和風建築由来の言葉を集めました。
几帳面
きちんとしていて、いいかげんにしない様子。「あの人は几帳面だ」
几帳というのは、平安時代に公家の家で使われた、二本のT字型の柱に薄絹を下げた間仕切りの一種。 大きな部屋の可動式の仕切りに使ったり、高貴な婦人の身を人の目から隠すために使った。
「きちょうめん」というのはこの「几帳」を作る時、柱の角を削って撫で角にした部分のこと。高貴な人の日用品であるため、この作業は入念に行わなければならなかったので、現在のような意味が生まれたそうです。
沽券(こけん)
人の値打ち、品位、対面。「こけんにかかわる」
「沽」は「売る」という意味。平安時代中期からあった言葉で、もともとは、家屋や田畑の売り渡し証文のことをいいました。沽券には売り渡し価格が記載されていて「こけんは千八百両」というような言い方から、近世になると、物の価値・値打ち一般をさす言葉となりました。それが現代の「人の品位・対面」の意を派生させていったものと考えられます。
現代は「沽券にかかわる」という、ほぼ固定した言い方で使われます。
「うちの沽券が町並みだから、よもや乞食は客にしめえ」(歌舞伎・日月星享和政談・六)
厠(かわや)
お手洗い、トイレのこと(現在は使わない)
川屋(かわや)説、側屋(かわや)説などがありますが「川屋」が有力。昔は、川の流れの上にかけ渡した木の台を便所として使ったことからとされています。また「厠」の字は家を表す「厂」に「則」を合わせた字であるため、家のそばにある(または片隅に寄せた)便所の意味であるとも考えられています。
その他、トイレを表す「はばかり」は「人目をはばかるところから」、「雪隠」は禅寺でトイレを表す「西浄(せいちん)」から転じたとする説が有力です。
うだつがあがらない
低い地位のままで、出世しない。
「うだつ」は「卯建(うだち)」の変化したもの。「卯建」は燐家との境に立つ「卯」の字型の防火壁。これを立てるのは、そうとう立派な家になるので、立身出世のシンボルとなったそうです。これが上がらないと出世していない、という意味になります。
また「うだつ」は「梲(うだつ)」とも。こちらの方は家の中心の梁の上に立て、屋根そのものを支える短い柱のことで。棟上げの時たてるものをいいます。この説をとると「そもそも家が建てられない」つまり「出世しない」となります。
縁の下の力持ち
今回の選挙で縁の下の力持ちとなって頑張ってくれたボランティアの皆さん
日本家屋の床下の空間を「縁の下」と呼びます。この空間の柱は家全体を支えているわけですが、そのように他人や集団のために、人知れず力を尽くしている人のことを「縁の下の力持ち」というようになりました。
「縁の下の舞」もほぼ同意です。これは、大阪の四天王寺で行われた聖霊会の舞のことで、長い間一般には非公開で行われてきた秘事です。人目に触れないところで演じられる舞でも、演者は欠かさず練習をしていたことから今の意味になりました。
杮落し(こけらおとし)
新築劇場、映画館の最初の興行 「こけら落としのコンサート」
「杮(こけら)」は木の「削りくず」の意味。劇場の工事が完成したときに、屋根や足場に残った杮(こけら)を払い落として興行を始めたことの由来すると言われています。
「杮(こけら)」と「柿(かき)」は実は違う漢字。「杮(こけら)」の方は、「一」に「巾」の上側が貫く形ですが、実はあまり区別されて使われていないようです。
以上、新明解語源辞典(三省堂)、新版〈目からウロコの〉語源辞典(学研)などを参考にさせていただきました。
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