読解「企業内の聖人」星新一Ⅺ

企業内の聖人Last

「日語総合教程」第六冊 第8課「企業内の聖人」星新一 。最終回です。
前回(こちら)の続きです。

 当人はそんな精神状態だったので、新聞も書類内容も見ず、社員も報告していなかったので、社が危機にあったことも知らなかった。つまり、その社の製品の品質不良がもとで、社会に害が及んだという創立以来の大不祥事
 新聞がそれを取り上げかけていた。大衆の怒りがここに集中しようとしかけていた時だったが、その矢先に社長が自殺してしまったのだ。こぶし振り上げようもない。

 各新聞社から記者がやってきて、だれかれとなく聞きまわった。そして、いたるところで死んだ社長をほめる言葉を聞く。だれもがほめ、けなす人はいなかった。
 社会的な責任を一身にしょって、天下に罪を謝すための覚悟の自殺をした高潔な人物にみえる。避難しようにも、矛先がにぶる。それどころか、賞賛すべきことでもある。炎は燃え上がらず、丸くおさまらざるをえなかった。

 しばらくの時がたち、社員たちはなにかというと思い出す。
 「この社を救うために、神がつかわされた救世主じゃなかったのかな、あの人。いや、正しくは救社主と呼ぶべきかな……」
 神なんか信じない連中なのだが、ふとそんなことをつぶやいたりする。

(『未来いそっぷ』新潮社より 漢字表記の改正あり)

当人はそんな精神状態だったので、……

当人はそんな精神状態だったので、新聞も書類内容も見ず、社員も報告していなかったので、社が危機にあったことも知らなかった。
因他本人是那种精神状态,报纸和文件的内容都不看,职员也没有报告,所以公司遇到危机的事也不知道。
つまり、その社の製品の品質不良がもとで、社会に害が及んだという創立以来の大不祥事
也就是公司的产品质量不好,危害波及到了社会这件公司创立以来的最大不幸事件。
・害(名):損なうこと、傷つけること(害する)→人や事物に与える良くない影響。災い。妨げ。⇔益。
・不祥事:組織などの内部で起きた(社会的信用を失うおそれのある)好ましくない事件、事故。「相次ぐ公務員の不祥事」こぶしを振り上げる人
新聞がそれを取り上げかけていた。大衆の怒りがここに集中しようとしかけていた時だったが、その矢先に社長が自殺してしまったのだ。
报纸开始报道,大众的愤怒正在集中到这里的时候,在这个时候社长自杀了,
・矢先:①屋の先端。→②何かを始めようとする、ちょうどその時。「出かけようとした矢先の出来事」「対策を講じた矢先、事故が起こってしまった」
こぶし振り上げようもない。
想挥拳抗议都挥不了了。
・こぶし(拳):五本の指を折り曲げて握り固めたもの
・こぶしを振り上げる:怒りをその対象にぶつけようとする。
・(例)振り上げたこぶしの下ろしどころがなくなる。

各新聞社から記者がやってきて、……

各新聞社から記者がやってきて、だれかれとなく聞きまわった。
记者从各报社赶来,什么人都问过来了,
・だれかれとなく(だれかれなしに)(誰彼無しに):だれという区別なしに。相手かまわず。ほめる人々
そして、いたるところで死んだ社長をほめる言葉を聞く。
而所到之处都听到表赞已故社长的好话。
だれもがほめ、けなす人はいなかった。
都是赞扬,没有批评的人。
・けなす(貶す):相手をおとしめるような悪口を言う。くさす。そしる。「口でけなして心で褒める」
社会的な責任を一身にしょって、天下に罪を謝すための覚悟の自殺をした高潔な人物にみえる。
呈现在眼前的是一位将社会责任全部都背在自己身上,决心向天下谢罪而自杀的高尚的人物。
・謝する(しゃする):謝る。詫びる。「非礼を謝する」「平素のご無沙汰を謝する」(文語的表現)
避難しようにも、矛先がにぶる。
即便想要指责嘴也软了。
・矛先(ほこさき):①矛の先端。→②議論・非難などで、攻撃の方向。またその勢い。「矛先をかわす」「批評の矛先が鈍る」
それどころか、賞賛すべきことでもある。炎は燃え上がらず、丸くおさまらざるをえなかった。
还不仅如此,还有很多应该褒赞的事。火焰烧不起来,只有圆满收场了。
・まるく納まる(慣):円満に解決する。穏やかに落着する。

しばらくの時がたち、社員たちは……

しばらくの時がたち、社員たちはなにかというと思い出す。
过了一段时间后,职员们动不动就会想起他来。
・何かと言うと:何か事があるたびに同じ言動をするさま。「何かというと自慢話だ」「何かというとすぐ小言だ」祈る人
「この社を救うために、神がつかわされた救世主じゃなかったのかな、あの人。いや、正しくは救社主と呼ぶべきかな……」
“为了拯救这个公司,那个人,不会是神派来的救世主吧。不,准确地说,应称他为救社(公司)主才对呀!
・つかわす(遣わす):目上の人がめしたの人に命じて行かせる。派遣する。
・(例)皇帝が家臣を隣国に遣わす。使者を遣わす。
神なんか信じない連中なのだが、ふとそんなことをつぶやいたりする。
虽然是不信神的一群人,却忽然这样念叨起来。
・つぶやく(呟く):小声で独り言をいう。「小声でつぶやく」「心の中でつぶやく」
 
以上です。
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