「刺さる」??
最近、「この言葉、刺さる」「若者に刺さる商品」「この広告は私に刺さった」などという言い方をよく耳にします。
でも、よく考えると少し不思議です。
いったい何が、どこに刺さっているのでしょうか。
「刺さる」という言葉は、もともとの物理的な意味から、少しずつ意味を広げてきたようです。
今回はその変化を三段階で見てみましょう。
① もともとは「物が刺さる」
「刺さる」の基本的な意味は、とても具体的です。
・指に針が刺さる
・壁に矢が刺さる
・足にとげが刺さる
細長い物や先のとがった物が、別の物の中に入り込む。これが本来の「刺さる」です。

② 「心に刺さる」―比喩として使われる
そこから、「刺さる」は人の気持ちにも使われるようになります。
・先生の一言が心に刺さった。
・この歌詞は胸に刺さる。
・その指摘はちょっと刺さった。
もちろん、本当に心臓に何かが刺さっているわけではありません。
言葉や音楽などが、心の奥まで強く届くことを「刺さる」と表現しています。

昔からある表現なら、
「心に響く」
「胸を打つ」
「身につまされる」
「図星だ」
などが近いでしょう。
ただし、現在の「刺さる」は、これらより意味の範囲がかなり広くなっています。
③ 今は「人・層・市場」にまで刺さる
最近特に面白いのが、次のような使い方です。
・この広告は若者に刺さる。
・この曲は30代に刺さる。
・この商品は女性に刺さりそうだ。
・このデザインは外国人観光客に刺さる。
・こういう企画は一部のマニアに刺さる。
・この商品は海外市場にも刺さるかもしれない。
ここでは、もう「心」という言葉さえ出てきません。
「若者に刺さる」=若者の心をつかむ、若者に強く訴える
という意味です。
つまり「刺さる」は、
何かが心の中に深く入るというイメージを残しながら、
「ある人・ある層に強く受け入れられる」という意味まで広がってきたのです。

「刺さる」は意味が抽象化した
| 段階 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| ① 本来の意味 | 矢が板に刺さる | 物理的に入り込む |
| ② 比喩 | 言葉が心に刺さる | 心に強く響く |
| ③ 現代的な広がり | 若者に刺さる | ある人・層の心をつかむ |
こうして見ると、「刺さる」という言葉そのものは昔からありますが、
何に対して使えるかが大きく広がったことが分かります。
なぜ「刺さる」は便利なのか
「刺さる」の便利なところは、一語でいろいろな感情や反応を表せることです。
| 従来の言い方 | 今なら |
|---|---|
| 心に響く | 刺さる |
| 胸を打つ | 刺さる |
| 図星で痛い | 刺さる |
| 若者の心をつかむ | 若者に刺さる |
嬉しい場合にも、少し痛い場合にも、マーケティングの話にも使える。
この意味の広さが、現在の「刺さる」の特徴なのかもしれません。
まとめ
「刺さる」は、もともとは「矢が刺さる」「針が刺さる」のような物理的な動詞でした。
それが、
物に刺さる
↓
心に刺さる
↓
若者に刺さる・市場に刺さる
と、しだいに抽象的な意味へ広がってきました。
「最近の若者の言葉は難しい」と思うことがありますが、
こうして元の意味からたどってみると、意外に分かりやすいものです。
言葉の意味は、突然生まれるのではなく、昔からある意味を土台にして少しずつ広がっていく。
「刺さる」は、その変化がとてもよく見える言葉ではないでしょうか。
以上です。




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