「上手」と「得意」の違いについて考えましょう。
「上手」と「得意」
「上手」と「得意」は「うまくできるようす」を表すという点において、同一文脈で置き換え可能な場合が多いです。
- 母は草花を育てることが(上手/得意)です。
- 弟はカラオケで日本の演歌を歌うのが(上手/得意)です。
「上手」は私主語で使えない
しかし、次のような場合には「得意」しか使えません。
- 私は料理が(上手?/得意)です。
- 私はカラオケで日本の演歌を歌うのが(上手?/得意)です。
自分自身については「得意」とは言えても、「上手」とは言いにくい。これについて
「上手」というと自分の技術を自慢したことになるからだ。(?)
という説明がなされてきました。本当に「得意」だと技術自慢にならないのでしょうか?
自己肯定感にあふれた?「得意」
ためしに「得意」を辞書で調べて見ると、
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得意(国語辞典の語義)
自己肯定感にあふれています。そもそも中国語の「得意deyi」の意味は
自分の思い通りになり満足すること
なのです。ですから自分主語の文で「得意」を使った方が、より自慢したことになるのではないでしょうか。
観点を変えてみる
たとえば、次の例文を比べてみてください。
- あなたは何が上手ですか。△
- あなたは何が得意ですか。〇
ここでも、「上手」が使いにくいようです。ということは「自分」に使うと傲慢だからというのは理由にならないような気がします。
上手:他者評価、得意:自己評価
考え中ですが、こう考えると、とりあえずはうまくおさまるようです。

得意主観、上手客観
「得意」は主観評価(自己評価)だから、自分主語なら「得意」しかありえない。人に尋ねる場合も「当人に直接意見」を聞くなら「得意は?」とは聞けても、他者評価の「上手」かどうかは当人に聞いてもわかりません。
上記は、とりあえずそのように考えた方が理解し易い、という程度のことですが、皆さんのお考えはどうでしょうか。
以上、「日本語の難問」宮腰賢著 宝島親書などを参考にしました。
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