何かの動作の「すぐあとで~する」という意味の「~や否や」「~なり」「~そばから」「~が早いが」の違いについて考えましょう。
『日常の思想』梅原猛 から
中国の日本語学科3年次の標準テキスト『日語総合教程第五冊』では第3課で「~や否や」を学びます。
しかし、明治以後日本が西洋文明の採用にふみ切るや否や、日本人は全く労働を唯一の価値とする一元的価値観をもった。なぜなら、日本人が、日本あるいは東洋の文明がヨーロッパ文明に、とうていかなわないと判断したのは、ヨーロッパ文明がより強い軍事力と共に、より高い生産力をもつということを洞察したゆえであった。ここで日本人の洞察は、あやまってはいない。ヨーロッパの科学文明は、その技術によって生産力を高めようとすることを、その文明の原理とする文明であるから。『日常の思想』梅原猛
日本が明治維新後、西洋文明を積極的に受け入れようと決める。すると「すぐに」日本人の価値観が変わってしまった。という文章になります。「~や否や」は「~するとすぐに~する」ということ表し、
- 彼女はその知らせを受けるや否や、家を飛び出していった。
- 西洋文明の採用にふみ切るや否や、日本人は一元的価値観を持つようになった。
のように、「すぐ」の時間的許容範囲は比較的広くとれます。
「~や否や」「~なり」「~そばから」「~が早いが」
「~や否や」とよく似た表現に「~なり」「~そばから」「~が早いが」があります。
問題
まず、以下の問題をチェックしてみてください。
- 焼肉屋に行くと私が焼いた( なり・そばから )、彼が食べてしまう。
- 彼女は手紙を読み終えた( や否や・が早いが )、部屋を飛び出していった。
- 彼は部屋に入って来る( なり・そばから )テレビをつけて食い入るように見た。
- 深キョンの写真集が( 発売される・発売された )や、売り切れの書店が続出した。
- 新聞の見出しを( 見る・見ている )なり、彼女は大声をあげた。
1.そばから、2.がはやいが、3.なり、4.発売される、5.見る
辞書形に接続、「た形」に接続するのは「~が早いか」「~そばから」の二つ
「~や否や」「~なり」「~そばから」「~が早いが」使い分け
以下に意味上の違いを説明します。
汎用的な「~や否や」を基本形として、「~が早いが」は、ほぼ同じ状況で使えますが、時間的な切迫感、スピード感を感じさせます。「~そばから」は後件で行われる動作は必ず複数になります。また、「~なり」では「必ず前件、後件の主語は同一」であり、「意外性のある後件動作に話者が驚いて発する」言葉になることが多いようです。
- 彼女はデビューするや否や、国民的アイドルになった。
- チャイムが鳴るが早いか、子供たちは教室を飛び出した。〔スピード感〕
- 掃除するそばから、子供が部屋を散らかす。〔反復、くり返し〕
- 席につくなり彼女は弁当を広げた。〔意外性〕
まとめ
以上、日本語能力試験対策N1文法総まとめ(三修社)などを中心にまとめました。
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