「勉強」=無理して努める?
「勉強しなさい!!」
子どものころ、何度も聞いた言葉かもしれません。今では「勉強」といえば、学校の科目を学ぶこと、試験のために学習すること、知識や技術を身につけることを表します。
ところが、この「勉強」という言葉は、もともと「学ぶ」という意味そのものではありませんでした。
結論から言うと、
もとの「勉強」=無理をしてでも努めること
今の「勉強」=学問や技術を学ぶこと
つまり、「努力してやること」の代表が「学ぶこと」だったため、だんだん「勉強=学習」という意味が中心になったと考えられます。
まず、今の「勉強」の意味
現在の日本語で「勉強」と言えば、まず思い浮かぶのは「学ぶこと」です。
・日本語を勉強する。
・数学を勉強する。
・試験のために勉強する。
・毎日二時間勉強する。
この場合の「勉強」は、知識や技術を身につけるために学習する、という意味です。辞書でも、「学問や技芸などを学ぶこと」「努力すること」「経験を積むこと」などの意味が示されています。
| 今の用法 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 学習する | 知識・技術を身につける | 日本語を勉強する |
| 努力する | 一生懸命取り組む | もっと勉強しなさい |
| 経験になる | 失敗や体験から学ぶ | いい勉強になった |
もとの「勉強」は、学習そのものではなかった
では、もともとの「勉強」はどういう意味だったのでしょうか。
古い用法では、「勉強」は学ぶことそのものではなく、無理をしてでも努めること、一生懸命努力することを表していました。
勉=つとめる。はげむ。
強=無理にでもする。しいる。
つまり、勉強=無理を押してでも努める。
この「勉強」は、「勉めて強くなる」という意味ではなく、むしろ「つらくても、無理をしてでも努力する」という感じに近い言葉でした。
たとえば、中国宋代の朱子学の書である『近思録』にも「勉強」という語が見られますが、そこでは「学習する」というより、「努力する」「むりに努めて行う」という意味で使われていると説明されています。
なぜ「努力する」が「学習する」になったのか
では、なぜ「無理をしてでも努める」という意味の「勉強」が、現在のように「学習する」という意味になったのでしょうか。
一つには、学ぶことは努力を必要とする行為だったからだと考えられます。
・読み書きを覚える。
・漢文を読む。
・学問を身につける。
・試験に備える。
こうしたことは、どれも楽にできるものではありません。努力が必要です。そこで、「努力して行うこと」の代表として、学問や学習が結びついたのでしょう。
日本で「勉強」が長く努力する意味で使われ、いつ学ぶ意味になったかははっきりしないものの、明治初年の例が古いものとして挙げられる、とされています。
| 段階 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| 古い意味 | 無理をしてでも努める | 努力・忍耐 |
| 途中の意味 | 学問に励む | 努力して学ぶ |
| 今の意味 | 知識や技術を学ぶ | 学習 |
「勉強になりました」は、古い意味が少し残っている
現在でも、「勉強」には単なる「学習」だけでは説明しにくい使い方があります。
・今回の失敗はいい勉強になった。
・社会に出てから、いろいろ勉強になりました。
・先輩の話はとても勉強になった。
この場合の「勉強」は、教科書を開いて学習したという意味ではありません。経験を通して何かを学んだ、苦労して大事なことがわかった、という意味です。
「いい勉強になった」には、「苦労や経験を通して学んだ」という意味があります。ここには、もとの「努力する」「苦労する」という感じが少し残っています。
「勉強する」と「学習する」の違い
「勉強する」とよく似た言葉に「学習する」があります。
どちらも「学ぶ」という意味で使えますが、少しニュアンスが違います。
| 言葉 | 中心イメージ | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 勉強する | 努力して学ぶ | 日常会話、学校、試験、自己努力 |
| 学習する | 知識や技能を身につける | 教育、研究、心理学、制度的な説明 |
「勉強する」は、少し人間くさい言葉です。机に向かう、努力する、がんばる、という感じがあります。
一方、「学習する」は、より客観的・説明的です。「AIが学習する」「学習効果」「学習内容」のようにも使われます。
「勉強」は値引きの意味でも使う
もう一つ面白いのは、「勉強」には値引きの意味もあることです。
・もう少し勉強してください。
・今回は特別に勉強しておきます。
これは「もっと学習してください」という意味ではありません。
商売の場面で、「値段を下げる」「値引きする」という意味です。語源由来辞典などでは、江戸時代に商品を値引きする意味でも使われたと説明されています。
値引きの「勉強」は、「売る側が無理をして努力する」という意味から来たと考えるとわかりやすいです。
日本語を学習する人へ
日本語を学習している人は、「勉強」は単に study と覚えるだけでなく、次のように説明すると印象に残りやすいです。
| 表現 | 意味 | 英語に近い説明 |
|---|---|---|
| 日本語を勉強する | 日本語を学ぶ | study Japanese |
| いい勉強になった | 経験から学んだ | I learned a lot from it. |
| 値段を勉強する | 値引きする | give a discount |
このように、「勉強」は study だけでなく、努力・経験・値引きにも広がる言葉です。
まとめ
「勉強」は、現在では「学習する」という意味で使われるのが普通です。
しかし、もともとは学習そのものではなく、無理をしてでも努めること、一生懸命努力することを表す言葉でした。
もとの勉強=無理をしてでも努める
今の勉強=知識や技術を学ぶ
意味の変化=努力して行うことの代表が「学ぶこと」だったため、学習の意味が中心になった
つまり、「勉強」という言葉には、今でもどこかに「努力する」「少し無理をしてでも取り組む」という響きが残っています。
そう考えると、「勉強しなさい」という言葉が少し重く聞こえるのも、言葉の歴史から見ると当然なのかもしれません。

以上です。



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