「了解しました」と「承知しました」
「了解しました」は目上の人には使わないほうがいい。目上の人には「承知しました」を使う。ビジネスマナーでは、よくこのように説明されます。でも、「了解しました」も「しました」という丁寧な形です。それなのに、なぜ目上の人には「承知しました」のほうがよいのでしょうか。
「了解」は、基本的に「わかった・理解した」という言葉。
横の関係や、上から下にも使える言葉です。
一方、「承知」は「あなたの話・指示を受けました」という感じが強く、下から上に向かう感じがあります。
そのため「了解しました」が失礼な言葉だからダメなのではなく、目上には「承知しました」のほうが敬意を示しやすく、無難なのです。
● 明日の会議は10時からです。―了解しました。
→ 「内容を理解しました」という返事。
● 明日の会議は10時からです。―承知しました。
→ 「内容を理解し、受けました」という返事。

「了解しました」と「承知しました」の違いを一言で
| 表現 | 基本イメージ | 言葉の方向 |
| 了解しました | 「わかりました」 | 横・上→下にも使う |
| 承知しました | 「承りました」 | 下→上の感じが強い |
この「言葉の方向」を意識すると、なぜ目上の人には「承知しました」が無難なのかが分かりやすくなります。
「了解しました」は本当に目上に失礼なのか
まず大切なのは、「了解しました」そのものが失礼な日本語というわけではないということです。
「了解」は、事情や内容を理解するという意味です。たとえば、
「了解しました。」
と言えば、単純に「9時ですね。分かりました」という意味になります。しかも、了解」だけではなく、「了解しました」と言っています。「しました」は丁寧な形なので、「了解しました」は少なくとも丁寧語を使った表現です。
つまり、
と考えるのは少し乱暴です。
問題は、失礼な言葉かどうかではなく、目上への敬意をどれだけ示せるかなのです。
なぜ「了解」は敬意が弱く感じられるのか
「了解」の中心的な意味は、
「あなたの言ったことを理解しました」です。相手を高くしたり、自分を低くしたりする意味は特にありません。そのため、
上司 → 部下 「了解」
同僚 → 同僚 「了解しました」
部下 → 上司 「了解しました」
のように、さまざまな方向で使うことができます。つまり「了解」は、上下関係を強く意識しない横方向の言葉なのです。さらに「了解」は、無線通信や業務連絡などでも、
「了解。そのまま続けてください。」
のように使われます。
そのため「了解」には、簡潔な業務連絡・対等な者同士の返事・上から下への返事という印象もあります。
「了解しました」が目上に使いにくいのは、失礼な意味があるからではありません。
「了解」という言葉自体に、相手を立てる働きがあまりないため、目上には敬意が弱く感じられることがあるのです。
では、なぜ「承知しました」は目上に使いやすいのか
一方、「承知」は少し方向が違います。「承知」の「承」には、「承る」「受ける」という意味があります。また「承知」には古くから、目上の人からの命令や依頼などを受ける意味でも使われてきました。そのため、
「承知しました。」
と言うと、単なる「分かりました」だけではなく、
「あなたのお話・ご指示を受け取りました」
という感じが出ます。このため「承知しました」は、話し手が一段下がって、相手の言葉を受けるような印象になります。
了解=横・上から下にも使う
承知=下から上に向かう感じが強い
だから、目上には「承知しました」のほうが自然かつ無難なのです。
「承知」は本当に下から上だけの言葉?
ただし、ここには注意が必要です。「承知」が文法的に「目下から目上にしか使えない言葉」というわけではありません。
たとえば、
という言い方があります。これはむしろ、上の立場の人から下の立場の人に向かって使いそうな言葉です。ですから、
了解=横
承知=下から上
というのは絶対的な文法ルールではありません。あくまで、「分かりました」という返事として使った場合の方向感と考えればよいでしょう。
上司に「了解しました」と言ったら失礼?
では、上司には絶対に「了解しました」と言ってはいけないのでしょうか。結論的には問題なし。そこまで神経質になる必要はないでしょう。たとえば、普段から気軽に話している上司との社内チャットで、
部下「了解しました!」
と返しても、それだけで大変失礼な人だと思われるとは限りません。
職場の雰囲気や人間関係によっては、普通に使われています。ただし、
取引先
顧客
かなり上位の上司
改まったメール
では、「承知しました」のほうが安全であり、無難だということです。
「了解しました」は使ってはいけないから避けるのではありません。
「承知しました」のほうが相手への敬意が伝わりやすく、誤解されにくいから使うのです。
「了解いたしました」なら目上にも使える?
「了解しました」より丁寧に、
「了解いたしました」と言うこともあります。
「する」を謙譲語の「いたす」に変えているので、「了解しました」より丁寧な表現です。したがって、「了解いたしました」は間違った日本語というわけではありません。
ただ、目上の人への返事として使うのであれば、わざわざ「了解」を「いたしました」で丁寧にするより、
「承知しました」
「承知いたしました」
と言ったほうが自然かもしれません。
「承知しました」と「かしこまりました」の違いは?
さらに丁寧な返事として、「かしこまりました」があります。三つを大まかに比べると、次のようになります。
| 表現 | 使いやすい場面 | 丁寧さ |
| 了解しました | 同僚・親しい上司・社内連絡 | ○ |
| 承知しました | 上司・取引先・一般的なビジネス | ◎ |
| かしこまりました | 顧客・接客・より丁寧な場面 | ◎◎ |
一般的なビジネス場面なら、迷ったときは「承知しました」と覚えておけば、まず困りません。
二つの違いを場面で比べてみよう
| 場面 | 了解しました | 承知しました |
| 同僚からの連絡 | ◎ 自然 | ○ 少し丁寧 |
| 親しい上司からの連絡 | ○ 職場による | ◎ 無難 |
| 上位の上司への返事 | △ 避けるのが無難 | ◎ 自然 |
| 取引先へのメール | △ | ◎ |
| 顧客への接客 | △ | ○ |
まとめ|「失礼かどうか」より言葉の方向を見る
「了解しました」と「承知しました」を、単純に、
「了解しました=失礼」
「承知しました=丁寧」
と覚えるだけでは、二つの違いは十分に説明できません。
| 了解しました | 承知しました |
| 「分かりました」が中心 | 「受けました」が加わる |
| 横・上から下にも使える | 下から上の感じが強い |
| 目上には敬意が弱く感じられることがある | 目上への返事として使いやすい |
「了解しました」が失礼だからダメなのではありません。
「了解」は横・上から下にも使える言葉なのに対し、「承知」は下から上に向かう感じが強い。そのため、目上の人には「承知しました」のほうが自然で無難なのです。
こう考えると、「了解しました」と「承知しました」の使い分けも、単なるビジネスマナーの丸暗記ではなく、日本語の言葉の感覚として理解できるのではないでしょうか。

参考:国立国語研究所「ことば研究館」『「了解しました。」は敬意表現にならないか』、各種国語辞典「了解」「承知」の語義
以上です。



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