「作る」と「こしらえる(拵える)」の違いについて考えましょう。
『木の葉の魚』安房直子から
中国の日本語学科3年次の標準テキストでは、第5課『木の葉の魚』で「拵える」が進出単語として出てきます。例によって少し長めに引用します。
すると、その家の戸ががらっと開いて、これはまた、どっしりとしてあったかい感じのする若者が顔を出しました。若者はアイを見ると、それはいい感じに笑ったものですから、アイは一目でこの人が好きになりました。その夜、アイは母親からもらった鍋を使って、とびきりおいしい魚の料理を拵えました。
ここは、単に「作りました」ではなく、「丹念に心を込めて(作る)」という意味合いで「拵える」が使われています。
「作る」と「拵える」
「こしらえる」の主語は主として「人」、それに対して「作る」の主語は「人以外の生き物、非生物」なんでもありです。
- 大自然の作った奇跡
- 偶然が出会いをつくる。
「作る」が客観的に何かができあがることを示すのに対し、「こしらえる」は「何とか工夫して、手間をかけて」つくるというニュアンスです。
- 金をこしらえる。〔作るよりも「苦労し手を尽くして」というニュアンス〕
- 話しをこしらえる。〔作るよりも「工夫して作為的」〕
- 身なりをこしらえる。〔作るよりも「念入りに見栄え良く」〕
また、「作る」が非常に一般的な言葉であるのに対し、「こしらえる」の方はやや古風であり、また柔らかい感じがします。
「作る」「拵える」比較まとめ
以上、違いをまとめます。
「作る」「拵える」意味領域
「作る」は汎用的な言葉であり、対象物の範囲がかなり広いです。例えば、
- 人を(〇つくる/✕こしらえる)。
- 明日の日本を(〇つくる/✕こしらえる)。
- 時間を(〇つくる/✕こしらえる)。
- 花を(〇つくる/✕こしらえる)。
これに対して「こしらえる」しか使えないケースはあまりなく、強いて言えば慣用的な表現の、
- 腹ごしらえする。
ぐらいでしょうか。
以上、使い方の分かる類語例解辞典(小学館)、日语综合教程第五册(上海外語教育出版社)などを参考にしました。
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