「~と思っていて…」|なぜ「思っています」と言い切らない?

「と思っていて」

最近よく聞く「~と思っていて……。」

「私は、この問題はもっと慎重に考えるべきだと思っていて……」

 テレビの討論番組やYouTube、インタビューなどを見ていると、最近こんな言い方をよく耳にしませんか。以前なら、

「私は、この問題はもっと慎重に考えるべきだと思っています。」

と言っていたような場面です。ところが今は、「思っています」ではなく「思っていて」。しかも、そのあとに必ずしも「だから~」と明確につながるわけではありません。

「思っていて…」イラスト

結論から言うと――
「~と思っていて」は、誤りとは言えません。
日本語にもともと多い「言いさし表現」の一種と考えることができます。
ただし、文と文の関係をはっきり示さないまま話が続くため、「なぜそこで『て』なの?」と違和感を持つ人がいるのも事実です。

「思っています」と「思っていて」は何が違う?

表現感じ
私は必要だと思っています。ここで一度、意見が完結する
私は必要だと思っていて、……意見を出しながら、そのまま次の話へ進む

 「思っています。」なら、そこで文は終わります。一方、「思っていて」の「て」は、本来は次の内容につなぐ形です。

たとえば、

「必要だと思っていて、以前から会社にも提案しています。

なら非常に分かりやすいですね。「そう思っている」→「だから提案している」という関係があります。ところが最近よく聞くのは、

「私は必要だと思っていて、そもそもこの制度というのは……」

のような話し方です。後半は前半の結果でも理由でもありません。ただ、そのまま話が続いていきます。

ここが、この表現を気にする人が「何か変だな」と感じるポイントです。

「思っていて」そのものを調べた研究がある(2025年)

 この表現について調べてみると、非常に興味深い研究が見つかりました。東京外国語大学の鈴木智美氏による2025年の論文、

「日本語母語話者の意見表明の発話に見られる『と思っていて』『と思っているので』」です。

 タイトルからして、まさに今回の疑問そのものです。論文自身も、テレビなどで

「~と思っていて……」

という話し方を聞き、なぜ「思っています」「思っているんです」などと言わず、「思っていて」とつなぐのかという疑問を持ったことを研究の出発点にしています。そして実際の話し言葉のデータを調べた結果、意見をいったん言い切ってもよさそうなところで、「思っていて」によって次の文へつないでいく例が複数確認されています。

違和感の正体は「て」の後がはっきりしないこと

 この研究で非常に面白いのが、「違和感」の正体についての説明です。

「て」は通常、

「朝起き、ご飯を食べた。」
「雨が降っ、試合が中止になった。」

のように、前後を何らかの関係で結びます。
 ところが、

「私はこうだと思っていて、○○については……」では、その関係が必ずしもはっきりしません。鈴木氏は、「て形」が持つ並列の働きによって、前後の関係を明確にしないまま主張が次々につながっていくことが、違和感につながっているのではないかと分析しています。

「思っています。」
→ 一度ボールを置く感じ。

「思っていて、……」
→ ボールを持ったまま、そのまま次の話へ走っていく感じ。

 こう考えると分かりやすいでしょう。

これは「言いさし表現」という日本語の特徴

 もっと大きく見ると、「思っていて」は日本語に非常に多い「言いさし表現」の一つです。たとえば、

「ちょっとお願いがあるんですけど……
「明日は用事がありますので……
「私としては少し難しいと思って……

など、日本人は文を最後まで言い切らずに終えることがあります。自然会話を調べた研究では、接続助詞などで終わる「言いさし」がかなり多く使われていることも分かっています。
 2012年の自然会話コーパスを使った研究では、母語話者の自然会話の中で「言いさし表現」が占める割合は3割以上でした。
 つまり日本人は、そもそも想像以上に文を最後まで言い切らないのです。

話し言葉は、そもそも「文」がなかなか終わらない

 書き言葉なら、

「私はこう考えています。理由は二つあります。第一に……」と文を区切ります。しかし実際の会話では、

「私はこう考えていて、で、その理由としては二つぐらいあるかなと思っていて、一つは……」というように、「て」「けど」「ので」などを使って、節を次々につなぐことがあります。

 国立国語研究所の『日本語話し言葉コーパス』を紹介した専修大学の解説には、実際の発話で約1分間、一度も明確な文末が現れない例まで紹介されています。文章なら非常に長い一文ですが、会話ではそれほど不自然ではありません。

「思っていて」も、この「話しながら次へつないでいく日本語」の一部と考えることができます。

では、なぜ「思っています」と言い切らないのか

 いくつかの理由が考えられます。

① 断定を少し弱められる

「私はこう思っています。」

と言うと、自分の意見を一度はっきりと提示します。
一方、

「私はこう思っていて……」なら、まだ話の途中です。

 そのため、「これが私の結論です」と強く言い切る感じが弱くなります。 
 言いさし表現には、意見の違う相手への配慮や断定を避ける働きがあることも研究で指摘されています。

② 会話を止めず、そのまま説明を続けられる

「思っています。」で一度終えると、会話には小さな区切りができます。
「思っていて、……」なら、そのまま理由、背景、別の意見へと進めます。
 特にテレビのコメント、YouTube、ポッドキャスト、座談会など、その場で考えながら長く話す場面とは相性のよい言い方です。

③ 「意見」より「自分が持っている考え」を背景として置ける

「思う」と「思っている」にも少し違いがあります。

表現基本的な感じ
そう思う今ここで判断・意見を示す
そう思っているその考えを持っている状態
そう思っていて……その考えを背景に置き、そのまま話を続ける

 「私はこういう考えを持っていてですね……」という感覚に近いのでしょう。

若者言葉なの?

これは「若者言葉」と決めつけないほうがよさそうです。

 確かに、若い論客やYouTuberなどの話し方として気づいた人は多いようです。しかし研究を見ると、2000年代初頭に収録された話し言葉のデータにも類似した用法があります。
 さらに2025年の研究で取り上げられた実際のテレビの例にも、20代のスポーツ選手だけでなく、50~60代のコメンテーターが含まれています。

 したがって、

「最近の若者が突然作った言葉」ではない。
しかし、自分の意見を述べる場面で「~と思っていて」とつなぐ話し方が、現代のメディアなどで目につきやすくなっている――くらいに考えるのがよさそうです。

「偉そう」に聞こえることもある?

 人によっては、「思っていて」を繰り返す話し方に、少し気取った感じや、いわゆる「意識高い」感じを受けることもあるようです。

 ただし、「思っていて」という表現そのものに「偉そう」という意味があるわけではありません。
むしろ、
「思っています」と言い切るはずだと思って聞いている

ところが「思っていて」で話がそのまま続く

「まだ続くの?」「何と何をつないでいるの?」という小さな違和感が生じるということではないでしょうか。
 そして同じ語尾が何度も続くと、その話し方そのものが耳につくようになります。

学習者は使ったほうがいい?

 日本語学習者には、まず

「私は~と思います。」
「私は~と思っています。」

という基本形をしっかり覚えてもらうのがよいでしょう。そのうえで、実際の日本人の会話を聞くと、

「~だと思っていて……」
「~だと思ってるんですけど……」
「~かなと思って……」

のように、最後まで言い切らない形が非常に多いことを知っておく必要があります。教科書の日本語と実際の会話の日本語が違って見える典型的な例とも言えそうです。

まとめ

●「~と思っていて」は間違いとは言えない
● 日本語にもともと多い「言いさし」「節をつなぐ話し方」の一種
● 「て」で前後の関係を明示しないため、違和感を持つ人もいる
● 断定を弱めながら、そのまま説明を続けられる
● 若者だけの表現ではなく、複数世代で使われている
● ただし「最近生まれた表現」と断定できるデータもない

 「私はそう思っています。」と言う人と、「私はそう思っていて……」と言う人。伝えている内容はほぼ同じでも、話し方のリズムはかなり違います。昔から日本語には「最後まで言い切らない」という特徴がありました。

 「思っていて」は、その特徴が現代の意見表明の場面で目立つようになった一例なのかもしれません。

 今度テレビの討論番組やYouTubeを見るとき、少し注意して聞いてみてください。

「思っていて……」――たぶん、かなり耳に入ってくると思います。

「おもっていて」まとめ

参考にした主な研究

・鈴木智美(2025)「日本語母語話者の意見表明の発話に見られる『と思っていて』『と思っているので』」『東京外国語大学 国際日本学研究』第5号
・朴仙花(2012)「日本語母語話者による『言いさし』表現の使用に影響を与える要因について」
・小此木江利菜(2022)「日本語母語話者の雑談における言いさし表現」

以上です。

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