常熟興福寺から宇治黄檗、そして奈良興福寺。

中国風寺travel

自宅は京都府宇治市である。近くに黄檗山萬福寺がある。これはインゲン豆で有名な隠元和尚の開いた禅宗のお寺。

「山門を出れば日本ぞ茶摘みうた」という有名な句がある。境内に一歩入ると日本のお寺とは趣を異にした風情で、現在の中国各所にあるお寺をほうふつとさせる異国情緒あふれた寺院である。明朝が滅び、異民族の清朝にとって代わられた時期、隠元が日本に故郷福建省と同じ世界を再現しようとした意気込みもわかろうかというものである。

宇治市の黄檗山萬福寺

この萬福寺のシンボルともいえるのが下の写真の木製の魚。なんでも木魚の原型となったもので「開版(かいばん)」と言うらしい。こういうものがあるお寺は日本の他の地方にあるのだろうか。私はよく知らない。そしてよく似たものを中国の常熟に来て発見することになった。常熟興福寺の境内である。

中国にあるたいていの寺院は日本人にとってはいささかけばけばしく映るのだが、興福寺にそのような違和感を感じないのは、単に私が故郷黄檗山萬福寺に慣れているだけのことかもしれない。
ところで興福寺といえば日本人なら阿修羅像で有名な奈良にある興福寺を思い浮かべる。我らが常熟興福寺は何か関係があるのですかと日本からのお客さんを案内するたびに聞かれるのだが関係ありやなしや今一つわからない。
地元の人に聞いた話で恐縮だが、こういう言い伝えがある。

常熟の興福寺の鐘は特に有名で、この鐘の音がまたすこぶる大きいらしい。古い昔、この鐘をついたところはるか海の向こうの日本までその音色が届いたそうな。常熟興福寺の鐘の音を聞いた日本人がこれはすごいということで日本にも同じ名前の興福寺を建立したとか…。
虞山と尚湖の説話もそうだが、ここ常熟にはこのようにおおらかでほのぼのするような、悪く言えば“陳腐”な言い伝えが多いのである。

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