「~得る」と「~かねない」
「~得る(える・うる)」と「~かねない」は、どちらも「そうなる可能性がある」ことを表す文法です。ですが、実際にはかなり違います。「~得る」は中立的な可能性、「~かねない」は悪い結果への心配を表します。まずは典型的な例文を比較してイメージをつかみましょう。
~得る:このような問題は、今後どの国でも起こり得る。
~かねない:そのような発言は、誤解を招きかねない。

「~得る」=単に可能性がある
「~かねない」=悪いことが起こる心配がある
| 項目 | ~得る | ~かねない |
|---|---|---|
| 意味 | 可能性がある | 悪い結果になる可能性がある |
| 良いことにも使えるか | 使える | 基本的に使えない |
| 話し手の気持ち | 中立的 | 心配・警戒・不安 |
| 文体 | やや硬い・書き言葉的 | 会話でも文章でも使う |
以下、個別にみていきましょう。
「~得る」の意味と使い方
~得る(うる/える)は、「そうなる可能性がある」という意味です。話し手の感情はそれほど強くなく、事実として可能性を述べる感じです。
接続
動詞ます形+得る
※「あり得る」は非常によく使います。
- この地域では、大きな地震が起こり得る。
- 努力しだいでは、逆転もあり得る。
- 誰にでもミスは起こり得る。
- 十分な準備があれば、成功し得るだろう。
「~得る」は、良いことにも悪いことにも使えます。
つまり、意味そのものは中立です。
「~かねない」の意味と使い方
~かねないは、「悪いことが起こる可能性がある」という意味です。ただ可能性を言うだけではなく、そこに話し手の不安・心配・警戒が入ります。
接続
動詞ます形+かねない
- そんな乱暴な運転は、事故を起こしかねない。
- その情報を広めると、社会に混乱を招きかねない。
- 睡眠不足が続くと、体調を崩しかねない。
- あの人は感情的になると、秘密をもらしかねない。
「~かねない」は、よくない結果を心配して言う表現です。
うれしい結果・望ましい結果には普通使いません。
「~得る」と「~かねない」のいちばん大きな違い
この二つの違いは、次の1点を押さえればかなりわかりやすくなります。
「~かねない」=悪い結果への警戒つきの可能性
たとえば、次のように比べると違いがはっきりします。
① この政策は、大きな成果を上げ得る。
→ 成果が出る可能性がある。良い結果でも使える。
② この政策は、混乱を招きかねない。
→ 混乱という悪い結果を心配している。
③ 誰でも失敗し得る。
→ 単に「失敗する可能性はある」と述べている。
④ そんなやり方では、大きな失敗をし兼ねない。
→ 「まずいことになるかもしれない」と警戒している。
比較時のポイント
① 良いことにも使えるかどうか
~得るは、良いことにも悪いことにも使えます。
~かねないは、基本的に悪いことだけです。
〇 彼なら優勝し得る。
× 彼なら優勝しかねない。
「優勝」は普通は良いことなので、「かねない」は不自然です。
② 話し手の気持ちが入るかどうか
~得るは、比較的冷静で客観的です。
~かねないは、話し手の心配・懸念が感じられます。
この小さなミスでも、大きな問題に発展し得る。
→ 客観的に可能性を述べている。
この小さなミスでも、大きな問題に発展しかねない。
→ 「危ない、気をつけたほうがいい」という気持ちがある。
③ 文体のかたさ
~得るは、やや硬く、説明文・評論文・ニュース・レポートなどでよく使われます。特に「あり得る」の形は会話でもよく出ます。
~かねないは、書き言葉でも話し言葉でも比較的使いやすい表現です。
例
そんなこと、十分あり得るよ。
あの言い方では誤解されかねないよ。
④ 置き換えられる場合と置き換えられない場合
悪い結果について話すときは、文によっては両方使えることがあります。
この発言は、差別と受け取られ得る。
この発言は、差別と受け取られかねない。
ただし、ニュアンスは同じではありません。
- 受け取られ得る:そう判断される可能性がある
- 受け取られかねない:そう判断されるのではないかと心配している
「~得る」は説明、
「~かねない」は警告・懸念に近い、という違いがあります。
間違えやすいところ
① 「~かねない」を良いことに使ってしまう
× 彼は試験に合格しかねない。
〇 彼は試験に合格し得る。
〇 彼は試験に合格する可能性がある。
「かねない」は基本的にマイナスの結果なので、ここは注意です。
② 「~得る」に心配のニュアンスがあると思ってしまう
~得るは、悪い内容と一緒に使われることもありますが、表現自体に「心配」の意味が強く入っているわけではありません。
この病気は誰でもかかり得る。
→ 客観的説明。
この病気は誰でもかかりかねない。
→ かなり不自然ではありませんが、より警戒感が強くなります。
③ 「~得る」は少しかたい表現
会話では「可能性がある」「こともある」を使うほうが自然な場面も多いです。
やや硬い:そのような事態は起こり得る。
やわらかい:そういうことが起こる可能性がある。
例文で比べよう
| 場面 | ~得る | ~かねない |
|---|---|---|
| 災害 | この地域では大地震が起こり得る。 | このままでは二次災害が起こりかねない。 |
| 発言 | その言い方は誤解を生み得る。 | その言い方は相手を傷つけかねない。 |
| 成功 | 彼なら新記録を出し得る。 | ※普通は使わない |
| ミス | 人間なら誰でもミスし得る。 | そんな確認不足では、大きなミスをし兼ねない。 |
使い分けのコツ
迷ったら、次のように考えると使い分けやすいです。
- ただ可能性を言いたい → ~得る
- 悪い結果を心配している → ~かねない
この案は成功し得る。
この案は大きな混乱を招きかねない。
「それは良いことですか、悪いことですか」と自分に聞いてみましょう。
悪いことへの心配なら「~かねない」、そうでなければまず「~得る」を考えるとわかりやすいです。
まとめ
- ~得るは、中立的に「可能性がある」ことを表す。
- ~かねないは、悪い結果になる可能性があり、話し手が心配していることを表す。
- ~得るは良いことにも悪いことにも使える。
- ~かねないは基本的に悪いことに使う。
- 同じ「可能性」でも、説明か、心配かという違いがある。

以上です。



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