ゴジラvsコング 60年ぶりの対決が教えてくれる大切なこと

シン・ゴジラ

人生最初の映画「キングコング対ゴジラ」

キングコング対ゴジラ

キングコング対ゴジラ(1962年)

 生まれて初めて見た映画が「キングコング対ゴジラ」(1962年夏公開)だった。1962年なら5歳のはずだ。その年の記憶は、全部合わせても、いくつか断片としてあるだけなのに、その日見た映画の中のいくつかの場面や、帰りに映画館の受付でもらったシールの図案まで覚えている。幼稚園児の筆者には、よほど印象深かったに違いない。

 ただ、映画の中で、ゴジラとキングコングが破壊した城を、今の今まで、ご近所の大阪城だと思い込んでいたのだが、今回調べてみると、実際は熱海城という設定だったようだ。

 

 

ゴジラシリーズ

 以来、今に至るまで、ゴジラ映画が好きである。何と言ってもゴジラ映画の内容は、その時その時の時代を写す鏡であった。さらに言えば、ゴジラ映画は新しい時代を予見する物語でもあった。幼い筆者が見た、「キングコング対ゴジラ」(ゴジラシリーズ第3作に当たる)にしても、日本の怪獣ゴジラが、アメリカ代表としてのキングコングと戦い、勝ちというわけにはいかないが、少なくとも引き分けレベルの結末を迎えるという設定からして、その後の日本とアメリカを予見していたと言えなくもない。

1962年

新幹線開通(1964年)

新幹線開通(1964年)

 「キングコング対ゴジラ」の公開された1962年の日本は、どんな時代だったか。同じ年公開された映画の中で同映画は第2位の興行成績だったらしいが、第1位が「明治天皇と日露大戦争」であったというから、時代の雰囲気がわかる。

 1956年の経済白書が「もはや戦後ではない」という後世に残る名言で結ばれている。そして1960年に誕生した池田内閣は「所得倍増計画」を発表する。

 戦後復興を終え、先進国アメリカに追いつけ追い越せ、と言わんばかりの勢いで、日本が高度成長時代へと向かう、そんな時代であった。ゴジラは、次に述べるその生い立ちをひとまず置いて、あくまで日本を代表し、にっくきアメリカから我が国を守ろうと戦う、国民のヒーロー的存在として登場した。

1954年 ゴジラ誕生

ゴジラ(1954年)

ゴジラ(1954年)

 ゴジラ第1作は1954年に公開された。当時のポスターに「水爆大怪獣映画」とある。ゴジラは、アメリカが南太平洋のビキニ環礁で頻繁に行っていた水爆実験の影響で、突然変異し巨大化した海中生物として生まれた。そして彼が、口から吐き出すものは“放射能”である。

 アメリカの水爆実験は1946年以降、たびたびおこなわれていた。折も折、ゴジラの公開された1954年は、日本から遠洋漁業に出かけていた「第5福竜丸」が水爆実験に遭遇。被ばくした船員の1名がその後亡くなるという事件があった年である。

筆者は以前東京に住んでいた折、たまたま江東区の夢の島で都立第5福竜丸展示館というのがあるのを見つけ、福竜丸の現物を見たことがある。

第5福竜丸事件

 第5福竜丸の船体の、はげ落ちた塗装に妙なリアリティを感じることができた。こういうものは、人類の負の遺産として、いつまでも残すべきだと強く思ったことを覚えている。

 以下の写真は1946年、ビキニ環礁地区で最初に行われた原爆実験「クロスロード作戦」の時に写されたという有名な写真である。大きな水柱に巻き上げられる軍艦も写っており、爆発のすさまじさを物語っている。標的として置かれた艦船の中には、日本海軍の生き残り戦艦「長門」もあったという。当時の日本人はどういう気持ちでこの写真を見たのだろうか。

クロスロード作戦

クロスロード作戦

ジャパニーズ・ヒーロー(?)

 ゴジラは水爆実験によって生まれた。当初は日本へ襲いかかる悪の象徴だったわけだが、いつしか日本代表で戦う守護神になった。その後もゴジラは制作される年代、撮影する監督によって、さまざまな描かれ方をしていており、決まった一つの顔というべきものがない。

鉄人28号

鉄人28号

 そういう定まらない点は、なにやら日本的でおもしろいと私は思っている。アメリカンヒーローのスーパーマンなどとは違い、日本のヒーローは敵か味方か定まらないのが、けっこういるというのがおもしろいのだ。

 たとえば「鉄人28号」。などといっても若い人にはわからないだろうが、この巨大ロボットヒーローは、感情がなくリモコンで動く。だから持ち主の言うことを聞く。たまに本来のリモコンの持ち主である金田正太郎少年がリモコンを盗まれ、鉄人は悪の手先として悪者に変身したりする。

そういうところが日本的ではないか。

2021年「ゴジラvsコング」

 さて2021年、コロナ禍で公開延期されていたアメリカ製の「ゴジラvsコング」が、夏、日本でも封切られた。ほぼ60年ぶりの戦いとなったわけだ。

ゴジラvsコング最強はどっちだ?

ゴジラvsコング最強はどっちだ?

 60年の映像技術の進歩をたたえればよいのだろうか。それとも60年を経てなお、「どちらが強いか。」という同じキャッチコピーが通用することに、あきれるべきなのだろうか。

 歴史は同じようなことを繰り返したがる。ただ繰り返しの中でも、少しずつは進歩していってほしいものだと私は思っている。敵と味方をくっきり分けない変幻自在の日本式の方がいいんじゃないかと思ったりもするのだが…、どうだろう。

意外な結末?

 ともあれ、映画の中のゴジラとコングの勝敗やいかに?もちろん私はその結末を知らない。

 しかし、予告編を見て確実にわかってしまうことがある。それは、ゴジラとコングに対して、もう一匹(一体の?)の、強大な敵が現れるということだ。

 その敵は何を象徴しているのだろうか。

 先に、ゴジラ映画は時代を写す鏡であり、時には来るべき時代を予見するといった。しかし今回のハリウッド映画「ゴジラvsコング」については、未来を予見した映画であってはほしくない、

 と個人的に思っている。

 

 

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