常熟、虞山と尚湖にまつわる神話

虞山と尚湖

常熟といえば、虞山と尚湖。ちょうど”笹かまぼこ”のような形をした山と湖が対峙し、それ以外はすべて平らというシンプルな地形です。虞山と尚湖はそれぞれ小さな山、小さな湖ですが、長江下流域ののっぺりした平野地域においては、多少目立った存在と言えるかもしれません。ならばそれなりの逸話、伝説の類があるはずだと調べてみますと、やはりありました。常熟人は知っている人が多いのかもしれませんが、たぶん日本語での紹介はこれが初だと思います。

太古の昔、中国の仙人が宴会を開いた時の話です。仙人というと私たち日本人は、老人しかも男性を想像してしまいますが、中国の仙人はイメージとしては若く、もちろん女性もいます。中国の宇宙船に嫦娥という名前がついていますが、これは月の女王様のような存在の仙人の一人。彼女も宴会にはもちろん出席します。その嫦娥の連れてきた娘が仙姑。一方、男性側の仙人の親玉が道童という若者を連れてきます。よくある話で、その二人仙姑と道童は一目ぼれで恋に落ちます。

常熟の虞山と尚湖

そうなると若い二人ですから、宴会が終わったともデートを重ねるようになります。しかし中国の仙人というのはいわゆる自由恋愛がご法度のようで、はたして嫦娥女王様に見つけられ罰を受けます。その罰というのが道童君は牛に姿を変えられ天宮追放、仙姑さんは生き物ですらない鏡にされてしまいます。

牛に姿を変えられた道童君は地上に降りていきます。おそらく上海あたりの海岸から上陸しとぼとぼと西へ歩き、探し当てたのが豊穣の地常熟です。疲れをいやすためにそこで横になった。これが虞山。

仙姑さんの方はどうかというと嫦娥の手鏡となってからもやはり道童君が忘れられません。結局ある日嫦娥に自分は今でも道童のことを慕っていると告げます。怒った嫦娥は鏡を天から投げ捨ててしまいます。鏡である仙姑は一条の光と化して地上に降り立ち、それすなわち尚湖(西湖)なのです。

以来、長きにわたって、そしてこれからも、道童君と仙姑はここ常熟の地で寄り添って生き続けていくのです。

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