「ほんの」のってどういうこと?
たとえば「ほんの」という言葉を説明してくださいといわれたらどう答えますか?「少し」ということでしょうか?だとしたら「ほんの少し」は「少し少し」になってしまいますから変ですね。「ほんの」は、
本来片寄った数量がさらに少ないことを表す
と考えた方がよさそうですね。以下よく似た言葉「ごく」「ほんの」「たった」について考えてみましょう。
「ごく」「ほんの」「たった」
- ごく少しの差で勝った。〇
- ほんの少しの差で勝った。〇
- たった少しの差で勝った。〇
はすべて言えます。しかし
- ごく0.1秒の差で勝った。×
- ほんの0.1秒の差で勝った。〇
- たった0.1秒の差で勝った。〇
「ごく0.1秒」は言えません。
- ごく僅かの差で勝った。〇
- ほんの僅かの差で勝った。〇
- たった僅かの差で勝った。×
「たった僅か」は少しおかしいです。
「ごく」「ほんの」「たった」は少しずつ使い方が違うようです。
「ごく」の用法
「ごく」から確認していきましょう。「ごく」は漢字で書けば「極」であることからもわかるように、基本的に程度が極端な度合いであることを示します。
以下のように両極端に使います。
片寄りを示す語の両極端を表します | 〇 | ごくありふれた現象 ごく細かい粒 |
〇 | ごくまれな現象 ごく粗い粒 |
しかし本来、片寄りを示さない語を修飾することはできません。
片寄りを示さない語には使いません | 〇 | ごく細い粒 |
× | ごく黒い色 |
片寄りがあっても、極端の限度がない語には使いません。
極端に限度がない場合使えません | 〇 | ごく早い時期 |
× | ごく遅い時期 |
(「遅い」には(1秒後→1時間後→1日後→1年後)限度がありません)
「ほんの」の用法
「ほんの」も「ごく」と同じように極端を示します。
「ほんの」も片寄りを極端化します | 〇 | ごく僅か足りない |
〇 | ほんの僅か足りない |
ただ、「ほんの」は「小さい方」「低い方」の極端しか示せないようです。
「ほんの」は程度の低い方にしか使いません | 〇 | ほんの少し足りない |
× | ほんの大きい服 |
「ほんの」は主に「数量的」なものを形容します。
「ほんの」は主に数量的なものを表します | 〇 | ほんの10メートル |
× | ごく10メートル | |
〇 | たった10メートル |
「ほんの」には「質の低さ、価値の低さ」というマイナスレベルの評価を示す用法があります。
「ほんの」は価値の低さを示す用法があります | 〇 | ほんの子供だ |
× | ごく子供だ | |
× | たった子供だ |
「たった」の用法
「たった」は完全に数量限定で使います。
「たった」は数量限定です | 〇 | ほんの少し足りない |
× | たったわずか足りない |
まとめ
「ごく」「ほんの」「たった」それぞれの使える範囲をまとめると以下のようになります。
以上、違いをあらわす「基礎日本語辞典」森田良行著 を参考にしてまとめました。
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