複合動詞「追い~」のいろいろ

「屋根の上のサワン」井伏鱒二 から

 なるほど私はサワンの水浴を見守るために沼地へ出かけたのではなく、私のくったくした思想を追いはらうために散歩に出かけたのです。
                     日語総合教程第5冊 第5課 から

 以下、「追い~」の形の複合動詞について整理しましょう。
「追い+動詞」の形をした複合動詞がたくさんありますが。どれも、基本にあるのは「相手を追って動かす」というイメージです。ただし、どこへ動かすのか、どんな状態にするのかは、後ろの動詞によって変わるということになります。

ポイント:「追い~」は前の「追い」が共通でも、後ろの動詞によって意味が大きく変わります。まずは、よく使う「追い払う・追い出す・追い返す・追い落とす」の違いを押さえましょう。

1.まずは4つの基本を比べよう

複合動詞基本イメージよくある意味
追い払うその場から遠ざける邪魔なものを去らせる犬を追い払う
追い出す中から外へ出すその場所の外へ出させる部屋から追い出す
追い返す来た方向へ戻す相手を帰らせる客を追い返す
追い落とす高い位置から落とす地位・順位などを失わせる首位から追い落とす
一言で言うと:
追い払う=その場からいなくさせる
追い出す=中から外へ出させる
追い返す=来た方へ戻らせる
追い落とす=地位・位置から落とす

「追い~」4つの簡単イラスト

2.「追い払う」― その場から遠ざける

追い払うは、相手や邪魔なものをその場から去らせる言い方です。目的は「ここにいさせないこと」です。

  • 庭に来た鳥を追い払った。
  • 店の前に集まった人たちを追い払った。
  • 不安を追い払って、試験にのぞんだ。

最後の例のように、不安・恐怖・眠気のような目に見えないものに使うこともあります。この場合も、イメージは自分から遠ざけるです。

重要:「追い払う」は“その場からいなくさせる”ことが中心です。どこへ行くかより、ここから遠ざけることに重点があります。

3.「追い出す」― 中から外へ出す

追い出すは、相手をある場所の中から外へ出させる言い方です。ここでは、内と外の境界が大切です。

  • 猫を部屋から追い出した。
  • 彼は失敗して会社を追い出された。
  • 不良グループを学校から追い出した。

「追い払う」と似ていますが、追い出すは、部屋・家・学校・国・組織など、ある範囲の外へ出す感じがはっきりしています。

4.「追い返す」― 来た方向へ戻す

追い返すは、来た相手を中に入れずに帰らせる、または来た方向へ戻らせる言い方です。

  • しつこいセールスマンを玄関で追い返した。
  • 敵を国境で追い返した。
  • 予約のない客は入口で追い返された。

「追い出す」が中から外へなら、「追い返す」は来た元の方向へというイメージです。ですから、訪問者・客・敵などによく使われます。

5.「追い落とす」― 地位や位置を失わせる

追い落とすは、相手を高い位置・有利な立場・地位から落とす言い方です。実際の「高さ」に使うこともありますが、現代では地位・順位・政権・主導権など、抽象的な意味でよく使われます。

  • ライバル校を首位から追い落とした。
  • 彼は社長の座から追い落とされた。
  • 新しい製品が旧型を市場の主役から追い落とした。

つまり、「追い落とす」は、ただ追って遠ざけるのではなく、相手が持っている“上の位置”を失わせることがポイントです。

ここが違う:
追い払う=その場から去らせる
追い出す=中から外へ出させる
追い返す=来た方向へ戻らせる
追い落とす=高い地位・位置を失わせる

6.4つをまとめて比べる

言葉どこへ動かすか特徴
追い払うその場から離れた所へ「ここにいさせない」が中心
追い出す中から外へ内外の境界がある
追い返す来た方向へ「帰らせる」感じ
追い落とす高い位置から下へ地位・順位を失わせることが多い

7.そのほかの「追い~」も見てみよう

「追い~」には、排除を表すもの以外にもいろいろあります。ここでは、よく使うものを意味ごとに簡単に整理しましょう。

(1)相手に近づく・相手に届く

複合動詞意味例文
追いかける後ろから追っていく子どもがボールを追いかけている。
追いつく先にいる相手と同じ所に達するやっと先頭の選手に追いついた。
追い越す相手より前へ出る坂道で前の車を追い越した。

(2)相手を苦しい状態にする

複合動詞意味例文
追い込む逃げ場のない状態にする相手チームを守勢に追い込んだ。
追い詰める逃げ道がないところまで迫る厳しい質問で相手を追い詰めた。

「追い込む」は、苦境・危機・不利な立場に入れる意味でもよく使います。

  • 彼は借金で苦しい生活に追い込まれた。
  • 会社は経営難に追い込まれた。

(3)目標や理想を求め続ける

複合動詞意味例文
追い求める理想・目標を求め続ける彼はずっと自分の理想を追い求めている。
追い続ける長く追いかける彼女は子どものころから夢を追い続けてきた。

「追い~」その他

整理すると:
「追い~」には、相手を遠ざけるタイプだけでなく、相手に近づくタイプ、相手を苦しい状態にするタイプ、目標を求め続けるタイプもあります。

8.まとめ

複合動詞「追い~」は、前の「追い」が共通していても、後ろの動詞によって意味が大きく変わります。

  • 追い払う:その場から遠ざける
  • 追い出す:中から外へ出す
  • 追い返す:来た方向へ戻す
  • 追い落とす:地位・位置から落とす
  • 追いかける・追いつく:相手に近づく
  • 追い込む・追い詰める:相手を苦境に立たせる
  • 追い求める・追い続ける:目標や理想を求める

複合動詞「追い~」まとめ

このように整理すると、複合動詞は一つ一つばらばらに覚えるよりも、共通する前の部分と、意味を決める後ろの部分に注目して学ぶことができます。

最後のポイント:複合動詞は、前の動詞+後ろの動詞の組み合わせで意味が広がります。今回の「追い~」のように、グループでまとめて覚えると理解しやすくなります。

以上です。

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