経済の時代(「戦後日本経済史」開講に向けて②)

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お話を続けます。前回、「経済」とは「経世済民」つまり、「世を治め、民を救うこと」であり、その「経済」の手法を学ぶことは、明治維新後の日本つまり国家が近代化する過程でとても重要になると福沢諭吉は考えた、ということを説明しました。

渋沢栄一と福沢諭吉(「戦後日本経済史」開講に向けて①)
今学期は「戦後日本経済史」初開講です。基本的には1945年以降の日本経済の動きを学習します。しかし日本経済を理解する時、明治維新を境とする日本の変革期に活躍した渋沢栄一と福沢諭吉、特に「日本近代経済の父」と呼ばれる渋沢栄一について知っておくことは大切です。

では、今日はその「経済」という言葉についてもう少し深掘りして考えてみましょう。以下の順にお話します。

経済とは ?もう少しわかりやすく。

少し戻って順に考えていきましょう。

「経済」とは、「世を治め、民を救うこと」であると説明しました。

「経済」とは、「世を治め、民を救うこと」1⃣

しかしこれでは、さすがにちょっと範囲が広すぎて、概念的。わかりにくいですね。今風の言葉で表現できないものでしょうか。

よく言われるのは「経済」を研究する「経済学」とは「資源の配分方法を考える」学問。まだちょっとピンとこないでしょうか。しかもこれでは「世を治め、民を救う」とは全く違うもののような気がしますね。

「経済学」とは「資源の配分方法を考える」学問である。2⃣

ではこう考えてみましょう。私たち人間は、誰かの手によて作られたのあるモノを使って生活しています。(モノには食べる物もサービスも含まれるとしましょう。)つまり生産されたものを消費することによって生きているのです。しかし人間が作ることのできるモノは、いつの世においても、すべての人が好きな時に、好きなだけ使えるというものではありません。だから生産されたモノは何らかのルールを決めて分配していかなければなりませんね。

だから、「(限られた)資源をうまく分けて、できるだけ多くの人が幸せになれるようにする」つまり、「資源の配分方法を考える」学問が必要になる、これが「経済学」というものなのだと考えましょう。

経済とは資源をうまく分配して、できるだけ多くの人が幸せになれるようにすること。3⃣

「世を治め、民を救うこと」よりは多少わかりやすくなりました。今学期の授業では3⃣の定義を踏まえ、いろいろな経済学説や政策を理解するようにしていきましょう。

そもそも「経済」という概念はいつ生まれたか

「経済」という言葉が本格的に使われ始めたのは、明治維新(1868年)後でしたね。しかしそれ以前に「経済活動」が存在しなかったわけではありません。では「経済」はいつ始まったのでしょう?

答えを先に言うと、

人間が自分のために何かを作り始めた時に経済活動は始まっています。

生産と消費があれば「経済」が成立します。たとえば、お米を作っている人、と野菜を作っている人がいるとします。それぞれの人は自分で作ったものだけを食べて生活しているとします。これを自給自足経済といいます。生産と消費が同じ人で完結しているのでとても単純です。収穫したお米ならお米を、うまく消費していく計画さえ立てておけば大丈夫です。経済活動は存在しても、難しい経済学は必要ありません。

自給自足経済

しかし、お米と野菜を一部交換すれば、きっと双方の食生活が豊かになります。この「交換」ということが、経済ではとても大切。うまくルールを決めれば同じ生産量でも自給自足より、幸せ度が増すでしょう。

交換経済

交換すれば双方の食生活は豊かになる!交換経済

人類は、大まかに言ってしますと、このように食べる物を効率的に生産し、うまく分配する経済活動を長く長く続けてきました。農業の時代です。自給自足より、ちょっと複雑になってきますね。もしかしたらお金とかがあると便利になるかな?

近代化による「経済」の重要性増加

19世紀に状況が大きく変わります。農業中心の時代から商工業中心社会への転換です。きっかけはイギリスではじまった産業革命。産業革命の中心は動力革命。つまり渋沢栄一が1867年パリ万博で見た、蒸気機関の実用化です。

もちろんそれまでの時代にも小さな変化は絶えず起こっています。人類の生産物が農作物中心から、工業製品やサービスなどのものに、おそらく50年ぐらいの短期間で大きく変化したこの時代は、人類の歴史に不連続な変化を生じさせたのです。

人は豊かになり、多種多様な生産物を享受できるようになります。同時にモノの交換システムが飛躍的に複雑になります。例えばお米1キロあれば、蒸気機関車に乗ってどれだけ移動する価値と同等とすべきか。といったように、本来比べられないものを比べて交換しなければいけなくなります。同じものでも、Aさんにとってのお米の価値とBさんにとってのお米の価値は違うかもしれません。学問をして知識を身に付けることが最重要と思う人もいれば、家や車を優先する人もいます。人は豊かになり、同時に人によって幸せと感じるために必要なモノの価値尺度も違ってきます。

生産性向上により飛躍的に複雑さを増す商品経済

生産性向上により飛躍的に複雑さを増す商品経済

さらなる複雑さは、余剰生産物を地球上の他の国へ供給する貿易が本格化することによってもたらされます。

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そのように、指数関数的に増大・多様化したモノやサービスを、グローバルに「どのように分配すれば、より多くの人が幸せになれるのか。」ということを考えるのが、経世済民、つまり経済学の役割です。

20世紀は技術革新と生産性向上の世紀でした。その時代の変化に対して、経済学は未だ適切な資源の分配方法を提示できていないようにも思えます。

貧富の差や、国家間の摩擦など、経済上の課題によって引き起こされることも多くなっています。「経済学」が本当に活躍する時代はこれからかもしれませんね。

 

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