「やはり」と「あいかわらず」の違いについて考えましょう。
「やはり」と「あいかわらず」
「やはり」も「あいかわらず」もともに、話者の以前の基準時との「対象の状態、程度」に差がない場合に使う。ただし「あいかわらず」に関しては、「時間の隔たり相応に変化しているはずだ」という前提で差が感じられない時に使う。
「やはり」と「あいかわらず」では、以下のようなニュアンスの差があります。
- 今でもやはりアパートに住んでいる。(以前からアパート住まいだったから、今でもアパートに住んでいる)
- 今でもあいかわらずアパートに住んでいる。(年月が経っているのだから、マンション化一戸建てに住んでいると思ったが、今でもアパートに住んでいる)
「やはり」
話し手の観念内にある過去の基準と客観的にみて、差がない場合に使います。より口語的な言い方では「やっぱり」となります。
- いまでも やはり 日本語の先生をしていらっしゃるのですか。
- 結婚しても やはり 旧姓を名乗っている。
- 大人になっても やはり 昔の癖は変わらない。
「あいかわらず」
「あいかわらず」は「変化向上(時に変化下落)」を前提とした不変化状態を表す時に使う。暗に主観的意見(変わっていてもいいのに)が示唆されるので、相手に対し、変化しないことがあまり好ましくない事項について言うと失礼になる場合がある。逆に自分についていう場合は謙遜した表現になる。
- 私はあいかわらずの貧乏暮らしです。〔謙遜〕
- あなたは 今でもあいかわらず独身なのですか。〔失礼〕
- あいかわらず頑張っているようですね。(〇)
〔参考〕「やはり」補足
「やはり」は広義に「話し手の観念内の基準」と差がないことに使います。「あいかわらず」の類義語としては、上記の話者の観念内の「過去を基準」とした用法となります。これ以外に「他者を基準」とする、話者が「心の中に描いた状態を基準」などさまざまな用法ががあります。
過去を基準
・彼は今でも やはりアパート住まいだ。
他者を基準
- 兄も優秀だったが、やはり弟も優秀だ。
- 皆と同様、私もやはりその案には反対だ。
心に描いた状態を基準
- やはり血は争えない。
- 日本語の勉強はやはり難しい。
原状が本来の姿という認識を基準
- 利口そうでも、やはり子供だ。
- 負けは負けでもやはり横綱だけって堂々たる戦いであった。
外部規則を基準
- やはりだめなものはだめだ。
- それでもやはり地球は回っている。
以上、「気持ちをあらわす基礎日本語辞典」森田良行著(門川ソフィア文庫)を参考にさせていただきました。
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