「または」と「それとも」
・「コーヒーまたは紅茶をお選びください。」
・「コーヒーにしますか。それとも紅茶にしますか。」
どちらの文も、コーヒーと紅茶という二つの選択肢を示しています。しかし、「または」と「それとも」には、使い方に大きな違いがあります。
結論から言えば、「または」は選択肢を示す接続詞、「それとも」は相手に選択を求める疑問文で使う接続詞です。
ただし、「または」は疑問文でも使えます。今回は、基本的な違いから、間違えやすい用法、類似表現との比較まで解説します。

1.「または」と「それとも」の基本的な違い
まず、次の二つの文を比較しましょう。
① バターまたはサラダ油で肉を炒めてください。
② バターで炒めますか。それともサラダ油で炒めますか。
①は、調理方法として二つの選択肢を提示しています。②は、相手にどちらを選ぶか尋ねています。
| 比較項目 | または | それとも |
|---|---|---|
| 基本的な働き | 選択肢を示す | 相手に選択を求める |
| 文の種類 | 平叙文・命令文・疑問文 | 選択疑問文 |
| 接続 | 名詞・句・文 | 疑問の選択肢 |
| 文体 | やや硬い | 会話でもよく使う |
| 例文 | 電話またはメールで連絡する | 電話にしますか。それともメールにしますか |
「または」は選択肢そのものを結びつけます。一方、「それとも」は、先に示した選択肢を受けて、別の選択肢を疑問として提示します。
2.「または」の使い方
① 名詞と名詞をつなぐ
・電車またはバスで来てください。
・パスポートまたは運転免許証を提示してください。
・土曜日または日曜日に試験を実施します。
「AまたはB」という形で、二つの選択肢を提示しています。
② 文や句をつなぐ
・ピラフは電子レンジで温めてください。または、フライパンで炒めてもいいです。
・申込書を郵送してください。または、窓口に直接提出してください。
・インターネットで申し込むか、または電話で予約してください。
「または」は名詞だけでなく、動作や方法を表すまとまり、さらには文をつなぐこともできます。案内文や説明文などでよく使われます。
③ 選択肢が三つ以上ある場合
・バター、サラダ油、またはオリーブ油で肉を炒めてください。
三つ以上の選択肢がある場合、一般に最後の選択肢の前に「または」を置きます。
「A、B、またはC」という形です。

3.「それとも」の使い方
① 二つの疑問文をつなぐ
・コーヒーにしますか。それとも紅茶にしますか。
・日本語を勉強しますか。それとも英語を勉強しますか。
・電車で行きますか。それともバスで行きますか。
どの文も、相手にどちらかを選ぶよう求めています。
② 後半の疑問文を省略する
A:コーヒーにしますか。それとも紅茶?
B:紅茶をお願いします。
「それとも紅茶?」は、「それとも紅茶にしますか」の省略です。実際の会話では、このような省略がよく使われます。
③ 「それとも」は名詞同士を直接つなげない
○ 電車またはバスで来てください。
× 電車それともバスで来てください。
「それとも」は、「または」のように単純に名詞同士をつなぐことはできません。次のように疑問文にします。
○ 電車で来ますか。それともバスで来ますか。
「それとも」は、選択疑問文を作るための表現です。

4.疑問文でも「または」は使える
ここは、日本語学習者が特に間違えやすいところです。「または」は平叙文、「それとも」は疑問文と覚えてしまうと、次の文が説明できません。
○ バターまたはサラダ油を使いますか。
この文は正しい日本語です。ただし、「バターかサラダ油のどちらかを使うのですか」という、選択肢全体についての確認と解釈するのが自然です。
一方、次の文はどうでしょうか。
○ バターを使いますか。それともサラダ油を使いますか。
こちらは、どちらを使うか相手に尋ねています。
| 例文 | 質問の中心 |
|---|---|
| バターまたはサラダ油を使いますか。 | そのいずれかを使うのか |
| バターを使いますか。それともサラダ油を使いますか。 | どちらを使うのか |
つまり、「または」は疑問文でも使えますが、「それとも」とは質問の焦点が違うのです。なお、「または」を使った質問が必ず「はい・いいえ」で答えられるわけではありません。文脈によっては、どちらかを答える質問として使われることもあります。
5.「か」と「または」の違い
「または」は、多くの場合、助詞「か」で言い換えられます。
① バターまたはサラダ油で炒めてください。
② バターかサラダ油で炒めてください。
どちらも自然ですが、「または」の方がやや硬い表現です。
・土曜日か日曜日に遊ぼう。
・土曜日または日曜日に遊ぼう。
友達同士の会話では前者の方が自然です。後者は予定表や案内文のような印象になります。ただし、すべての場合に「または」と「か」を機械的に置き換えられるわけではありません。特に文をつなぐ場合は、文全体の形を調整する必要があります。
6.「あるいは」「もしくは」「ないしは」との違い
選択を表す表現には、ほかにも「あるいは」「もしくは」「ないしは」があります。
| 表現 | 特徴 | 例文 |
|---|---|---|
| または | 基本的な選択 | 電話またはメールで連絡する |
| あるいは | 選択・別の可能性 | 明日、あるいは明後日に出発する |
| もしくは | 書き言葉・規定など | 氏名もしくは住所を記入する |
| ないしは | 硬い文章での選択 | 本人ないしは代理人が出席する |
| それとも | 選択疑問文 | 行きますか。それとも帰りますか |
「あるいは」「もしくは」「ないしは」は、「または」に近い意味で使われますが、文体や使用場面に違いがあります。
なお、法律文では「又は」と「若しくは」を選択肢の階層によって使い分ける決まりがあります。一般的な日本語の使い方とは区別して理解しましょう。
7.「あるいは」は推量にも使える
「あるいは」には、選択を表す以外の使い方もあります。
○ この雲の様子では、あるいは午後から雨になるかもしれない。
この「あるいは」は、「ひょっとすると」「もしかすると」に近い意味で、可能性を表しています。
× この雲の様子では、または午後から雨になるかもしれない。
この用法では、「あるいは」を「または」に置き換えることはできません。選択肢を結ぶ用法と、副詞的に可能性を表す用法を区別する必要があります。
8.「または」と「それとも」では答え方も変わる
次の二つの質問を比較しましょう。
質問A:日本語または英語を勉強していますか。
答え:「はい、日本語を勉強しています。」
この質問は、日本語か英語の少なくともどちらかを勉強しているかどうかを確認していると解釈できます。
質問B:日本語を勉強していますか。それとも英語を勉強していますか。
答え:「日本語を勉強しています。」
こちらは、どちらを勉強しているのかを答えるのが自然です。もちろん、両方を勉強していれば「両方です」と答えることもできます。つまり、「または」と「それとも」の違いは、相手に求める答え方にも影響するのです。
9.練習問題
( )に「または」「それとも」のどちらかを入れてください。
問題1 受付で学生証( )パスポートを提示してください。
問題2 昼ご飯はラーメンにしますか。( )カレーにしますか。
問題3 土曜日( )日曜日に会議を開きます。
問題4 日本へは飛行機で行きますか。( )船で行きますか。
問題5 申請書は窓口に提出してください。( )郵送してもかまいません。
解答と解説
| 問題 | 正解 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | または | 名詞同士の選択 |
| 2 | それとも | 選択疑問文 |
| 3 | または | 日程の選択 |
| 4 | それとも | 選択疑問文 |
| 5 | または | 提出方法の選択 |
10.まとめ
「または」と「それとも」は、どちらも選択を表しますが、使い方には明確な違いがあります。
【または】
・名詞、句、文などをつなぎ、選択肢を示す。
・平叙文、命令文、疑問文で使える。
・「か」「あるいは」「もしくは」に近い。
・案内文や説明文などでよく使われる。
【それとも】
・選択疑問文で使う。
・相手にどちらを選ぶか尋ねる。
・前の選択肢を受け、別の選択肢を示す。
・日常会話でもよく使われる。

以上です。




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