みんなの日本語(初級1)第9課 教案Tips

みんなの日本語初級第9課

みんなの日本語(初級1)第9課のポイントについて整理します。

「が」で対象を表す場合

 第9課の導入ポイントは「私は〇〇が好きです」「私は〇〇がわかります」など「感情・能力・希望」などを表す「ナ形容詞」「動詞」を述部にもつ「~は〇〇が…」の形になる文型です。

 私はこれを、第6課で動詞が出てきた時と同様、第4課からの流れで提示します。

「が格」の導入

「が格」の導入

「読みます」の対象が「本」、これと同じように「好きです」の対象が「イタリア料理」、「わかります」の対象が「日本語」
ということで理解していもらえると思います。

格助詞は9個

 ここまで、格助詞が立て続けに出てくることになります。これからどんどん、こういうややこしいものが出てくると学習者が思ってしまうといけないので、ここらで「格助詞」は全部でこれだけ!というのを示しておくのもいいかもしれません。

格助詞は 「が、を、に、と、へ、から、より、まで、で」の9個
 残りは少し飛んで、比較の「より」12課「北海道は九州より大きいです」)一つだけですから少しは安心してもらえるかもしれません。

参考「はが構文」

 教える側として、以後に出てくるいわあゆる「はが構文」との違いをしっかり把握して教えることも必要です。以下本課には関係ありませんがご参考までに「~は〇〇が…」の構造を持つ日本文について整理します。

「…は〇〇が~」の構造を持つ文

 日本語には「私はあなたが好き」「象は鼻が長い」など、「…は〇〇が~」の構造を持つ文型が多くあります。見かけは同じでも構造的に大きく3つに分類できます。以下の3つですが違いがわかることが大切です。

  • (一)わたし は たこ焼き  好きです。
  • (二)大阪  たこ焼き  おいしいです。
  • (三)たこ焼き  わたし  作ります。

 3つの文の構造上の違いをはっきりさせましょう。まず主述関係をみましょう。第一文は「私は〔主部〕好きです〔述部〕」であるのに対し、第二文は「大阪はおいしいです」は変ですから「たこ焼きが〔主部〕おいしいです〔術部〕」となり明らかに構造が違うのがわかります。

 つまり(一)は「私は好きです」、その好きな対象は何か「たこ焼き」です、という構造。(二)は「たこ焼きがおいしい」それは「大阪」においてである、と限定しています。

 (三)の主述構造は「私が作ります」で(二)と同じです。そして(二)と同様に私が作るものは「たこ焼き」であるという限定を加えています。しかし(二)との違いは「私がたこ焼きを作る」のように「たこ焼き」が「対象(目的語)」になっていることです。

 以上まとめると

「…は…が~」の構造を持つ文の比較

「…は…が~」の構造を持つ文の比較

では一つずつ確認しましょう。

わたし は たこ焼き が 好きです

 「NはNが~」の形で「~」部が、感情・能力・希望を示す形容詞、動詞に限られる文型です。これが「みんなの日本語第9課」に出てくる最初の「…は〇〇が~」の構造文がこれです。

…は…が〔感情・能力・希望〕

…は…が〔感情・能力・希望〕

 例をあげます。

  • 日本語好きです
  • 王さんテニス上手です
  • 李さん数学苦手です
  • 張さん韓国語できます
  • 楊さんあります
  • お金ほしいです
  • 焼き肉食べたいです

以下のようにまとめることができます。

…は…が(感情・能力・希望)まとめ

…は…が(感情・能力・希望)まとめ

(※ この形式の文は一般的に「はが構文」とは呼ばれません。)

第9課で「私はイタリア料理が好きです」「私は日本語が少しわかります」、希望表現は課を改めて第13課「私は車がほしいです」「私は寿司を食べたいです」という形で学習しますが、ひとまとまりのものと考えられます。

大阪 は たこ焼き が おいしいです〔はが構文〕

 この文は「象は鼻が長い」と同じ、いわゆる「象鼻文」です。一つの解釈として次のように考えてもいいかと思います。

 「(大阪のたこ焼き) おいしい」という形容詞文で「大阪のたこ焼き」を主題化して「取り立て」ることで「(大阪のたこ焼き) おいしい」となり、「大阪のたこ焼き」の中の「大阪」だけを取り立てた表現が「大阪たこ焼きがおいしいです」となる。

大阪はたこ焼きがおいしい

大阪はたこ焼きがおいしい

「象は鼻が長い」など日本語の難文については以下の記事もご覧ください。

「みんなの日本語」では第16課「大阪は食べ物がおいしいです」で導入します。

たこ焼き は わたし が 作ります〔はが構文 その2〕

「Y は X が V」型構文

 「たこ焼きは私が作ります」「犯人は警察が探しています」というような文を「はが構文あ」の中の「YはXがV」型構文といいます。

  • 私がたこ焼きを作ります。〔能動文〕に対し
  • たこ焼きは私が作ります。〔目的語「たこ焼き」を主題化した〕

ということになります。

目的語の主題化

目的語の主題化

この例では目的語がモノで「たこ焼き」なので

  • たこ焼きは私に作られた。

は不自然ですが目的語が人の場合

  • 伊達が富澤を殴った。〔能動文〕
  • 富澤は伊達が殴った。〔目的語主題化文〕
  • 富澤は伊達に殴られた。〔受身文〕

となり、この形、つまり「Y は X が V」の形が受身の意味を持つことがわかります。

目的語の主題化は「みんなの日本語」では第17課で扱います。しかし「明日レポートを書きます」→「レポートは明日書きます」、「食堂でごはんを食べます」→「ごはんは食堂で食べます」等、主題化後「…は…が~」の形になる文は初級には出てこないようです。

「X は Y が V」型構文

 話し言葉で名詞句Xの後に「YがV」という節が続く場合も「はが構文」の一つとなります。

たこ焼きの鉄板が焦げついて困っている

たこ焼きの鉄板が焦げついて困っている

このあたりになると中級レベルということになります。

程度副詞

 とても、あまり、少し、全然、よく、だいたい、たくさん
などは、理解は簡単と思いますが、使い勝手がよいので「使える練習」たくさんしましょう。

理由をあらわす「から」

 使い勝手という意味では「から」も多用したくなる表現ですが、以下参考ですが、「ので」の導入がずっと先になり第39課になります。

  • 今日は 子供の 誕生日ですから、早く 帰ります。〔第9課例文〕
  • 体の調子が悪いので、病院へ行きます。〔第39課例文〕

 このため、学習者は後々になっても「から」を多用するというデータがあります。「ので」の方がよりていねいな言い方に適しているので、この課ではなくても早めに「ので」を教えるのもテクニックのひとつかもしれません。

 これについては、以下の記事をご参考ください。

 

以上です。

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