワンチャン」と「もしかしたら」の違い
| 表現 | 感じ |
| もしかしたら | 普通。年齢を問わず使える |
| ひょっとしたら | 普通の会話表現 |
| ワンチャン | かなりくだけた会話的な表現 |
たとえば、
○「もしかしたら明日は雨になるかもしれません。」
○「ひょっとしたら明日は雨かもしれない。」
○「明日、ワンチャン雨かも。」
意味は近くても、最後の文だけかなり話し言葉らしくなります。
どんな場面で使える?
「ワンチャン」は、友人同士の会話、SNS、YouTube、チャットなどでは普通に使われます。
一方で、
×「部長、こちらの契約はワンチャン成立すると思います」
×「先生、明日の授業はワンチャン欠席します」のようなフォーマルな場面では、まだかなり違和感があります。
その場合は、
「成立する可能性があります」
「もしかすると欠席するかもしれません」
などとするほうが自然です。
「ワンチャン」は辞書にも載る日本語になりましたが、どこでも使える言葉になったわけではありません。
基本的には、親しい人とのくだけた会話で使う言葉と考えておけばよいでしょう。
これだけ覚えれば「ワンチャン」は使える
最後に、代表的な形をまとめておきましょう。
| 形 | 例 | 意味 |
| ワンチャンある | まだワンチャンある | まだ可能性がある |
| ワンチャン+動詞 | ワンチャン間に合う | もしかしたら間に合う |
| ワンチャン+~かも | ワンチャン雨かも | ひょっとしたら雨かもしれない |
| ワンチャン+~じゃない? | ワンチャン行けるんじゃない? | もしかしたら行けるのでは? |
まとめ
「ワンチャン」は、もともと「ワンチャンス」から生まれた言葉ですが、現在では「もしかすると」「ひょっとしたら」「可能性がある」という意味で広く使われています。
特に覚えておきたいのは、
・ワンチャンある
・ワンチャン間に合う
・ワンチャン~かも
・ワンチャン~じゃない?
という四つの形です。「若者言葉だから、意味が分からなくてもいい」と思っているうちに、いつの間にか辞書にも載る普通の日本語になっている――。言葉というのは面白いものです。
「ワンチャン」は、もう単なる一時的な流行語ではなく、現代日本語の中にかなりしっかり入り込んだ言葉と言ってよさそうです。

参考:『三省堂国語辞典 第八版』三省堂
以上です。




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