「~ならともかく」と「~ならまだしも」
「~ならともかく」と「~ならまだしも」は、どちらも「Aならいいが、Bは問題だ」という場面で使われるため、よく似ています。
でも、二つが見ているポイントは少し違います。まずは典型的な例文を見てみましょう。
【~ならともかく】
子どもならともかく、大人がそんなことをするのはおかしい。
→ 「子ども」と「大人」を分けて、子どもなら話は別だが、大人の場合は問題だと言っています。
【~ならまだしも】
1回ならまだしも、毎日遅刻するのは困る。
→ 「1回」から「毎日」へと程度を比べ、1回ならまだ許せるが、毎日はひどすぎると言っています。

「~ならまだしも」は、程度・段階を比べて「Aならまだマシ」と考える表現。
| 表現 | 中心となる考え方 | ひと言で言うと |
|---|---|---|
| ~ならともかく | 条件・種類を分ける | 「Aなら話は別」 |
| ~ならまだしも | 程度・段階を比べる | 「Aならまだマシ」 |
「~ならともかく」の意味
「~ならともかく」は、ある条件を特別扱いして、別の条件と切り分ける表現です。
「Aならともかく、B」は、簡単に言えば「Aなら話は別だが、Bは……」という意味です。
例:
・初心者ならともかく、10年も勉強している人がこんな漢字を読めないのは困る。
・冗談ならともかく、本気で言っているなら問題だ。
・旅行ならともかく、仕事で一か月も休むことはできない。
・家族ならともかく、知らない人にはそんな話はできない。
たとえば「冗談ならともかく、本気で言っているなら問題だ」では、冗談と本気を程度の大小で比べているわけではありません。
「冗談の場合なら別に考えてもいい。しかし、本気の場合は問題だ」と、二つの条件を切り分けています。
「~ならまだしも」の意味
「~ならまだしも」は、AとBをある尺度の上で比べ、「Aならまだ許せる・まだ理解できるが、Bはそれ以上なので無理だ」と言う表現です。
例:
・1回ならまだしも、毎日遅刻するのは困る。
・千円ならまだしも、1万円も払いたくない。
・2、3日ならまだしも、1か月も待てない。
・小学生ならまだしも、高校生がこの漢字を読めないのは困る。
「1回ならまだしも、毎日遅刻するのは困る」なら、
1回 → 毎日
という回数の段階があります。
「1回も本当はよくない。しかし毎日よりはまだマシだ」という気持ちが含まれています。
最大の違いは「切り分け」か「ものさし」か
二つの違いを図式的に考えると、さらにわかりやすくなります。
| ~ならともかく | ~ならまだしも | |
|---|---|---|
| 見方 | AとBを別の条件として見る | AとBを同じ尺度で比べる |
| Aの扱い | Aなら例外として認めてもよい | Aもよくないが、Bよりはマシ |
| 言い換え | Aなら話は別 | Aならまだマシ |
| 典型的な対比 | 子ども/大人、冗談/本気、旅行/仕事 | 1回/毎日、千円/1万円、2日/1か月 |
同じ文に入れるとどう違う?
実際には、両方とも使える文もあります。
① 10分ならともかく、1時間も待てない。
→ 「10分の場合」と「1時間の場合」を分け、10分なら話は別だが、1時間は無理と考えています。
② 10分ならまだしも、1時間も待てない。
→ 待ち時間を10分 → 1時間という程度の差として考え、10分ならまだ我慢できるが、1時間は長すぎると言っています。
このように同じ内容でも言えるため、二つの違いがわかりにくく感じられます。
ただし、話し手がどこに注目しているかが違います。
「10分のほうが1時間よりマシ」と程度を見るなら「まだしも」です。
「ならともかく」しか使いにくい例
程度の大小ではなく、まったく別の種類を比べる場合は「~ならともかく」が自然です。
○ 冗談ならともかく、本気でそんなことを言ってはいけない。
△ 冗談ならまだしも、本気でそんなことを言ってはいけない。
「冗談」と「本気」は、1回と毎日、千円と1万円のような単純な程度差ではありません。
そこで、「冗談の場合なら別だ」と条件を切り分ける「~ならともかく」が特に自然です。
○ 観光ならともかく、仕事で行くなら準備が必要だ。
△ 観光ならまだしも、仕事で行くなら準備が必要だ。
これも「観光」と「仕事」という目的の種類を分けています。
「ならまだしも」が特に自然な例
数字や回数、期間など、はっきりした程度差がある場合は「~ならまだしも」が特によく合います。
1日ならまだしも、1週間も休めない。
→ 1日 < 1週間
一人ならまだしも、10人も泊める場所はない。
→ 1人 < 10人
一度ならまだしも、三度も同じ失敗をするのは困る。
→ 1回 < 3回
ただし、完全に分けられるわけではない
ここまで「ともかく=条件」「まだしも=程度」と説明しましたが、これは違いを理解するための中心的なイメージです。
実際の日本語では、条件と程度が重なっている場面も多いため、両方使えることがあります。
一度ならともかく、毎日は困る。
一度ならまだしも、毎日は困る。
どちらも自然です。
ただし前者は「一度の場合なら別扱い」、後者は「一度なら毎日よりまだマシ」という見方になります。
使い分けのコツ
迷ったときは、次の二つの言い換えを試してみましょう。
| 言い換えてみる | 使う表現 |
|---|---|
| 「Aなら話は別だけど……」 | ~ならともかく |
| 「Aならまだマシだけど……」 | ~ならまだしも |
たとえば、
「子どもなら話は別だけど、大人は……」
なら、「子どもならともかく」。
「1回ならまだマシだけど、毎日は……」
なら、「1回ならまだしも」です。
まとめ
| ~ならともかく | ~ならまだしも |
|---|---|
| 条件・カテゴリーを切り分ける | 程度・段階を比べる |
| 「Aなら話は別」 | 「Aならまだマシ」 |
| 子ども/大人、冗談/本気などにも使いやすい | 1回/毎日、千円/1万円など程度差と相性がいい |
「まだしも」は程度を並べて「こっちならまだマシ」と判断する。
この違いを頭に入れておけば、「~ならともかく」と「~ならまだしも」の使い分けがかなり見えやすくなります。

「ならともかく」「ならまだしも」まとめ
以上です。



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