難しい!相手を動かす敬語
敬語はなかなか使いこなしが難しいものです。中でも厄介なのが、相手の動作を促す際の表現ではないでしょうか。下手をすると大変失礼な言い方になってしまいます。
例えば、尊敬語として「お+(連用形)+ください」という基本の形がありますが、
- 「〇 こちらにお座りください」なら問題ないですが、
- 「× 大学院への推薦状をお書きください」だとちょっと失礼。
相手に手間をかける場合は「お~ください」の尊敬語の形では不十分になるのです。
依頼~命令 相手を動かす文末表現
結論から言えば、目上の人に手間をかける場合「~ていただけないでしょうか?」が最もていねいで無難な言い方です。この種の「依頼」表現を敬意の高い順に並べると、おおよそ以下の順番でしょうか。
いわゆるスタンダードの敬語表現である「④お手伝いください」では不十分ということになります。「①手伝っていただけないでしょうか?」を使いましょう。そしてその間にある「②いただけませんか?」は「③くださいませんか?」より敬意が高いとされています。
これはなぜでしょう?
カギは授受動詞の主語の違い
「いただけませんか」と「くださいませんか」。実は日本人の感覚ではこの二つ、尊敬の度合いにあまり大きな差がないように思えるのです。
これについて、わかりやすい解説が近刊の「日本語はこわくない」(飯間浩明著)にありました。
まず基本を整理すると
- 「いただく」は「もらう」の謙譲語
- 「くださる」は「くれる」の尊敬語 ですね。
敬意と率直さのどちらを重視するか?
まとめると以下のようになります。
主語 | 基本動詞 | 敬語 | 意味 |
私 | もらう | いただく | 敬意(礼儀正しさを重視) |
あなた | くれる | くださる | 感謝(率直さを重視) |
つまり「~ていただけませんか」は、相手を主語にせず、敬意を重視しているという点で、敬語としてのランクは上、ただし「~てくださいませんか」は、相手を主語にしている分、敬意という点では一段下がるものの、率直な気持ちを表現できるという点では、目上の人に対して十分使える表現だということのようです。
そういうプラスマイナスがあるので「~ていただけませんか」「~てくださいませんか」のどちらがていねい?と聞かれるとたいていの日本人は「???」となってしまうのでしょう。
飯間浩明先生も、目上の人に対して「先生が買ってきてくださった」のように相手を主語にすることが多くあり、その方が「親しみが感じられて悪くない」とおっしゃっています。
まあ、最終的にはよく言われるように、言葉よりも心なのですが…
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