読解「庭」渡辺武信Ⅰ

座敷から見る山本亭庭園

 中国の日本語学科標準的テキスト「日語総合教程」第五冊
2025年9月秋学期開講。10月は第4課「庭」渡辺武信 に入ります。

庭                              渡辺武信

 庭というものは住まいの外にありながら、室内の雰囲気に少なからぬ影響を与える住まいの装置である。たとえば居間などに座って何気なく外に視線を投げるとき、そこにあるのが明るい芝生広がりであるか、こんもりとした松の茂みであるかによって住まいの気分はかなり異なるであろう。ぼくは親の庭先に家を建てて住んでいるので自分の庭と言えるものを持たないのだが、それでも窓辺の食卓から父母の庭を望むことができる。この庭は“庭園”風に整えられてはいない雑木ばかりの広がりだが、それがかえって四季折々の移り変わりを鋭敏に映しだすことになって好ましく感じられ、春先ヒョロリとした梅が思いもかけぬ片隅を小さく彩ったり、枯木立ちが冬の入り陽千々裂いたりするのを眺めやることで、ささくれ立った気分が和む思いをすることが多い。

庭というものは…

◆ というもの: 「というものは」は「読者のよくわかっていないものを、主観を入れて定義したり、説明したりする」場合に使います。
・会社はようやく粉鉱採集器というものを備え付けて、… (第2課田中正造)
・中国生活10年、ようやく部屋に冷蔵庫(〇を/×というものを)備え付けた。

  以下の表で、主観(気持ち)を交えて、なんらかの話題を取り上げる表現、「~というものは」、「~に限って」、「~といったら」、「~にかけては」、「~のこととなると」などを比較します

「というもの」「に限って」「といったら」など表まとめ

庭というものは住まいの外にありながら……

◆ながら(逆接)
「住まいの外にありながら…」は、逆接の意味で「あるにもかかわらず…、ありつつ(も)…」などと置き換え可能です。

 逆接の基本形の「~にもかかわらず」は「~に関係なく、影響されないで」という意味です。これに対して「~ながら」や「~ものの」「~つつも」はそれぞれ、前件「~」との何らかの関係性のもとに後件がつながります。
「ものの」「ながらも」「つつも」まとめ

【参考】「ながら」のいろいろな意味

基本の三つの意味をおさえておきましょう。

同時進行

~しつつ

音楽を聴きながら勉強する。

状態の継続

ある状態のまま

昔ながらの家。自宅に居ながらにして楽しめる。

逆接

~であるけれど

貧しいながらも幸せな家庭。

春先にヒョロリとした梅が…

 ヒョロリ、ひょろひょろは弱くて頼りない感じ。人の体型を表現する時にもよく使います。体型を表すオノマトペを整理します。

体型オノマトペ

 

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