読解「いのち」阿部昭Ⅴ

枝にとまるセキセイインコ

「日語総合教程」第六冊 第6課「いのち」阿部昭 を読みます。
前回(こちら)の続きです。

 ところが、インコの悲鳴はいっこうにやみそうにない。猫としては、久しぶりのご馳走だからゆっくり料理しようというつもりであったかもしれない。キ、キ、キ、キ、キ、……という絶体絶命の叫びが断続的に聞こえてきて、私はだんだん落ち着かなくなった。

 (筆者がインコの救出にやや不熱心であったことに、愛禽家の方々は、あるいは憤慨なさるかもしれない。しかしながら、もともとどんな動物も人間の愛玩用では決してなかったはずだ。彼らを安楽にしてやっているのも人間であるが、閉じ込めて不自由な生活を強いているのも人間である。それに、一部の動物を食用に大量飼育し、文明の力で能率的に殺戮している人間に、猫の残忍を言う資格があるだろうか。動物どうしがお互いに食べたり食べられたりするやり方のほうが、人間の殺生よりもよほど自然の理にかなっているのではあるまいか。)

 それでも、私はもう一度外へ出ていき、庭じゅう猫を追い回して、ついに彼の口からインコをもぎ取ることに成功した。インコは、翼の付け根の、人間で言えばわきの下にかなりひどい傷を受けていたが、まだ元気のように見えた。
 それが証拠には、彼女はいきなり私の指のまたにかみついたほどである。命の恩人かもしれないところの私の指のまたに!しかも、なんという渾身の力をこめてかんだものであろう!

 インコは、しばらくは私の部屋の畳の上に横倒しになっていたが、やがて起き上がれるようになり、次にはよちよちとその辺を歩き始めた。敷きっぱなしの私の布団に、桃色の糞さえこぼした。私は、これなら籠を用意して飼ってやってもいい、という気持ちになっていた。
 しかし、やはり猫から取り上げるのが遅すぎたのだろう。二、三時間後に見ると、また横倒しになって、すっかり冷たくなっていた。

ところが、インコの悲鳴はいっこうに…

ところが、インコの悲鳴はいっこうにやみそうにない。
但是,鹦鹉的惨叫一点也没有停下的迹象,
・いっこうに(一向に):①まったく、全然。「何を言われてもいっこうに平気だ」、②(打消しを伴い)全面的な否定を示す。全く…ない。少しも…ない。「話が一向に進まない」「警告を受けてもいっこうに動じない」
・やむ(止む・已む):「雨がやむ」「風がやむ」「騒ぎがやむ」「砲声がやむ」「あくびがやまない」
猫としては、久しぶりのご馳走だからゆっくり料理しようというつもりであったかもしれない。
对猫来说或许是久违的美餐而想要慢慢地享用。
キ、キ、キ、キ、キ、……という絶体絶命の叫びが断続的に聞こえてきて、私はだんだん落ち着かなくなった。
唧唧唧的绝命的叫声断续传来,我渐渐地有些沉不住气了。
・絶体絶命:追いつめられて、どうにも逃れようのない状態、立場にあること。
・(例)絶体絶命のピンチに立たされる。
・(注)「絶対絶命」は誤り

筆者がインコの救出にやや不熱心であったことに…

筆者がインコの救出にやや不熱心であったことに、愛禽家の方々は、あるいは憤慨なさるかもしれない。
对笔者救鹦鹉有些冷淡之事爱鸟族的先生们或许会感到愤慨。
・憤慨(サ変):いきどおりなげくこと。ひどく腹を立てること。
・(例)差別待遇(に/を)憤慨する。
しかしながら、もともとどんな動物も人間の愛玩用では決してなかったはずだ。
但不管什么动物原本也绝非人类观赏用的。
彼らを安楽にしてやっているのも人間であるが、閉じ込めて不自由な生活を強いているのも人間である。
让它们舒适的是人类,把它们关闭起来强迫过不自由生活的也是人类。
それに、一部の動物を食用に大量飼育し、文明の力で能率的に殺戮している人間に、猫の残忍を言う資格があるだろうか。
并且,为了食用把一些动物大量饲养,再以文明的力量高效率地宰杀的人类,有说猫残忍的资格嘛?
・殺戮(さつりく):多くの人(生き物)を、むごたらしく殺すこと。
動物どうしがお互いに食べたり食べられたりするやり方のほうが、人間の殺生よりもよほど自然の理にかなっているのではあるまいか。
动物之间互相吃与被吃的作法,比起人类的杀生来,不是更符合自然常理吗?
・殺生:生き物を殺すこと(もと仏教用語)
・よほど(余程):かなりの程度。「よほど困ったのだろう」「自分でやったほうがよほど楽だ」
・理にかなう(適う):理屈・道理に合う。「彼の説明は理にかなっていて、誰もが納得した」

それでも、私はもう一度外へ出ていき、…

それでも、私はもう一度外へ出ていき、庭じゅう猫を追い回して、ついに彼の口からインコをもぎ取ることに成功した。
即便如此,我还是再次走到外边,满院子地追猫,最后终于成功地从猫嘴里掰下鹦鹉。
もぎとる(捥ぎ取る):①ねじるようにして取る。「柿の実をもぎ取る」、②強引に取り上げる。「犯人から拳銃をもぎ取る」
インコは、翼の付け根の、人間で言えばわきの下にかなりひどい傷を受けていたが、まだ元気のように見えた。

鹦鹉的翅膀根部,用人比喻的话就是腋下受伤很重,但看上去还很有精神。

・付け根:物がくっついている根元の部分。「腕の付け根」「眼鏡のつるの付け根がぐらぐらになっている」

それが証拠には、彼女はいきなり私の指のまたにかみついたほどである。
为了证明这点,她冷不防咬住我指头的分叉处,也许是救命恩人的我的指头(的分叉处)呀!
それが証拠に:「彼は本当に努力家だ。それが証拠に、毎朝一番に研究室へ来ている。」
しかも、なんという渾身の力をこめてかんだものであろう!
而且,还是使出了全身力气!

・渾身(こんしん):からだ全体。満身。「渾身の力をふりしぼる」

インコは、しばらくは私の部屋の畳の上に…

インコは、しばらくは私の部屋の畳の上に横倒しになっていたが、やがて起き上がれるようになり、次にはよちよちとその辺を歩き始めた。
鹦鹉在我房间里的榻榻米上躺了一会儿,不久便能站立起来,再后来就摇摇晃晃在那里走了起来,
・よちよち:幼児などが頼りない足どりで歩くさま。「赤ん坊がよちよち(と)歩く」
敷きっぱなしの私の布団に、桃色の糞さえこぼした。
在我一直也不叠的被子上,竟然拉下粉红的粪便。
・~はなし(放し):~して顧みない。「ドアを開けっぱなしにしておく」「置きっぱなし」「言いっぱなし」「やりっぱなし」
私は、これなら籠を用意して飼ってやってもいい、という気持ちになっていた。
我产生了弄个笼子养起来的念头。
しかし、やはり猫から取り上げるのが遅すぎたのだろう。
但是,可能还是从猫那里抢夺得迟了,
・取り上げる:①手に持って持ち上げる。「受話器を取り上げる」、②意見、申し出を受ける。「提案を議題に取り上げる」、③特に取り立てる。「欠点を取り上げて糾弾する」、④相手のものとむりに奪う。「凶器を取り上げる」、…
二、三時間後に見ると、また横倒しになって、すっかり冷たくなっていた。
两三小时后再看,她再次倒下,并已完全冰冷了。

つづきます。

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