前回(こちら)の続きです。
日本海だって、おおかたそんなものだろうとタカをくくっている。全然期待がない。見る前から、何も報告することがないんじゃないかと心配している。それで、途中で厭になって逃げて帰ってくるといけないからと、一計を案じて、タフな友人を一人連れて行くことにする。
昔、テレビ局で一緒に仕事をしていた頃からの永年の飲み友達で、気心の知れたM君というのに電話して、「山陰へ二、三日、カニを食いに行く気はないかね?」と持ちかける。
「きみは何もしなくていいのだ。毎晩温泉に入って、酒を飲んでりゃあいいのだ」
などとうまいことを言って、その実、彼をカメラマン兼レンタカー用のお抱え運転手として活用しようという悪い魂胆である。ワニザメをだます因幡の白兎みたいなものだ。
かくして、無粋な男二人づれで出かけた。
来てみれば、日本海は、荒海だった――
これでは俳句としても字あまり、結論としても馬鹿馬鹿しすぎて話にならないが、私としては実感だから致し方ない。それも遠目に見ての印象ではない。二時間近く小舟の上で揉みに揉まれて、いい加減うんざりしたあげくの正直な感想だ。
前日の午後京都を出て、山陰本線のジーゼルカーでゴトゴトと北上、まだうっすらと、あるいは斑に雪を残した但馬の山あいを縫って行くと、城崎あたりで日が暮れかかる。それからトンネルを抜けて、またしばらく行ったところでようやく日本海が姿を見せる。地図でいえば竹野浜のあたり山陰海岸国立公園のただなかである。
私としては初対面だが、相手の顔まではよくわからないといったところだ。初春の夕闇の中に、あるかなきかの幽かなたたずまいを見せて、ひっそりと息づいているかのごとくである。さしあたっては、
(なるほどね)
と言うだけにとどめ、詳しくは明朝ということにして、浜坂で下車、その晩は湯村の温泉にとっぷり浸かって寝てしまう。陸から海をみるばかりが能じゃないから、あしたは浜坂から香住まで遊覧船に乗って、海中公園を探勝してやろうという寸法だ。
日本海だって、おおかたそんなものだろう…
日本海大概也就是那么回事吧,这样轻视地想,完全没有期待,
・おおかた(大方):かなり高い確率で、大多数、(およそ、たぶんより確率大)
・(例)おおかたの予想を裏切って当選した。
・「そんなもの」は前段の「海辺育ちの心やすさで、どこの海を見たって、(あ、やってますなア)ぐらいにしか思わない。」の内容を指します。つまり、「全然期待がない」ということですね。
在看之前担心可能会没有什么可报告的,
于是想到也不可能中途不愿意就逃回来,便心生一计,决定带上一个健壮的朋友一起去。
・一計を案じてドアに忘れ物リストを貼っておくことにした。
・タフ:途中で厭になって逃げて帰ってくるような「軟弱」な自分に対比させる意味でのタフという表現です。
是位以前从电视台一起工作时起就一直喝酒交往过来的老朋友、很对脾气的M君。我给他打电话说:“有没有意思去山阴两三天,去吃螃蟹?”
・持ちかける:”誘う”よりも”誘う”意志はやや弱い。話をしてみる、そして相手が乗ってくれば正式に誘う、というイメージ。
などとうまいことを言って、その実、彼をカメラマン兼レンタカー用のお抱え運転手として活用しようという悪い魂胆である。
并对他说了“你什么也不用干,每晚泡温泉喝酒就行了”之类的好听的话。而实际上我是企图把他作为摄影师和包雇的租赁汽车司机来使用的,
像是欺骗凶恶鲨鱼的因幡的白兔一样。
かくして、無粋な男二人づれで出かけた。
就这样,两个不懂风雅的男人结伴出发了。
これでは俳句としても字あまり、結論としても馬鹿馬鹿しすぎて話にならないが、私としては実感だから致し方ない。
来了一看,日本海是狂暴的海
这句话,作为俳句字数超出规定,作为结论又过于荒谬而不成体统,但作为我来说因是真实感觉所以没有办法,
而且还不是从远处看的印象。是将近两个小时在小船上挤来挤去,相当腻烦后的老实的感想。
前日の午後京都を出て、…
前一天的下午,从京都出发,乘坐山阴本线的柴油机车的火车哐当哐当地北上,从还隐约可见斑斑点点残雪的但马的山谷穿过,在城崎一带迎来落日。
・では、この前日とは? 考えてみましょう。
然后钻过山洞,再走一小会儿终于看到了日本海。用地图来说的话,是竹野滨的附近,山阴海岸公园的正中央。
城崎温泉から北へ、トンネルを抜ければ日本海
山陰本線は、志賀直哉の「城崎にて」で有名な、城崎温泉駅を出てしばらくは温泉街的な風情の風景の中を進みます。そして、短いトンネルをいくつか抜けていった後に、日本海の風景が見えてきます。

車窓に突如現れる日本海(山陰本線)
私としては初対面だが、相手の顔まではよくわからない…
对我来说是初次见面,也就是连对方的脸也不很清楚的程度。
阿部昭さんは、少し遅い時間(夕暮れ時)に、日本海の風景を見ます。日本海を擬人化して、第一印象を記しておられます。
~といったところ
・「といったところ」:程度で「それ以上ではない」ことを表す言い方です。
・(例)賛同者は、せいぜい5,6人といったところでしょうね。
(なるほどね)
と言うだけにとどめ、詳しくは明朝ということにして、浜坂で下車、その晩は湯村の温泉にとっぷり浸かって寝てしまう。
隐初春的暮色里,看到它那似有似无的微弱的影子,犹如静静地叹息着一般,眼下只能说声“果然如此啊”,详细的明天早上再说。于是在滨坂下车,当晚好好地泡泡温泉村的温泉后就睡下。
浜坂港のイカ釣り漁船

浜坂港のイカ釣り漁船
光从陆地看海还不算本事,所以计划明天乘游船从滨坂到香住,到海中公园览胜。
・(例)適当にお茶を濁そうっていう寸法だな。



コメント