「煽り運転」の「煽る」って、もともとどういう意味?

「煽る」キャッチ

煽る(あおる)?

 ニュースなどでよく耳にする「煽り運転」。前の車との距離を極端に縮めて、相手を威圧・挑発するような運転を指します。ところで、この「煽る(あおる)」という言葉、もともとはどんな意味なのでしょうか。
 実は、「相手を挑発する」という意味から始まった言葉ではありません。意味の変化をたどっていくと、

風や火で物を動かす
↓
手足を動かして前へ進む
↓
人の気持ちを動かす
↓
相手を挑発する

という意味変化を経ているようです。

「煽る」の意味変化

① もともとは「風や火の勢いで物を動かす」

『広辞苑』では、「煽る」の最初の意味として、風や火の勢いで物を動かす、または揺り動かすという意味が挙げられています。

たとえば、
・強風に煽られて帽子が飛んだ。
・山火事が風に煽られて燃え広がった。
などと言います。ここではまだ、人の感情とは関係ありません。
ポイントは、

外から力が加わって、物が動いたり勢いが強くなったりする

ということです。「煽」という漢字は火偏+扇。漢字の形からも、火と風を連想しやすいですね。

「風にあおられる」

② 「手や足を動かして前へ進む」

次に、「煽る」は手や足を動かして、物や体を前へ進めるという意味にも使われます。たとえば、「足を煽って泳ぐ」。これは足を動かして水を押し、その力で体を前へ進めるという意味になります。「煽る」の根本には、

力を加えて、動きを起こす

という共通したイメージがあります。

「足を煽る」

③ 物ではなく「人の気持ち」を動かす

さらに「煽る」の意味は具体的な動作から、抽象的な意味へ広がっていきます。今度は物を動かすのではなく、人の気持ちを動かす意味になります。
たとえば、
・不安を煽る
・競争心を煽る
・想像力を煽られる
・購買意欲を煽る などがあります。
「購買意欲を煽る」であれば、広告などによって刺激を受け、

「欲しい」
↓
「もっと欲しい!」

と気持ちが強くなるイメージです。つまり、

「風を送る → 火が強くなる」⇒「刺激を与える → 気持ちが強くなる」

という抽象的な意味へ広がったと考えると分かりやすいでしょう。

「人の心を煽る」

④ 「そそのかす・おだてる・扇動する」

さらに「煽る」には、人をそそのかす、おだてる、扇動するという意味があります。つまり、相手の気持ちを刺激して、何かをさせようとするわけです。

「もっとやれ!」
「負けるな!」
「黙っていていいのか!」
などと相手の感情を刺激し、行動を起こさせるのも「煽る」です。
ここまで来ると、現在よく使われる「煽る」の意味にかなり近づいてきます。

「そそのかす」

⑤ そして「煽り運転」へ

そして現代では、「煽る」→「煽り運転」という言葉が広く知られるようになりました。前の車との距離を極端に縮めたり、執拗に追いかけたり、急な割り込みをしたりして、相手を威圧したり挑発したりする運転です。
この場合の「煽る」は、

相手の気持ちを刺激し、反応させようとする

という意味です。「風に煽られる」と「煽り運転」では、まったく違う意味のようにも見えます。しかし、よく見ると共通点があります。

外から力を加えて、動きや勢いを大きくする

というイメージです。

「煽り運転」

「煽る」の意味をまとめると

意味例イメージ
① 風や火で物を動かす風に煽られる物が動く
② 手足を動かす足を煽って泳ぐ自分が進む
③ 感情・欲求を刺激する不安を煽る心が動く
④ 人をそそのかす相手を煽る行動を促す
⑤ 威圧・挑発する煽り運転相手を反応させる

まとめ

「煽り運転」という言葉だけを見ると、「煽る=挑発する」という意味を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、もともとの「煽る」は、風や火の力によって物を動かしたり、揺らしたりする言葉でした。
そこから、

物を動かす
↓
自分を動かす
↓
人の心を動かす
↓
人を挑発する

と意味が広がってきました。新しい言葉に見える「煽り運転」も、実は昔からある「煽る」という言葉の延長線上にあります。言葉の意味は突然まったく別のものになるのではなく、もとのイメージを残しながら少しずつ変化していくのですね。「煽る」は、そんな日本語の意味の変化がよく分かる言葉の一つです。

以上です。

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