「大阪弁入門」
日本語を勉強している外国人にとっても、最低限の方言は必要です。日本語の方言と言えば、まずは大阪弁。テレビのお笑い番組やドラマなどを見ていても、
「ほんま?」
「あかん!」
「なんでやねん!」
といった言葉をよく耳にします。もちろん、大阪弁を知らなくても日本では生活できます。しかし大阪弁には、標準語に直しただけでは分からない独特のニュアンスがあります。今回は、ぜひ知っておきたい大阪弁の初歩の初歩、10語を紹介します。
まずは一覧で見てみよう
| 大阪弁 | 標準語では |
|---|---|
| あかん | だめ |
| ほんま | 本当 |
| ちゃう | 違う |
| せやねん | そうなんだ |
| めっちゃ | とても |
| おおきに | ありがとう |
| なんでやねん | なんでだよ |
| 知らんけど | 知らないけれど |
| どない | どう |
| ~やん | ~じゃない |
① あかん
「あかん」は、標準語の「だめ」に近い言葉です。
例:「そんなことしたらあかん。」
=そんなことをしてはだめだ。ただし、「あかん」と「だめ」は完全に同じではありません。たとえば、標準語で
「お前はだめなやつだ。」
と言われると、かなり強く否定された感じがします。
一方、
「お前、ほんまにあかんやっちゃなあ。」
という大阪弁には、言い方によっては、どこか親しみや愛嬌が残ります。
つまり「あかん」には、単に否定するだけでなく、
「今はだめだけど、まだ何とかなる」
「しょうがないなあ」
という柔らかい気持ちが入ることもあるのです。
② ほんま
「ほんま」は「本当」という意味です。
例:「ほんま?」=本当?
例:「ほんまに知らんねん。」
=本当に知らないんだ。「ほんま」は、大阪弁の中でも非常によく使われる言葉の一です。「ほんまや」「ほんまに」「ほんまか?」など、いろいろな形で使われます。
短い一言ですが、驚き、疑い、感心など、いろいろな感情を表せる便利な言葉です。
③ ちゃう
「ちゃう」は「違う」という意味です。
例:「それ、ちゃうで。」=それ、違うよ。
しかし、「ちゃう」にはもう一つ大切な使い方があります。
例:「これ、田中さんのちゃう?」=これ、田中さんのじゃない?
ここでの「ちゃう?」は、「違う?」ではありません。標準語の「~じゃない?」に近い使い方です。
例:「そうちゃう?」=そうじゃない?
例:「明日やったんちゃう?」=明日だったんじゃない?
「ちゃう=違う」とだけ覚えていると、この使い方が分かりにくいので注意が必要です。
④ せやねん
「せや」は「そうだ」、「せやねん」は「そうなんだ」という意味です。
例:「試験落ちたんか?」「せやねん。」
標準語にすると、
「不合格だったの?」
「そうなんだ。」となります。
ただ、「せやねん」には、ただ肯定するだけでなく、
「そうなんですよ」「それがね……」「そう、どうしよう」
といったように、少し話を続けるような感じもあります。
そして、「せやで」=そうだよ、「せやな」=そうだね、「せやけど」=そうだけど
など、いろいろな形があります。
⑤ めっちゃ
「めっちゃ」は「とても」「非常に」という意味です。
例:「めっちゃおいしい。」=とてもおいしい。
例:「今日めっちゃ暑いな。」=今日はすごく暑いね。
もともとは関西を中心に使われていた言葉ですが、今では若い人を中心に全国で使われています。つまり、「めっちゃ」は大阪弁として始まりましたが、今ではかなり全国区の言葉になっているのです。
⑥ おおきに
「おおきに」は、大阪弁として有名な「ありがとう」です。
例:「毎度おおきに。」=いつもありがとうございます。
大阪の商人ことばというイメージが強く、今でも店などで耳にすることがあります。ただし、若い人が日常会話の中でいつも「おおきに」を使うわけではありません。ふつうに「ありがとう」と言う人も多いです。
つまり、「おおきに」は大阪らしさを感じる代表的な言葉ですが、使う場面には少し特徴があります。
⑦ なんでやねん
「なんでやねん」は、おそらく外国人にも最も有名な大阪弁の一つでしょう。直訳すると「どうしてなんだ」ですが、実際には使われる状況が異なります。
相手が変なことを言ったとき、
「何言ってるんだよ!」
というツッコミとして使います。
例:「昨日、ダイエット始めてん。」「ほな、今日ケーキ食べよか。」
「なんでやねん!」大阪弁を理解するには、言葉そのものだけでなく、お笑い文化の「ボケ」と「ツッコミ」も知っておくと分かりやすいです。
⑧ 知らんけど
「知らんけど」は、文字通りには「知らないけれど」という意味です。
しかし会話では、「たぶんそう思うけど、責任は持たないよ」というニュアンスで使われることが多いです。
例:「明日は雨ちゃう? 知らんけど。」
これは、
「明日は雨だと思うよ。でも、確かではないよ。」
という意味です。
自分の意見を言ったあとで、少しやわらかくしたり、言い切りを避けたりする便利な表現です。最近では関西以外でも大阪人の面白い表現法として知られるようになりました。
⑨ どない
「どない」は「どう」という意味です。
例:「どないしたん?」=どうしたの?
例:「これ、どないする?」=これ、どうする?
例:「どないや?」=どうだ?
さらに、
「どないもならん。」=どうにもならない。
という言い方もあります。意味は比較的分かりやすいですが、標準語話者にとっては、方言らしさを強く感じる表現の一つです。
⑩ ~やん
「~やん」は、標準語の「~じゃない」に近い表現です。
例:「これ、めっちゃええやん。」=これ、すごくいいじゃない。
例:「知ってるやん。」=知ってるじゃない。
例:「昨日言うたやん。」=昨日言ったじゃない。
相手に同意を求めたり、
「ほら、そうでしょう」
という気持ちを表したりするときによく使います。「~やん」も今では関西以外に広がっていて、若い人の会話ではかなり普通に聞かれます。
大阪弁は「意味」だけでなく「感じ」が大事
今回紹介した10語は、どれも標準語に直せば簡単に説明できます。しかし、大阪弁のおもしろさは、ただ意味を置き換えるだけでは分からないところにあります。
たとえば、
「あかん」と「だめ」では、聞いたときの感じが少し違います。
「ちゃう」は「違う」だけでなく、「~じゃない?」にもなります。
「知らんけど」には、ただの「知らない」以上の会話上の役割があります。
方言を学ぶということは、単語を覚えることだけではありません。その土地の人が、どんな気持ちでその言葉を使っているのかを知ることでもあります。学習者のみなさんも、まずはこの10語を覚えて、大阪のテレビ番組やYouTubeを見てみてください。今までより会話がぐっと分かりやすくなるはずです。
知らんけど。
以上です。



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