「はずがない」と「わけがない」〔確信的否定〕

「はずがない」「わけがない」

確信的否定を表す「はずがない」と「わけがない」について比較します。

「~はずがない」「~わけがない」

「~はずがない」「~わけがない」は共に「話者が確信的に否定」している事柄を述べます。

  • 部屋の鍵は佐藤君が持っているはずがない
  • 部屋の鍵は佐藤君が持っているわけがない
  • 田中君は教室にいるはずがない
  • 田中君は教室にいるわけがない

上の例では「はずがない」「わけがない」には意味上の差はなく相互に入れ替えて使えます。

では、以下の例はどうでしょう。

  • 今日は日曜日だから 博物館は閉まっているはずがない。①
  • 彼のことだからこんなに早く家に帰っているわけがない。②

上の例で「~はず」「~にちがいない」を入れ替えて見ると、少し違和感が生じます。

  • 今日は日曜日だから 博物館は閉まっているわけがない。△
  • 彼のことだからこんなに早く家に帰っているはずがない。△

①の例:「日曜日は博物館、美術館は開いている」という「常識的・客観的根拠」のもとでの「確信的否定」を示しています。これに対して②では、彼という人物の平素の行動(いつも遅く帰る)から想像するという「主観的根拠」による「確信的否定」を示しています。

「はずがない:客観的根拠、わけがない:主観的根拠」による確信的否定

以下にまとめます。

「はずがない」「わけがない」まとめ

「はずがない」「わけがない」まとめ

冒頭の「部屋の鍵は佐藤君が持っているに(はずがない/わけがない)。」のような例は、「はずがない」を使えば、たとえば「今日佐藤君は鍵当番ではない」だというような「客観的根拠」を元にした発話であることをにおわせ、反対に「わけがない」だと「佐藤君はルーズな性格だから」という主観的根拠で発話されているというニュアンスがあります。

「はずがない⇔はず」と「わけがない⇔にちがいない」

これに対して「確信」を表す「はず」と「にちがいない」はそれぞれ「客観的根拠による確信」と「主観的根拠による確信」を表し、表題の対応関係にあります。

以下にまとめます。

「はずがない」「わけがない」「はず」「にちがいない」比較まとめ

「はずがない」「わけがない」「はず」「にちがいない」比較まとめ

(「はず」と「にちがいない」に関しては → こちら参照ください)

以上、中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック(スリーエーネットワーク社刊)などを参考にさせていただきました。

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