「日語総合教程」第六冊 第9課「香住から白兎海岸へ」阿部昭 を読みます。
前回(こちら)の続きです。
田後港の船着場に向かって、ごたごたした細い坂道を下りて行きながら、私は勿論こことは地形も風光も違うが、伊豆の仲木を思い出した。昨年の下田沖の地震で全滅に近い被害を蒙った例の部落である。テレビの番組を作っていた頃、私はロケであそこの民宿に一週間ほど泊ったことがある。十年も前だが、ちょうど民宿がブームになりかけていた。魚もうまかったし、家族ぐるみのサービスも旅館の比じゃなかった。居心地満点で、言うところはなかった。だのに、どうもうしろめたく、心が安らかでない。今ならわかるような気がするが、私はどこへ行っても、そんなふうに他人の生活に心を奪われてしまうのだ。そうすると、もう旅どころではなくなる。
波止場の突端に車を止めて、降りる。どうやら漁船は出払って、長い防波堤に囲まれたプールのような水面に釣り糸を垂れている人がいるぐらい。森閑としている。
それにしても、いい天気だ。山陰では〈弁当忘れても傘忘れるな〉と言うらしいが、私は傘はカバンの底にしまったまま、弁当のことばかり考えている。さっきもここへ来るのに、駅弁のカニずしを買い込んできたばかりで、目の前の海を見ながら、二人して車の中でそれを食べる。
ここから浦富を回って鳥取砂丘へ引き返すわけだが、私はしかるべく時間を調整して、砂丘の落日なるものを見てやろうと思っている。しかし、それにはちょっと早すぎるようだ。
「なるべくゆっくり行ってもらいたい。ちょうど砂丘のかなたに日が沈むところへ行き合わせたいんだから」などと、初めて見る場所なのに勝手知ったようなことを言って、M君の運転に注文をつける。
田後港の船着場に向かって、ごたごたした…
向田后港的码头前进,从乱七八糟的窄坡道下行的同时我想起了伊豆的仲木。

田後港の船着場から東方向を望む(高台に向かい民家が密集しています)

この写真では少しわかりにくいですが、”ごたごた”と入り組んだ細い道が家々を結んでいます
那是去年因下田冲地震蒙受接近毁灭性灾害的那个村落,
在制作电视节目时我因拍摄外景在那里的民营旅馆住过一星期。
・ロケ:「ロケーション location」の略。映画、テレビなどで、撮影所の外部に出て、自然の景色、街並み、現場を背景にして撮影すること。野外撮影。
(参考)ロケハン:locatio + hunting(和製英語)、ロケに適した場所を探すこと
那虽是十几年前的事,但当时正值民营旅馆成风的时候。
鱼也好吃,全家出动的服务也不是普通旅馆能比的。
感觉可打满分,没有可指责的地方。
非難することころがない。完璧である
(例)この作品は非の打ち所がない。
虽是如此,我却总觉得有种愧疚感,心不得安宁。
・(例)彼女を裏切ってしまったようで、少しうしろめたい。
到现在好像明白了。我不管走到哪里,都会像这样被他人的生活占满整个心间。
于是,哪里还顾得上什么旅游啊。
・(例)宿題が山ほどたまっていて、遊びに行くどころではない。
波止場の突端に車を止めて、降りる。
在码头的突出部停车,下车。

田後港遠景、波止場の突端はどこ?
どうやら漁船は出払って、長い防波堤に囲まれたプールのような水面に釣り糸を垂れている人がいるぐらい。
仿佛是渔船全都出去了,仅仅在被长堤围起来的像池塘一样的水面上可见垂钓的人。
・出払う:人や物がすっかり出てしまう。
(例)係の者が出払っていて、問い合わせに対応できない。
万籁俱寂。
それにしても、いい天気だ。
话虽如此,是个好天。
在山阴好像有个说法:“盒饭忘了也不要忘了伞。”但我是把伞收到提包底处,光惦记着盒饭的事。
さっきもここへ来るのに、駅弁のカニずしを買い込んできたばかりで、目の前の海を見ながら、二人して車の中でそれを食べる。
刚才也是,为了来这里买了车站蟹肉寿司盒饭来,现在看着眼前的大海,两人在汽车里吃了起来。

山陰名物「かに寿司」
ここから浦富を回って鳥取砂丘へ引き返すわけだが、…
应该从这里绕浦富返回鸟取沙丘的。但我适当地调整时间,想看一看沙丘的落日过程。
・(例)彼女がしかるべく取り計らってくれたので、大事に至らず済んだ。
但是好像稍稍早了点。
“尽量慢点走。因为想在太阳向沙丘的那一边落下的时候走到。”虽然是第一次看的地方,却像很了解情况似的对M君开车提出要求。
・(例)「会場で知人と行き合わせた」「事故現場に行き合わせる」


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