「すみません」と「申し訳ありません」
「すみません」と「申し訳ありません」は、どちらも謝るときに使う言葉です。そして、「申し訳ありません」は「すみません」をもっと丁寧にした言い方だ、と覚えている人も少なくないでしょう。
しかし、この二つの差は単に「普通の謝り方」と「丁寧な謝り方」という違いだけではありません。
すみません → 「負担をかけてごめんなさい」
申し訳ありません → 「こちらが悪くてごめんなさい」
上の違いを押さえると、なぜ「すみません」はお願いや呼びかけ、時には感謝にも使えるのに、「申し訳ありません」は使えないのかが見えてきます。

「すみません」は「負担をかけてごめんなさい」
まず「すみません」について考えてみましょう。
たとえば、電車の中で人の前を通りたいとき、こんなふうに言います。
「すみません、ちょっと通してください。」
この場合、自分が何か悪いことをしたわけではありません。それでも「すみません」と言います。
なぜでしょうか。
相手に少し体を動かしてもらうなど、自分のために相手に負担や手間をかけるからです。
すみませんには、「あなたに手間・負担をかけて恐縮です」という気持ちがあります。
したがって、「すみません」は必ずしも本格的な謝罪とは限りません。
お願いするときにも「すみません」
「すみません」は、人に何かをお願いするときにもよく使います。
「すみません、写真を撮っていただけませんか。」
「すみません、駅はどちらですか。」
「すみません、これを取ってもらえますか。」
どの場合も、まだ悪いことをしたわけではありません。
これから相手に手間をかけるので、「ちょっと負担をかけますが……」という気持ちで「すみません」を使っています。
ところが、
「申し訳ありません、駅はどちらですか。」
と言うと、普通はかなり大げさに聞こえます。
ここからも、「申し訳ありません」は単なる丁寧な「すみません」ではないことがわかります。
感謝の「すみません」もある
「すみません」は、相手に何かしてもらったときにも使えます。
「荷物を持っていただいて、すみません。」
「わざわざ来ていただいて、すみません。」
この場合も、相手に対して本当に「私は悪いことをしました」と謝っているわけではありません。
「私のためにそこまでしてもらって恐縮です」という気持ちです。そのため、「すみません」には感謝のニュアンスが含まれることがあります。
「すみません、ありがとうございます。」という言い方が自然なのも、このためです。
すみませんは、単なる英語の「Sorry」ではありません。
謝罪・恐縮・お願いの前置き・感謝など、非常に広い場面で使われます。
「申し訳ありません」は「こちらが悪くてごめんなさい」
一方、「申し訳ありません」は、基本的にこちら側に非や責任があることについて謝るときに使います。
たとえば、店側のミスで商品が発送されていなかったとします。
客:まだ商品が届いていないのですが。
店員:確認いたしました。こちらの手違いで発送できておりませんでした。申し訳ありません。
この場合、単に相手に負担をかけるというだけではありません。こちら側に原因があり、相手に迷惑や不利益を与えています。
そこで、「申し訳ありません」が自然になります。
申し訳ありません → こちら側の非・責任について正式に謝罪するときに使う。
「申し訳」の意味を考えるとわかりやすい
「申し訳」は、もともと言い訳・弁明という意味を持つ言葉です。
「申し訳がない」は、簡単に言えば、「言い訳のしようがない」ということです。
そこから、「申し訳ありません」は、こちら側に問題があったことについて「弁解のしようもありません。すみません」という強い謝罪を表すようになりました。
そのため、「すみません」よりも改まった場面や、仕事上の正式な謝罪でよく使われます。
同じ場面でも、重大さによって変わる
もちろん、「すみません」も普通の謝罪として使えます。
「遅れてすみません。」
「間違えてすみません。」
日常生活では非常に自然です。
しかし、会社の重大なミスなどで、
「当社の手違いで100万円多く請求していました。すみません。」
と言うと、少し軽く聞こえるでしょう。
このような場合は、
「当社の手違いで誤った金額を請求しておりました。大変申し訳ありません。」
のほうが自然です。
つまり、二つには確かに丁寧さ・改まり度の違いもあります。しかし、それだけではありません。
大切なのは「どちらが丁寧か」だけではなく、何について謝っているのか。
相手への負担なのか、こちら側の非・責任なのかを考えると使い分けやすくなります。
「すみません」と「申し訳ありません」を比較
| 項目 | すみません | 申し訳ありません |
| 中心となる気持ち | 負担をかけてごめんなさい | こちらが悪くてごめんなさい |
| 軽い謝罪 | ◎ | ○ やや大げさな場合も |
| お願いの前置き | ◎ | △~× |
| 呼びかけ | ◎ | × |
| 感謝・恐縮 | ○ | 基本的には使わない |
| 重大なミスへの謝罪 | △ 軽く聞こえることも | ◎ |
| よく使う場面 | 日常生活から仕事まで広い | 改まった謝罪・ビジネス |
こんな場面ではどちらを使う?
① 人に道を聞く
「すみません、駅はどちらですか。」 → ○
「申し訳ありません、駅はどちらですか。」 → △ 不自然・大げさ
② 人に物を取ってもらう
「すみません、それを取っていただけますか。」 → ○
「申し訳ありません、それを取っていただけますか。」 → △
③ 友達との待ち合わせに5分遅れた
「遅れてすみません。」 → ○
「遅れて申し訳ありません。」 → ○だが、かなり改まった感じ
④ 会社のミスで注文品が届かなかった
「すみません。」 → △ 軽く聞こえる可能性がある
「大変申し訳ありません。」 → ◎
このように見ると、単純な「すみません < 申し訳ありません」という丁寧さの階段だけでは説明できないことがわかります。
「すみません」を全部「申し訳ありません」に変えてはいけない
日本語学習者は、丁寧に話そうとして「すみません」を何でも「申し訳ありません」に変えてしまうことがあります。
しかし、
「すみません、田中さんはいらっしゃいますか。」
「すみません、ここに座ってもいいですか。」
「荷物を持っていただいて、すみません。」
などは、単純に「申し訳ありません」に置き換えることはできません。
× 覚え方
すみません < 申し訳ありません
=同じ意味で、「申し訳ありません」のほうが丁寧
○ 覚え方
すみません=負担をかけてごめんなさい
申し訳ありません=こちらが悪くてごめんなさい
「申し訳ございません」は?
ビジネスや接客では、さらに丁寧な「申し訳ございません」もよく使われます。
基本的な意味は「申し訳ありません」と同じで、こちら側の非や迷惑について謝罪する表現です。
申し訳ありません → 丁寧な謝罪
申し訳ございません → より改まった丁寧な謝罪
会社・ホテル・店舗などでは「申し訳ございません」のほうを耳にすることも多いでしょう。
ただし、これも「すみません」のすべての用法を丁寧にした言葉ではありません。
まとめ
「すみません」は、相手に手間・負担・迷惑をかけることへの恐縮を表す言葉です。そのため、謝罪だけでなく、呼びかけ・お願い・感謝にも広く使われます。
「申し訳ありません」は、こちら側の非や責任によって相手に迷惑をかけたことについて、改まって謝罪するときに使います。
ですから、この二つは単純な丁寧さの違いではありません。
「どちらが丁寧?」ではなく、
「何について謝っている?」を考える。
すみません →「負担をかけてごめんなさい」
申し訳ありません →「こちらが悪くてごめんなさい」
この二つを押さえておけば、場面に合った自然な使い分けがしやすくなります。
以上です。




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