『日常の思想』梅原猛 から
もとより人類は、今までこのような価値観に徹底したのは明治以後であると思う。徳川時代においては労働と同時に遊びの価値を評価する視点がまだあった。
『日常の思想』梅原猛
ここで、文頭に用いられている「もとより」は、「元より」つまり「最初から」という意味です。「もとより」はこれ以外の三つの使い方を覚えましょう。
「最初から」という原義から、最初からずっと同じ=「もちろん」という意味になり、さらに「AはもちろんBも」→ 「AはもとよりBも」という付加する意味の用法が生まれました。
「~に加え(て)」と「~うえ(に)」
「~に加え」と「~うえ」は前者が名詞接続、後者が形容詞・動詞に接続するという違いがあるので、その点入れ替えはききませんが、意味的には非常に近いものがあります。ただ、傾向として、
「~に加え」は客観的、並列的に列挙する場面に強く、「~うえ」は主観的な評価・理由などを追加し強調する際によく使います。

「~のみならず」「~はもとより」
「~のみならず」「~はもとより」は共にやや硬い表現となりますが、それぞれ上記の「~に加え」「~うえ」に対応します。つまり、
「AのみならずB」は「AもBも」という並列的表現であり、「AはもとよりB」は「当然のAはさておき、Bも」という「B」で表現される内容を強調する言い方になります。

問題
問題です。適切な方を選んでください。
- マルクスは経済( のうえ・のみならず )、哲学にも影響を与えた。
- 今日は気温が低い( うえに・に加えて )雨も降っていて寒く感じる。
- 頭が痛い。それ( に加えて・ うえに )熱も出てきた。
- この携帯電話は国内( はもちろん・うえに )海外でも使えます。
- あの歌手は歌( のみならず・ うえに )ダンスもうまい。
- この棚は大きくて( 邪魔だ・邪魔な )うえ、古くて壊れそうだ。
- この病院では医者は( もとより・加えて )看護婦も不足している。
1.のみならず、2.うえに、3.に加えて、4.はもちろん、5.のみならず、6.邪魔な、7.もとより
以上、日本語能力試験対策N2文法総まとめ(三修社)などを中心にまとめました。
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