「はたらく」「仕事をする」「勤める」の違いについて

「はたらく」「仕事をする」「勤める」

 「はたらく」「仕事をする」「勤める」の違いについて考えましょう。

「はたらく」「仕事をする」「勤める」の違い

「はたらく」は原義「動く」→「機能する・作用する」から転じて、最も一般的に労働全般を指す。「仕事をする」「勤める」も同様の意味で使うこともできるが、「仕事をする」には「特定の業務をこなす」意味でも用いられ、「勤める」は「特定の職場、会社で働くこと」を示す場合が多い。

「はたらく」と「仕事をする」の違い

 順を追ってまず「はたらく(働く)」と「仕事をする」について考えてみましょう。

 「はたらく」はもともとの「動く」という意味から、「今日は頭がはたらかない」のような「機能する」という意味、さらに「この薬は腸に作用する」のような他に影響を与える、つまり「作用する」という意味になり、「人が労働する」という意味で使われるようになったようです。

  • 今日は頭がはたらかない。(機能しない)
  • この薬は腸に直接はたらく。(作用する)
  • 働かざる者、食うべからず。(労働する Working全般)

仕事は「仕える事」

 「仕事をする」の「仕事」は「仕(つか)える事」ということですから、「純粋な労働」というよりも「(誰かに依頼されて)やらなければならない、ひとまとまりの行動」というニュアンスがあり、「具体的な業務、職務」を指すことが多くなります。

  • 今度、海外関係の仕事をすることになりました。
「はたらく」と「仕事をする」

「はたらく」と「仕事をする」

「はたらく」と「勤める」の違い

 「勤める」については「勤」の字を使う限りにおいては、「特定の会社や職場に勤務する」ことを表すことが多くなります。

(註:「務める」は役目・任務などを果たすという意味になります)

まとめ

以下に全体をまとめます。

「はたらく」「仕事をする」「勤める」

(参考)「はたらく」の語源について

傍(はた)の人を楽(らく)にするから「はたらく」?

バタバタする人 はたの人を楽にするから「はたらく」なのです、とよく言われますがこれは単なる語呂合わせ。しかし、言い得て妙といいますか、日本人の仕事観をうまく示していておもしろいですね。さて「はたらく」の語源ですが、「はたらく」はもともと「動き」を表すと上で言いましたが、「はた」が「動作する」という古くからの意味だそうです。

 この「はた」は「旗がはためく」の「はた」であり、「」そのものの「はた」でもあります。「パタパタ」「バタバタ」なども同語源と考えてよいでしょう。そう考えると、

最近、ばたばた 働いています。
 などという表現も意味が重なり合っているようで面白いですね。

「はた」の根源は神様の音?

秋田名物 神の魚ハタハタ

秋田名物 神の魚ハタハタ

 ここからは想像も交えて続けます。北日本日本海側で獲れる「ハタハタ」という魚がありますが、この魚は「パタパタ」あるいは「バタバタ」と動くから「ハタハタ」と言われるのかというと、実は違うのです。

 「ハタハタ」は漢字では「鰰」、つまり魚へんに神と書きます。なぜそうなったかというと、「ハタハタ」が日本海側で雷の多い季節に獲れるからだそうです。古代日本人の認識は「雷=神鳴り」であり、神は

はたはた と とどろく 神鳴り
 として、その存在を人々の前に現します。つまりおおもとは、太古人々が神の鳴らす音であると考えた「雷」のとどろきが「はたはた」であり、魚の「ハタハタ」の語源。一方、とどろく音である「はたはた」が「動き」をも表すようになり、「旗」「はためく」「バタバタ」「パタパタ」「はたらく」などの表現につながっていったのかもしれません。
 以上 基礎日本語辞典 森田良行著(角川書店)、新明解語源辞典(三省堂) 、魚へん漢字講座 江戸家魚八著(新潮社)などを参考にさせていただきました。

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