読解「木の葉の魚」安房直子Ⅳ

木の葉の魚Ⅳ

前回( →こちら )の続きです。

 雑木林の向こうに住んでいる隣の家の人々がやって来たのは、それからしばらくあとのことでした。
 今ごろ、魚の焼ける匂いがするので、ちょっと寄ってみました。この飢饉に一体どこで魚を手に入れたのが、それを聞こうと思って― おどおどへつらうように隣の人は言いました。これを聞いてお姑さんは、アイに魚を焼くように言いました。そこでアイは、又木の葉をお客の数だけ鍋に入れました。
「さあさあ、遠慮なく食べて行ってください」とお姑さんは言いました。お客は大喜びで魚を食べて帰ったのです。ところが、困ったことになりました
 あの家に行けば、魚がただで食べられるという噂が、村から村へと広まり、遠い道を歩いて飢えた人達が、アイの家をたずねてくるようになったのです。アイは、朝から晩まで台所に閉じこもって、木の葉を鍋に入れては魚の料理を拵えました。ああ、これで何十匹、海の魚が死んだろうか……そんなふうに思いながら、それでもアイは手を休めることができませんでした。魚を食べたい人達は、あとからあとからやって来ましたから。
 ある日、とうとうお姑さんが言いました。「こんな時にただで魚を振舞うこともあるまい。うちも貧乏なんだから、魚一匹につき、米一合でも、大根一本でも、いくらかの金でも、もらったらいいと思うが……」これを聞いてアイはすぐこう答えました。
「あの鍋はやたらに使ってはいけないと、の母さんに言われました。ただで魚を上げるのならまだしも、お金や物と交換するのでは、海の神様にすみません。鍋に入れた木の葉の数だけ海では魚が死ぬのだと聞いています」 
 すると、お姑さんは笑いました。「山の木の葉と海の魚はおんなじことさ。山の木の葉が取っても取ってもなくならないように、海の魚だって、なくなりゃしない」
 横からアイの夫も口を合わせました。「そうとも。海の魚は山の木の葉とおんなじだ」
 仕方なく、アイは又台所に入って行って、魚の料理を拵え続けたのです。ああ、せつないせつないと思いながら、何百枚何千枚の木の葉を鍋に入れ続けたのです。

ところが、困ったことになりました。

ことにする、ことになる、ようにする、ようになる

初級の復習になります。ネット授業

  • 今学期の授業はリモートで行うことにした。1⃣
  • 今学期の授業はリモートで行うことになった。2⃣
  • 窓を開けて、空気を入れ替えるようにした。3⃣
  • 窓を開けたら、空気が入れ替わるようになった。4⃣

1⃣「ことにする」と2⃣「ことになる」の違い

1⃣「ことにする」2⃣「ことになる」は共になんらかの決定を主に表す言い方です。

1⃣「ことにする」と2⃣「ことになる」の違いは、自分(話者)が決めた(ことにする)か、自分以外の人が決めた(ことになる)かの違いがありそうです。

3⃣「ようにする」と4⃣「ようになる」の違い

3⃣「ようにする」と4⃣「ようになる」は共に状態の変化を主に表す言い方です。

3⃣「ようにする」と4⃣「ようになる」の違いは、同じ状態の変化でも、①目的ある動作による変化(ようにする)か、②任意の動作による変化(ようになる)かの違いがあります。目的ある動作のことを「働きかけ」といいます。

まとめると以下のようになります。

ことにするようになる
自分が決定任意動作による変化(状態変化
今学期の授業はリモートで行うことにした窓を開けると、虫が入ってくるようになった
ことになるようにする
他の人が決定目的動作(働きかけ)による変化
今学期の授業はリモートで行うことになった窓を開けて、空気が入れ替わるようにした

「こと」を含む表現

「こと」を含む表現まとめ(例文付き)

「こと」を含む表現まとめ(例文付き)

〔展開〕「ことだ」「ものだ」「わけだ」

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