読解「なぜ車輪動物がいないのか」《日中対訳版》本川達雄Ⅰ

ノースカロライナ州ダーハム、デューク大学Duke univ.

 中国の日本語学科標準的テキスト「日語総合教程」第五冊第6課「なぜ車輪動物がいないのか」日中対訳版です。
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なぜ車輪動物がいないのか                 本川達雄

 デューク大学はダーラムという町にある。タバコ畑の広がるのどかなノースカロライナ州の片田舎だ。森の中に点々と建物がたっているだけで、歩いて行ける距離には何もない。買い物をするにも、子供を学校に連れて行くにも、車がなければとても生きていけない世界だった。

 日本では自動車への依存度はアメリカほどではないけれども、車輪のお世話になっている点では、似たようなものだろう。毎日駅まで自転車で出て、電車にゆられて勤め先に急ぐ。車輪がなければ、現代人の生活は回転していかない。

 ところが、まわりを見回しても、車輪を転がして走っている動物にはまったくお目にかかれない。陸上を走っているものたちは、二本であれ、四本であれ、六本であれ、突き出た足を前後に振って進んでいく。空を見上げても、プロペラ機は飛んでいても、プロペラの付いた鳥や昆虫はいないし、海の中でもやはり、スクリューや外輪船のような、回転する駆動装置をもった魚はいない。

 生物界には車輪がない。身の回りにある道具類は、よく調べてみると、その原理は生物がとうの昔に発明していたものばかりの中で、車輪は例外的に、人類独自の偉大な発明なんだ、と学生時代に習って、なるほどと感心した記憶がある(あれからもう二十年もたってしまった)。

 ところが、その後、自然界にも車輪があることが分かってきた。あの、顕微鏡でもなかなかみるのがむずかしいほど小さいバクテリアが、毛のはえた車輪を回転させて泳いでいたのである。

デューク大学はダーラムという町にある。

 デューク大学はダーラムという町にある。タバコ畑の広がるのどかなノースカロライナ州の片田舎だ。森の中に点々と建物がたっているだけで、歩いて行ける距離には何もない。買い物をするにも、子供を学校に連れて行くにも、車がなければとても生きていけない世界だった。
 杜克大学坐落在一个叫达勒姆的村镇上。这是北卡罗来纳州一个烟叶田遍布的悠闲宁静的边远乡下。森林中只是零星地分布着几座建筑物,在步行能到达的范围之内什么也没有。无论是去买东西还是送孩子上学,如果没有汽车的话,那是一个很难生活下去的地方。
・のどか(形動):静かでおだやかなさま。のんびりと落ち着いているさま。
・片田舎:都会から遠く離れた辺鄙な土地。
・点点:点を打ったように、あちこちに散らばっているさま。「足跡が点々と続く」
 日本では自動車への依存度はアメリカほどではないけれども、車輪のお世話になっている点では、似たようなものだろう。毎日駅まで自転車で出て、電車にゆられて勤め先に急ぐ。車輪がなければ、現代人の生活は回転していかない。
在日本,虽然对汽车的依赖程度没有美国那么高,但是从受益于车轮这一点来说似乎
是很相似的吧。每天早上骑自行车到电车站,然后在电车摇晃中急急忙忙赶往工作单位。如果没有车轮的话,现代人的生活就不能运转下去。
・依存(いそん/いぞん):他のものに頼って存在していること。「大国の経済力に依存する」「生活を親に依存する」「依存心」
・勤め先:勤務先。勤務する場所。
・回転する:物事が働くこと。機能すること。
自転車と乗り物のカラフル行進

ところが、まわりを見回しても、……

 ところが、まわりを見回しても、車輪を転がして走っている動物にはまったくお目にかかれない。陸上を走っているものたちは、二本であれ、四本であれ、六本であれ、突き出た足を前後に振って進んでいく。
但是环视周围,完全找不到依靠车轮滚动前行的动物。在陆地上行走的动物中,无论是两条腿的,四条腿的,还是六条腿的都是前后摆动长在外面的腿前行的。
・見回す:あたりをぐるっと見る。「あたりを見回す」「室内を見回す」
・目にかかる:①目につく。目にとまる。②(「おー」の形で)お会いする。
・~であれ:~であっても。(たとえ)…であるにしても。
・突き出る:一部分が前方、あるいは外側に向かって出る。「釘が突き出る」「突き出た腹」
空を見上げても、プロペラ機は飛んでいても、プロペラの付いた鳥や昆虫はいないし、海の中でもやはり、スクリューや外輪船のような、回転する駆動装置をもった魚はいない。
仰望天空,虽有螺旋桨飞机飞行,但是利用螺旋桨飞行的鸟类和昆虫是没有的。同样海里也没有像螺旋桨或外轮船那样带有转动的驱动装置的鱼类。
・プロペラ:propeller
・スクリュー:screw、船舶のプロペラ型推進器。
・駆動:動力を与えて動かすこと。「モーターを駆動する」「前輪駆動」

生物界には車輪がない。

 生物界には車輪がない。身の回りにある道具類は、よく調べてみると、その原理は生物がとうの昔に発明していたものばかりの中で、車輪は例外的に、人類独自の偉大な発明なんだ、と学生時代に習って、なるほどと感心した記憶がある(あれからもう二十年もたってしまった)。
动物界没有车轮。我们身边的工具,如果好好地调查一下就会发现,它们的制作原理
清一色来自动物很早以前就已发明的东西,其中只有车轮例外,是人类特有的伟大发明。记得学生时代学到这里的时候就曾大加赞赏,感到的确如此(如今已过了20年)。
・界:①くぎり。さかい。「界隈」「結界」②生物分類上の一番上の単位。「動物界」「植物界」
・身の回り:自分の周辺。身辺。
・とうの昔(疾うの昔):ずっと以前。とっくの昔。「あの土地はとうの昔に売ってしまった」
・感心:すぐれている、立派であるとして心を動かされる。「見事な回答に感心する」「感心な心掛け」(比較)関心
 ところが、その後、自然界にも車輪があることが分かってきた。あの、顕微鏡でもなかなかみるのがむずかしいほど小さいバクテリアが、毛のはえた車輪を回転させて泳いでいたのである。
但是,后来我明白了自然界也有车轮。用显微镜也很难看清的非常小的细菌,竟然转
动着长有毛的车轮在游泳。
・顕微鏡、望遠鏡
・バクテリアbacteria:細菌
・生える:①毛・歯・角などが生じる。②植物、根、芽、枝などが生じる。
→ つづきます。

 

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