「~てこのかた」と「~てからというもの」
「~てこのかた」と「~てからというもの」は、どちらも「ある時点から今まで」を表すので、学習者が迷いやすい文法です。
でも、実は見ているポイントが違います。
「~てこのかた」は「その時から今まで続いていること」に注目し、「~てからというもの」は「その出来事をきっかけに起きた変化」に注目します。
例文比較
● 子どもが生まれてからというもの、生活のリズムがすっかり変わった。
● 日本に来てこのかた、一度も故郷へ帰っていない。

ここが大事:
「~てこのかた」=その時から今まで、同じ状態がずっと続いている。
「~てからというもの」=その出来事をきっかけに、様子が変わり、その状態が続いている。
「継続」なら~てこのかた、「変化」なら~てからというもの、と考えるとわかりやすいです。
違い
| 項目 | ~てこのかた | ~てからというもの |
|---|---|---|
| 基本意味 | ~してから今までずっと | ~してから、すっかり/その後ずっと |
| 注目点 | 継続 | 変化 |
| ニュアンス | 長い時間を振り返る | ある出来事を境に変わった |
| よく続く内容 | 同じ状態・習慣・事実 | 生活・気持ち・状況などの変化 |
| 簡単に言うと | それ以来ずっと | それ以来すっかり |
以下、それぞれについて詳述します。
「~てこのかた」の意味と使い方
「~てこのかた」は、ある時点を出発点として、そこから今まで同じ状態が続いていることを表します。
ポイントは、「長い間の継続」を振り返る感じがあることです。
接続:動詞て形+このかた
● 日本に来てこのかた、一度も故郷へ帰っていない。
● 結婚してこのかた、ずっと京都に住んでいる。
● 社長に就任してこのかた、毎朝いちばん早く出社している。
● 病気をしてこのかた、酒は一滴も飲んでいない。
この文法では、話し手は「その時から今まで」を一つの長い流れとして見ています。そのため、「何が変わったか」よりも「今までずっと続いている」ことが重要です。
「~てこのかた」は、「あれ以来ずっと同じ状態が続いている」という継続の見方です。
「~てからというもの」の意味と使い方
「~てからというもの」は、ある出来事をきっかけに、生活・気持ち・状況などが変わり、その変化した状態が続いていることを表します。
こちらは、「変化のきっかけ」に焦点があるのが特徴です。
接続:動詞て形+からというもの
● 子どもが生まれてからというもの、生活のリズムがすっかり変わった。
● スマホを買ってからというもの、毎日のように写真を撮っている。
● 彼と出会ってからというもの、毎日が楽しく感じられる。
● 大きな失敗をしてからというもの、人前で話すのが苦手になった。
この文法では、「その出来事の前」と「その出来事の後」が意識されています。つまり、「以前とは違う状態になった」ことを言いたいときに適しています。
「~てからというもの」は、「それを境にして、すっかり変わった」という変化の表現です。
使い分け
いちばんわかりやすい判断基準は、「継続を言いたいのか」「変化を言いたいのか」です。
① 今まで続いていることを言う →「~てこのかた」
● 大学を卒業してこのかた、この町で働いている。
→ 卒業後、今までずっとこの町で働いているという継続に注目しています。
② 出来事のあとに変わったことを言う →「~てからというもの」
● 大学を卒業してからというもの、勉強する時間がめっきり減った。
→ 卒業をきっかけに生活が変化したことに注目しています。
③ 同じ出来事でも、話し手の注目点によって変わる
● 父が倒れてこのかた、家族は不安な毎日を送っている。
→ 父が倒れてから今まで、不安な状態が続いている。
● 父が倒れてからというもの、母は笑顔を見せなくなった。
→ 父が倒れたことをきっかけに、母の様子が変わった。
「~てこのかた」=今までどう続いているか
「~てからというもの」=それ以来どう変わったか
置き換えると?
意味が近いため、両方使えそうに見える場合もあります。しかし、入れ替えるとニュアンスがずれたり、不自然になったりすることがあります。
例1
〇 日本に来てこのかた、ずっと大阪に住んでいる。
△ 日本に来てからというもの、ずっと大阪に住んでいる。
単に「大阪に住み続けている」という継続を言うなら、「~てこのかた」のほうが合います。「てからというもの」を使った場合、「本当は何度か引っ越してもよいようなものだが、…」という微妙なニュアンスが加わるようです。
例2
〇 子どもが生まれてからというもの、外食をほとんどしなくなった。
△ 子どもが生まれてこのかた、外食をほとんどしなくなった。
「子どもが生まれたことを境に生活が変わった」という意味が強いため、「~てからというもの」のほうが自然です。
どちらも「その時から今まで」を表せますが、「続いていること」に注目するか、「変わったこと」に注目するかで使い分けます。
「~て以来」とはどう違う?
この二つを理解するためには、「~て以来」と比べるとさらにわかりやすくなります。
| 文法 | 特徴 |
|---|---|
| ~て以来 | ある時点から現在まで。比較的中立的。 |
| ~てこのかた | その時から今まで長く続いていることを強く意識する。 |
| ~てからというもの | その出来事を境に何かが変化したことを強く意識する。 |
● 日本に来て以来、大阪に住んでいる。
→ 日本に来た時を単純に起点として示しています。
● 日本に来てこのかた、ずっと大阪に住んでいる。
→ 長い間ずっと住み続けているという感じが強くなります。
● 日本に来てからというもの、性格がずいぶん明るくなった。
→ 日本に来たことをきっかけに、性格が変化したことを表しています。
間違えやすいポイント
① どちらも単なる「~してから」と考えてしまう
「~てこのかた」には継続、「~てからというもの」には変化という、それぞれの特徴があります。
② 「~てからというもの」を単純な事実の継続に使う
△ 日本へ留学してからというもの、東京に住んでいる。
単に住み続けているだけなら、「日本へ留学して以来」や「日本へ留学してこのかた」のほうが自然です。
③ 「~てこのかた」を短期間の出来事に使う
「~てこのかた」は、一般にある程度長い期間を振り返る感じがあります。
「~てこのかた」=長く続いている
「~てからというもの」=その出来事のあと、以前とは違う
同じ「それ以来」でも、見ている方向が違います。
その他例文
「~てこのかた」
● 退職してこのかた、毎朝散歩を続けている。
● この町に引っ越してこのかた、静かな暮らしをしている。
● 戦争が終わってこのかた、大きな混乱は起きていない。
「~てからというもの」
● 退職してからというもの、時間の使い方をよく考えるようになった。
● この町に引っ越してからというもの、夜は早く寝るようになった。
● その映画を見てからというもの、人生観が少し変わった。
まとめ
| 文法 | コアの意味 |
|---|---|
| ~てこのかた | その時から今まで、同じ状態がずっと続いている |
| ~てからというもの | その出来事をきっかけに、状態が変わり、それが続いている |
「~てこのかた」=ずっと継続
「~てからというもの」=それ以来すっかり変化
「続いている」のか、「変わった」のかを見れば、使い分けやすくなります。

以上です。




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