読解「企業内の聖人」星新一Ⅸ

企業内の聖人9

「日語総合教程」第六冊 第8課「企業内の聖人」星新一 を読みます。
前回(こちら)の続きです。

 だが当人は、いやな顔をするどころか、こんな意義のある仕事はないと、大張り切り。閑職などと思っていないのだ。そのくせ、張り切るわりに、ここでもいっこうに能率はあがらなかった。すなわち、二年かかって社史の一年分がやっと進行するという形なのだ。とんでもない仕事ぶりだ。といって、なんの手落ちもなく、社のためと大喜びで励んでいる者を排斥できぬこと、これまでと同じだった。

 こうなってくると、またあれをやる以外にない。祭り上げ方式だ。社内においても、彼に対するこの手はずには、みながなれてしまっていた。文句も出ず、彼がいなくなると、その社史編集室の事務は以前の適当なる速度と、適当なるいい加減さを取り戻し、すべてがうまく行き始めるのだった。
 しかし、部長にしようにも、彼に適当なポストはなかった。どの部も敬して遠ざける。なるべく遠いところへ祭り上げたいというムードなのだから。

 必要は発明の母。新しい部がそのために作られた。企画調整部という。何もしなくていいという部なのだが、心の底からわきあがる愛社精神を押えられぬ彼は、じっとしていられない。おれは何か仕事をしなければならぬのだ。しなければ社のために申し訳ない。

 例によって、熱心に何かやろうとするのだが、その結果は他人の邪魔になる。つまらぬ企画をたて、他の部に口を出し、手伝おうとする。善意の現れなので、他の部はその相手をしなければならない、ほかの部長たちは、いい迷惑だ。こうなると、いつもの手段、祭り上げをやるしかない。

だが当人は、いやな顔をするどころか、……

だが当人は、いやな顔をするどころか、こんな意義のある仕事はないと、大張り切り
可是他本人非但没有任何不悦之色,还精神百倍地说,“没有比这更有意义的工作了”,
・嫌な顔をする:不満を示すこと
・張り切る:ゆるみなく十分に張る。ぴんと張る。→物事に対処して意欲や気力をみなぎらせる。意気込む。「仕事に張り切る」「張り切って机に向かう」燃えて張り切る男
閑職などと思っていないのだ。
并不认为是闲职。
そのくせ、張り切るわりに、ここでもいっこうに能率はあがらなかった。
可是,虽然是精神百倍,但在这里仍旧是一点效率也没有。
・そのくせ(其の癖):(接)先に述べた事柄をうけて、それと相反する関係である意味を表す。それなのに、それでいながら。「威勢は良い、そのくせ気が弱い」
すなわち、二年かかって社史の一年分がやっと進行するという形なのだ。
即花了两年的时间才完成了社史一年的量。
とんでもない仕事ぶりだ。
太不像话的工作状态。
・とんでもない:①程度や常識を越えているさま。思いもかけない。とほうもない。「どんてもない悪さをしでかす」「とんでもない値段だ」、②相手の考えを強く否定していう言葉。まったくそうではない。めっそうもない。(謙遜して使う場合が多い)
「とんでもない、私などにはできません」「お礼だなんて、とんでもないことです」
といって、なんの手落ちもなく、社のためと大喜びで励んでいる者を排斥できぬこと、これまでと同じだった。
但是什么过失也没有,为了公司勤奋工作的人不能排斥,与以前一样。
・手落ち:手続きや方法に欠点・欠陥があること。またその欠点・欠陥。手ぬかり「防疫体制に手落ちがあった」

こうなってくると、またあれをやる以外にない。

こうなってくると、またあれをやる以外にない。祭り上げ方式だ。
到这一步,只能故伎重演:抬高。
社内においても、彼に対するこの手はずには、みながなれてしまっていた。
在公司里面对他要进行的步骤,大家都已习惯。
・手はず(手筈):物事をするさいにあらかじめ決めておく手順。前もってしておかなくてはならない準備。「留学の手はずを整える」
文句も出ず、彼がいなくなると、その社史編集室の事務は以前の適当なる速度と、適当なるいい加減さを取り戻し、すべてがうまく行き始めるのだった。

也不发什么牢骚,他一不在,社史编辑室的工作又回到以前的适合的速度和适合的细致度上去,一切又开始顺利起来。

しかし、部長にしようにも、彼に適当なポストはなかった。
但是,即便想让他当部长,却没有合适的职位,
・ポスト:地位、役職。部署。「重要なポストにつく」
どの部も敬して遠ざける
哪个部都是敬而远之。
なるべく遠いところへ祭り上げたいというムードなのだから。
是尽量抬高到远一点的地方去的气氛。

必要は発明の母。新しい部が……

必要は発明の母。新しい部がそのために作られた。企画調整部という。
需要是发明之母。为了这个新的部成立了,叫做企划调整部。
何もしなくていいという部なのだが、心の底からわきあがる愛社精神を押えられぬ彼は、じっとしていられない。
虽然是个什么都不用做的部,但无法按捺心底涌出的热爱公司精神的他没能安静下来。
おれは何か仕事をしなければならぬのだ。しなければ社のために申し訳ない。
我必须做点什么工作。如果不做的话对不起公司。

例によって、熱心に何かやろうとするのだが、……

例によって、熱心に何かやろうとするのだが、その結果は他人の邪魔になる。さらに頑張る男
和以前一样,他热情地做一些事,但结果都是给他人添麻烦,
つまらぬ企画をたて、他の部に口を出し、手伝おうとする。
制定一些无聊的计划,对别的部说要帮忙。
善意の現れなので、他の部はその相手をしなければならない、
因为是好意的表现,哪个部也不能不加理睬,
・現れ:あらわれた、もの。「意欲の現れ」「努力の現れ」「彼女のやさしさは感謝の現れです」
ほかの部長たちは、いい迷惑だ。
对其他的部长来说是额外的麻烦。
・いい迷惑:「迷惑」を皮肉に言って強める言葉。〔「いい」は反語的表現〕「人の買い物につき合わされていい迷惑だ」「事故の巻き添えとは、まったくいい迷惑だ」
こうなると、いつもの手段、祭り上げをやるしかない。
这样,又只好采用以往的手段一抬高了。
つづきます。

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