「~べく」「~べくして」「~べくもない」
N1重要文法の「~べく」「~べくして」「~べくもない」は、形が少し似ていますが、意味はかなり違います。
簡単に言うと、「~べく」は目的、「~べくして」は当然の結果、「~べくもない」は強い不可能を表します。
「~べく」=~するために
「~べくして」=そうなるのが当然で
「~べくもない」=~できるはずもない
「~べくして」=そうなるのが当然で
「~べくもない」=~できるはずもない
| 文法 | 意味 | 言いかえ | 例文 |
|---|---|---|---|
| ~べく | 目的 | ~するために | 合格すべく、毎日勉強している。 |
| ~べくして | 当然の結果 | 当然そうなって | その事故は起こるべくして起こった。 |
| ~べくもない | 強い不可能 | ~できるはずがない | 当時の私には、その意味を知るべくもなかった。 |

1.「~べく」=~するために
「~べく」は、目的を表す文法です。意味は「~するために」です。やや硬い言い方で、書き言葉やスピーチなどでよく使われます。
「~べく」は、未来の目的に向かって行動する形です。
接続
動詞辞書形+べく
※ する動詞は 「するべく」のほかに、少し古風・硬い形で「すべく」もあります。
例文
- 日本語能力試験に合格すべく、毎日3時間勉強している。
- 真実を明らかにすべく、記者たちは取材を続けた。
- 世界一になるべく、その選手は厳しい練習に耐えた。
- 被害を防ぐべく、政府は緊急会議を開いた。
ポイント
- 目的を表すので、後ろには行動が来やすいです。
- 日常会話では「~ために」のほうが自然なことが多いです。
- やや硬く、文章語的です。
| 自然な文 | 意味 |
|---|---|
| 合格すべく、努力する。 | 合格するために努力する。 |
| 問題を解決すべく、専門家を集めた。 | 問題を解決するために専門家を集めた。 |
2.「~べくして」=そうなるのが当然で
「~べくして」は、ある結果について、偶然ではなく、そうなるだけの理由があったことを表します。つまり、「当然そうなった」「必然だった」という意味です。
「~べくして」は、結果を見て「やはりそうなった」と評価するときに使います。
よくある形
特によく使われるのが、同じ動詞をくり返す形です。
- 起こるべくして起こる
- 負けるべくして負ける
- 選ばれるべくして選ばれる
- なるべくしてなった
例文
- 十分な安全対策をしなかったのだから、その事故は起こるべくして起こったと言える。
- 長年の努力があったからこそ、彼は選ばれるべくして選ばれたのだ。
- 準備不足だったのだから、今回の失敗は起こるべくして起こった。
- そのチームは基礎ができていなかったので、負けるべくして負けた。
ポイント
- 結果の必然性を言う表現です。
- 話し手の評価・判断が強く入ります。
- 「たまたまそうなった」の反対に近い表現です。
3.「~べくもない」=~できるはずもない
「~べくもない」は、何かをすることがまったく不可能だという意味です。よく「知るべくもない」「想像するべくもない」のような形で使われます。
「~べくもない」は、能力がないというより、事情から見て「そんなことはできない」という強い不可能を表します。
接続
動詞辞書形+べくもない
例文
- 当時まだ子どもだった私には、その言葉の重みを理解するべくもなかった。
- 遠く離れた国で起きている人々の苦しみは、私たちには想像するべくもない。
- 突然の知らせに、彼女がどれほど驚いたかは察するべくもない。
- 未来に何が待っているかなど、その時の私には知るべくもなかった。
よく使う動詞
特に次のような動詞と一緒に使われることが多いです。
- 知るべくもない
- 想像するべくもない
- 予測するべくもない
- 察するべくもない
4.3つの違いを並べて比べよう
3つの文法は、同じ「べく」が入っていますが、見ている方向が違います。
| 文法 | 何を見る? | 意味 | イメージ |
|---|---|---|---|
| ~べく | これからの行動 | ~するために | 目的に向かう |
| ~べくして | 起きた結果 | 当然そうなって | 必然の結果 |
| ~べくもない | 可能・不可能 | ~できるはずがない | 完全に無理 |
例で比べる
- 優勝するべく、チーム全員で練習した。
→ 優勝するために - 練習不足だったそのチームは、負けるべくして負けた。
→ 負けるのが当然だった - その時の私には、後に何が起こるか知るべくもなかった。
→ 知ることはまったくできなかった
5.学習者が間違えやすいポイント
① 「~べく」を会話で多用しすぎる
「~べく」は硬い表現です。日常会話では「~ために」のほうが自然です。
- 少しかたい:日本に行くべく、お金をためています。
- 自然:日本に行くために、お金をためています。
② 「~べくして」を単なる目的だと思う
「~べくして」は目的ではありません。すでに起きた結果について、それが当然だったと言う表現です。
③ 「~べくもない」は限られた動詞とよく使う
「~べくもない」は何にでも自由に使うというより、知る・想像する・察する・予測するなどと使われることが多いです。
「~べく」は前向きな目的、
「~べくして」は起きた結果への評価、
「~べくもない」は不可能の強調。
この3つを分けて覚えると混乱しません。
「~べくして」は起きた結果への評価、
「~べくもない」は不可能の強調。
この3つを分けて覚えると混乱しません。
6.練習問題
( )に入るものを考えてみましょう。
- 夢をかなえる( )、彼は海外へ渡った。
- 十分な準備をしなかったのだから、その失敗は起こる( )。
- そのころの私には、10年後の自分の姿など想像する( )。
答え
- べく
- べくして起こった
- べくもなかった
7.まとめ
| 文法 | 意味 | 覚え方 |
|---|---|---|
| ~べく | ~するために | 目的に向かう表現 |
| ~べくして | 当然そうなって | 結果を見て「やはり」と言う表現 |
| ~べくもない | ~できるはずがない | 可能性そのものがない表現 |
この3つは、形は似ていますが、意味の方向がまったく違います。
「~べく」=目的
「~べくして」=当然の結果
「~べくもない」=不可能
「~べくして」=当然の結果
「~べくもない」=不可能

この3つをセットで覚えておくと、N1の読解でもかなり強くなります。
以上です。




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