「~を触る」と「~に触る」
「~を触る」「~に触る」はどちらも正しい日本語。「を」と「に」の差に関わる問題です。
「を」と「に」の本質的な違い
「を」「に」はともに格助詞。格助詞というのは「動詞」との関係を示す助詞ということですが、「を」と「に」を比べると、
英語の第4文型
中学校で英語の5文型を習いました。その中の第4文型というのを覚えていますか?
そう。SVOOの文型でした。最初のOがO1:直接目的語、二つ目のOがO2:間接目的語でしたね。
中学校の時はこの「直接」「間接」という言葉はよくわからなかったかもしれませんが、「送る」ものは「手紙」そのものなのでまさに「直接」。それに対し「彼女」は手紙の行き先を示していて、「送る」動作には「間接」的に関与しているだけというだけのことなのです。
では上の文を日本語に直してみるとどうなるでしょう。
この文は「私は手紙を彼女に送る。」としても正しい。つまり英語で語順で表現していた「間接目的語、直接目的語」は日本語では「~に:間接目的語」「~を:直接目的語」という表現形式になっているということですね。
さきほどの説明、再び出します。もうわかりますね。
「やかんを触る」、「やかんに触る」の違い
以上のことから「やかんを触る」というと、何やら自分から積極的に触りまくるという語感、対して「やかんに触る」というと、思わず軽くタッチするという語感になります。
ですから、最初の問題に戻って、どちらがやけどがひどいかというと「熱いやかんを触る」の方だということになるのです。
「やかんを触れる」、「やかんに触れる」
「触る(さわる)」に似た動詞として「触れる(ふれる)」というのがあります。「触れる」はそもそもが「軽くタッチする、接触してしまう」という意味ですから、
- 〇:熱いやかんに触れる。
- ×:熱いやかんを触れる。
「~を触れる」という表現は成立しないのです。
上記違いに派生する「を」と「に」の違い
また「を」は「直接的」という性質から「対象をモノ扱い」するニュアンスが出ることがあります。次の2例を比較しましょう。
- 子どもを留学させようと思う。
- 子どもに留学させようと思う。
「子どもを…」だと、「子どもの意志に関わりなく強制的に留学させるんだ」という感じになりますが、「子どもに…」だと子どもの意志を尊重して留学させる、つまり子どもが留学を希望してるんだということがわかるのが「子どもに…」の方だということになります。
「助詞」は奥が深く表現力が豊か…、ですね。
勉強しがいがあります。
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