「ひもとく」は「本を読む」だった? 7割が選んだ新しい意味
「歴史をひもとく」「事件の背景をひもとく」──こんな言い方を、ふだん何気なく使っていませんか。
実は「ひもとく」は、もともと「関係する書物を読む」という意味を持つ言葉です。ところが今では、「真相を明らかにする」という意味で受け取る人のほうが、ずっと多くなっています。
文化庁の『令和7年度 国語に関する世論調査』では、「ひもとく」の意味について、次のような結果が出ました。
・関係する書物を読む …… 13.1%
・真相を明らかにする …… 69.9%
・両方 …… 15.0%

「ひもとく」の意味を読み解く調査図解
今の日本語では「ひもとく=調べて明らかにする」というイメージが、すでに広く定着しているわけです。
出典
上の結果は、文化庁の令和7年度「国語に関する世論調査」によるものです。国語に関する意識や言葉の理解を調べる、毎年注目される調査です。今回の調査では、「ひもとく」のほかにも「佳境に入る」「流れに棹さす」「気が置けない」「噴飯もの」など、意味の受け取られ方が揺れている言葉が取り上げられています。
この「国語にかなする世論調査」は言葉の意味が時代とともにどう変わるかを考えるための、とてもよい材料です。
「ひもとく」の本来の意味は?
「ひもとく」は、もともと本のひもを解いて開くところから来た言葉です。そこから、関係する書物を読んで内容をたどるという意味で使われてきました。
たとえば、
- 古典をひもとく
- 史料をひもとく
- 古代史をひもとく
のような使い方です。
この場合の「ひもとく」は、ただ「調べる」というより、本や資料を読み進めながら理解していくという感じがあります。
「真相を明らかにする」への意味の広がり
今の日本語では、「ひもとく」は本を読む場面だけでなく、もっと広く使われています。
- 事件の背景をひもとく
- ヒットの理由をひもとく
- 成功の秘密をひもとく
こうした言い方では、「本を読む」という具体的なイメージより、複雑なものを整理し、筋道を追って明らかにするという意味が前面に出ています。
たぶん多くの人は、「資料をたどる → 理由や背景が分かる」という流れの中で、「ひもとく」を自然に『解明する』『読み解く』に近い言葉として受け取るようになったのでしょう。つまり、意味が完全に間違って広まったというより、もとの意味から少しずつ広がったと見るほうが自然でしょう。

「誤用」と決めつけるだけでは見えないこと
こういう結果を見ると、すぐに「本来の意味と違う」「誤用だ」と言いたくなる人もいます。もちろん、辞書的・伝統的な意味を知っておくことは大切です。特に、日本語を教える立場では、まず本来の意味をきちんと押さえる必要があります。ただ、その一方で、実際に多くの人がどう理解しているかも無視できません。
言葉は生き物。時代とともに意味が広がったり、中心になる意味が入れ替わったりします。
「ひもとく」は、その変化がとても分かりやすく表れた例だと言えるでしょう。
学習者は次のように理解
日本語の学習者は、次のように理解しておきましょう。
- もともとの意味:本や資料を読んでたどる
- 今よく使われる意味:背景や真相を明らかにする
- 実際の使い方:今は後者で使われることもとても多い
つまり、「辞書の意味」と「今の使用実態」の両方を見ることが大切です。こういう視点を持つと、日本語は「正しい・間違い」だけではなく、変化していく言葉として見えてきます。
まとめ
「ひもとく」は、もともと「本を読む」という意味の言葉でした。しかし今では、文化庁の調査でも分かるように、「真相を明らかにする」という意味で受け取る人のほうが圧倒的に多くなっています。
日本語を学ぶときは、辞書の説明だけでなく、今の日本語でどう使われているかを見ることが大切ですね。

「ひもとく」は、本を読む言葉だった。けれど今は、真相を明らかにする言葉として生きている。この変化そのものが、言葉のおもしろさなのだと思います。
以上です。



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