「勤める」と「務める」はどう違う?

つとめる

「勤める」と「務める」

・「私は銀行に勤めています」
・「私は銀行の支店長を務めています」
この二つの文に登場する「つとめる」。読み方は同じですが、使われている漢字は違います。「勤める」と「務める」。どちらも仕事に関係する言葉なのに、なぜ漢字を使い分けるのでしょうか。

「勤」は働く場所、「務」は役割

最初に、二つの「つとめる」の違いを整理しておきましょう。

勤める
会社や学校などの組織に所属して働くこと。
例:大学に勤める。


務める
ある役割や任務を引き受け、果たすこと。
例:大学の学長を務める。

つまり、基本的には、
「どこで働いているか」なら「勤める」
「どんな役割を担当しているか」なら「務める」
という違いです。

①「勤める」と「務める」大学比較

社長は会社に「勤める」のか、「務める」のか

それでは、一人の社長を例に考えてみましょう。ある会社に山田さんという社長がいます。山田さんは毎日会社に出勤して仕事をしています。そして、その会社の社長として経営の責任を負っています。
さて、次の二つの文章はどうでしょうか。
① 山田さんは、この会社に勤めています。
② 山田さんは、この会社の社長を務めています。
実は、どちらも正しい表現です。ただし、説明している内容が違います。
①は、山田さんがその会社で働いていることを説明しています。
②は、山田さんが社長という役割を担っていることを説明しています。同じ山田さんなのに、注目する点によって漢字が変わるのです。
もっとも、社長については、雇われて働く立場とは限らないため、日常的には「会社を経営している」「社長を務めている」という言い方のほうが自然な場合もあります。

②会社に勤める、社長を務める

同じ教師でも「勤める」と「務める」

今度は学校の先生を考えてみましょう。
① 私は南通大学に勤めています。
② 私は大学で学科長を務めています。
①は勤務先の説明です。②は担当している役職の説明です。
では、こんな表現はどうでしょうか。
「私は、この大学で日本語教師を務めています。」
これも間違いではありません。日本語教師という役割を担っていることに注目した表現です。ただし、普段の自己紹介では、
「私は、この大学で日本語教師として働いています。」というほうが自然でしょう。「教師を務める」という言い方には、単に職業を説明する以上に、一定の役割を引き受けているという響きがあります。

実は「務める」は、会社に所属していなくても使える

ここが「勤める」と「務める」の大きな違いです。例えば、次のような場合です。

  • 結婚式の司会を務める。
  • 映画の主役を務める。
  • 町内会の会長を務める。
  • 会議の議長を務める。
  • 友人の結婚式で受付を務める。

これらは、必ずしも会社に雇われているわけではありません。しかし、全員が何かの役割を担当しています。ですから「務める」を使うのです。反対に、次のように言うことはできません。
× 結婚式の司会に勤める。
× 映画の主役に勤める。
司会や主役は、勤務する組織ではなく、担当する役割だからです。

③務めるを表す四つの場面

「勤務」という熟語を分解してみる

ここで、最初の疑問に戻りましょう。私たちは毎日のように「勤務」という言葉を使っています。
「勤務時間」「勤務先」「勤務形態」など、仕事に関係する言葉です。
ところが、この「勤務」という二字熟語をよく見ると、面白いことに気づきます。
「勤」は、「勤労」「出勤」「勤勉」などに使われ、仕事に励むことと関係があります。一方、「務」は、「任務」「業務」「職務」などに使われ、引き受けた仕事や役割と関係があります。

漢字意味の中心熟語
勤働く・仕事に励む出勤・勤労・勤勉
務役割・任務を担う任務・業務・職務

つまり「勤務」という言葉には、仕事に励むことと、仕事上の務めを担うことという、二つの側面を読み取ることができます。一つの熟語を分解すると、同じ「つとめる」という日本語が、なぜ二つの漢字で書き分けられるのか、理解しやすくなるのではないでしょうか。

もう一つの「つとめる」――「努める」

さて、ここまで「勤める」と「務める」の違いを見てきましたが、日本語にはもう一つ、よく使われる「つとめる」があります。それが「努力」の「努」を使った「努める」です。「努める」は、ある目標を実現しようとして力を尽くすことです。

  • 問題の解決に努める。
  • 健康の維持に努める。
  • 日本語の上達に努める。
  • サービスの向上に努める。

「努める」は、勤務先や役割ではなく、努力そのものに注目した言葉です。
例えば、こんな文章も作れます。

私は大学に勤め、日本語学科長を務め、学生の日本語能力の向上に努めています。

一つの文章の中に、三つの「つとめる」が登場しました。これを見ると、それぞれの意味の違いがよくわかりますね。

④三つの「つとめる」学び図解

「に」と「を」で見分ける方法

最後に、日本語学習者に役立つ見分け方を紹介します。「勤める」と「務める」は、一緒に使う助詞にも傾向があります。
勤める:会社に勤める、学校に勤める。
務める:議長を務める、主役を務める。
努める:改善に努める、解決に努める。
ただし、助詞だけで機械的に判断するのではなく、「勤務先」「役割」「努力」のどれを表しているかを見ることが大切です。

まとめ:「勤務」の二文字を思い出そう

・「勤める」は、会社や学校などで働くこと。
・「務める」は、役割や任務を引き受けること。
・「努める」は、目標に向かって努力することです。
迷ったときは、次の三つの熟語を思い出してください。

勤める → 勤務

務める → 任務

努める → 努力

ふだん何気なく使っている「勤務」という熟語にも、漢字の意味を考えると、意外な発見があります。日本語の漢字は、ただ暗記するだけではもったいないですね。

⑤3つの「つとめる」解説

参考資料

以上です。

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