ビジネスメールや案内文でよく登場する「この度」と「この程」について比較します。
「この度」「この程」
「この度」と「この程」。どちらも「今回」「今般」を意味する言葉として説明されることが多いため、「同じ意味ならどちらを使ってもよいのでは?」と思う人もいるでしょう。しかし実際には、両者は完全に置き換えられるわけではありません。
例えば、次の文を見てください。
- この度の事故の責任は当社にある。〇
- この程の事故の責任は当社にある。△
前者は自然ですが、後者にはどこか違和感があります。なぜこのような違いが生じるのでしょうか。以下、「この度」と「この程」の意味や使い分けだけでなく、両者が持つニュアンスの違いも解説します。
「この度」の意味
「この度(このたび)」は、「今回」「今度」「今般」といった意味を持つ言葉です。ビジネスシーンでは丁寧な表現として広く使われています。
例文
- この度はお問い合わせいただき、誠にありがとうございます。
- この度、弊社は新サービスを開始いたしました。
- この度はご迷惑をおかけし、申し訳ございません。
また、「この度の○○」という形で、出来事や事案を直接修飾することもできます。
「この度の事故」「この度の不祥事」「この度の人事異動」のように、「この度」は「今回の」という意味で幅広く使える表現です。
「この程」の意味
「この程(このほど)」も、「今回」「今般」「近頃」といった意味を持ちます。ただし、「この度」よりも文語的で、公的な通知や公式発表で使われることが多い言葉です。
例文
- この程、下記の通り決定いたしました。
- この程、工事が完了いたしました。
- この程、開業の運びとなりました。
意味だけを見ると「この度」とほとんど同じですが、実際の使われ方には違いがあります。
「この度」と「この程」の決定的な違い
辞書的な意味はほぼ同じです。しかし実際には、
- この度=出来事そのものに焦点がある
- この程=その出来事を知らせることに焦点がある
という傾向があります。これが両者の違和感の差を生み出しています。
冒頭の文例に戻りましょう。
- この度の事故の責任は当社にある。〇
- この程の事故の責任は当社にある。△
なぜ「この度の事故」は〇?
次の文を見てみましょう。
この場合の「この度」は、
という意味で使われています。つまり「事故」という出来事そのものを修飾しています。そのため、
- この度の事故
- この度の不祥事
- この度の人事異動
のような表現は自然です。
なぜ「この程の事故」は△~×?
一方で、
という表現には違和感があります。その理由は、「この程」が出来事を修飾する表現としてあまり使われないからです。実際の用例を見ると、「この程」は次のような使い方が中心です。
- この程、ご連絡申し上げます。
- この程、決定いたしました。
- この程、お知らせいたします。
そのため、
「この程、事故についてご報告申し上げます。」は自然ですが、
「この程の事故」になると、耳慣れない表現として違和感が生じます。
使い分けのポイント
迷ったら次のように考えると分かりやすいでしょう。
出来事を指すなら「この度」
- この度の事故
- この度の人事異動
- この度の不祥事
- この度の契約
「今回の○○」と言い換えられる場合は、「この度」が自然です。
通知や発表なら「この程」
- この程、決定いたしました。
- この程、開業の運びとなりました。
- この程、お知らせ申し上げます。
公式発表や通知文では「この程」がよく使われます。
どちらを使うべき?
一般的なビジネスメールであれば、「この度」を選んでおけばまず間違いありません。現在のビジネス文書では、「この程」よりも「この度」の方が広く使われています。一方で、
- 官公庁の文書
- 企業の正式通知
- プレスリリース
- 挨拶状
など、より格式を重視する場面では「この程」が用いられることがあります。
まとめ
「この度」と「この程」は、どちらも「今回」「今般」を意味する言葉です。しかし、実際の使われ方には違いがあります。
- 「この度」は出来事そのものを指しやすい
- 「この程」は通知や報告との相性が良い
- 「この度の事故」は自然
- 「この程の事故」は不自然に感じられやすい
- 一般的なビジネスメールなら「この度」が無難

辞書では同じ意味と説明されることが多い両者ですが、実際の日本語では使われる場面に偏りがあります。その違いを理解すると、より自然で読みやすい文章を書けるようになるでしょう。
以上です。



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