取り立てし助詞「だけ」「しか」
「だけ」「しか」は共に「限定」を表すとりたて助詞です。「Xだけ~」「Xしか~ない」の形で「X以外は~ではない」ということを述べます。
- 南通大学では日本語だけを勉強します。
- 南通大学では日本語しか勉強しません。
上のように語法上では「しか」は後ろが必ず「否定(ない)」になるという特徴があります。では、意味の面では「だけ」と「しか」でどのような違いがあるでしょうか?結論を言えば、
「だけ」は限定したモノがポイント、「しか~ない」は「ないモノ」がポイント
図で書くと以下のようなイメージです。
つまり、「日本語だけ勉強します」というと、積極的に日本語に絞って勉強するというニュアンスがあるのに対し、「日本語しか勉強しない」だと、本当は他のこともやりたいのだけれど、残念ながら日本語のみという”やや否定的な気持ち”を込めて述べるという風になります。
「みんなの日本語」における「だけ」「しか」の初出
日本の代表的日本語テキスト「みんなの日本語」における「だけ」「しか」の導入文を見ると、
「だけ」(第11課)
「田中さんは どのくらい スペイン語を 勉強しましたか。」「3か月 勉強しました。」「3か月だけですか。上手ですね。」(みんなの日本語第11課)
スペイン語を勉強した時間が「なんと3か月という短時間!」という「~だけ」の「~」部分にポイントをおいた言い方といえます。
「しか~ない」の方は「否定との呼応」という少し高度な文法事項を含むため初級2の第27課に出てきます。
「しか~ない」(第27課)
「パワー電気は 何日ぐらい 夏休みが ありますか。」「そうですね。3週間ぐらいです。」「いいですね。わたしの会社は 1週間しか やすめません。」(みんなの日本語第27課)
この例文では「本当は2週間も3週間も休みがあったらいいのに。」という1週間の限定の外側に意識が向いた表現になります。
「だけしか~ない」
では「だけ」と「しか」がくっついたような「だけしか~ない」という表現はどうなのかという疑問が沸きますが、これについては「しか~ない」の強調形と理解すればいいでしょう。
- 教室には一人だけしかいなかった。(他の人はどうしたんだ?)
以下、間違えないようにしましょう。
- 私だけ知らない。(私は知らない)
- 私しか知らない。(私は知っている。)
- 私だけしか知らない。(私は知っている。)
よくある誤用例
以上のような原則はたいていの学習者の皆さんは了解しているのですが、その上で以下のような誤用をよく耳にします。
(非常に安く買いものができたときに、)「×これ20元だけしましたよ。」
本当はもっと高いと思ったのに、20元で買えたということを示すのだから理屈から言ってこれでいいと思うかもしれませんが、ここは「安く買えたことで手元に残るお金が増えた」ことがポイントと考えて
「〇 これ20元しかしませんでしたよ。」
とするのが普通です。
(以上、初級を教える人のための日本語文法ハンドブック(3Aネットワーク)などを参考にさせていただきました)
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