けっこうできる人でも「私は○○大学から卒業しました」と言ってしまう人がいるようです。これは間違いです。
「場所+を」「場所+に」「場所+から」の三つの違いを順に考えてみましょう。
「バスに乗る」と「バスを降りる」
乗り物に乗る場合は「に」、降りる場合は「を」を使います。この場合「に」は「到達点」を表し、「を」は「出発点」を表します。ですから「バスから降りる」と「から」を使っても言えます。
「山に登る」と「山を登る」
「山に登る」の「に」は、「バスに乗る」の「に」と同じで「到達点」を表すと考えて良さそうですね。
ところが「山を登る」と言った場合の「を」は、「バスを降りる」の時とちょっと違います。「山を登る」は上の絵のようなイメージで、この「を」は「通過点」を表す「を」だと考えてください。「横断歩道を渡る」「空を鳥が飛ぶ」の「を」が典型的な「通過点」の「を」です。
「山に登る」と「山を登る」のニュアンスの差は以下の例を参考にしてください。
- 山に登って景色を眺めるのが好きだ。
- 山を登る時はサンダル履きではダメだ。
「大学を卒業する」
さて「大学を卒業する」の「を」は通常「出発点」の「を」だと説明されます。すると「バスを降りる」「バスから降りる」の両方が成立するので「大学から卒業する」という言い方も大丈夫と思ってしまうのが普通。
しかし、
「大学を卒業する」の「を」には、「大学から出発する」以外に「大学で所定の課程を終えること」つまり「出発前の通過」が含まれているニュアンスがあります。
これを「通過出発点」としましょう。まとめると
それぞれの例を以下に示しましょう。
通過点 | バス(を/から)降りる、部屋(を/から)出る、中国(を/から)去る |
通過出発点 | 大学を卒業する |
通過点 | 山を登る、空を飛ぶ、横断歩道を渡る、通路を通る |
到達点 | バスに乗る、部屋に入る、大学に入学する、上海に行く |
「通過出発点」という言い方は教科書にはありませんが、「大学を卒業する」という表現はちょっと特殊で「大学でしっかり勉強して学問を修めて始めて」→「卒業できる」というプロセスをイメージすると、単なる「出発点」の「から」は使えないということがわかると思います。
以上「はじめての人の日本語文法」(野田尚史著)などを参考にしました。
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