みんなの日本語(初級2)第46課の重要ポイントについて解説します。
テンスとアスペクト

テンスとアスペクト
「ところ」
- 会議は 今から 始まるところです。〔文型1〕
- 今から ごはんを 食べるところです。
文型1で提示された「辞書形+ところ」は「動作を始める直前」であることを表します。
「辞書形+ところ」「~ているところ」「~たところ」
引き続き、例文で「~ているところ」、「~たところ」を学びます。
- これから始まるところなんです。〔辞書形+ところ〕
- 今 調べているところです。〔~ているところ〕
- たった今 終わったところです。〔~たところ〕
図示すると以下のようになります。

「始まるところ」「調べているところ」「終わったところ」
「~たばかり」と「~たところ」、+「~たて」
「~たばかり」も「~たところ」とよく似ていて「動作が終了して間もない」局面を表します。
- 3月に大学を卒業したばかりです。〔文型2〕
- 先月会社に入ったばかりなので、まだよくわかりません。〔例文4〕
- 先月買ったばかりなのに、動かないんです。〔例文5〕
「~たところ」「~たばかり」
「~たところ」との違いとして「~たばかり」は「主観的に時間が短い」ことを示すので〔例文4〕のような例、「あの国は独立したばかりなので経済が不安定だ」のように数年レベルまでを「動作の直後」として表せるようです。
また、以下の典型的な例文比較を見ると
- 今、電車に乗ったところなので、あと1時間ちょっとでつくと思います。
- 入社したばかりなので、仕事の段取りがよくわからない。
〔参考〕「~たて」
よく似た表現に「~たて」があります、こちらは
- 炊きたてのごはんはおいしいね。
「~たところ」「~たばかり」「~たて」比較(まとめ)
「~たところ」「~たばかり」「~たて」の概念的比較です。

「たて」「ばかり」「ところ」の違い(まとめ)
「~はず」
第46課では、もう一つ「確信的判断」を示す「~はず」を学びます。
「~はず」「~にちがいない」
「~はず」「~にちがいない」は共に「話者が確信」している事柄を述べます。
- 部屋の鍵は佐藤君が持っているはずだ。
- 部屋の鍵は佐藤君が持っているにちがいない。
- 田中君は教室にいるはずだ。
- 田中君は教室にいるにちがいない。
上の例では「はず」「にちがいない」には意味上の差はなく相互に入れ替えて使えるようにみえます。
では、以下の例はどうでしょう。
- 今日は月曜日だから 博物館は締まっているはずだ。①
- 彼のことだから今頃 あの店で酔いつぶれているにちがいない。②
上の例で「~はず」「~にちがいない」を入れ替えて見ると、少し違和感が生じます。
- 今日は月曜日だから 博物館は締まっているにちがいない。△
- 彼のことだから今頃 あの店で酔いつぶれているはずだ。△
①の例:「月曜日は博物館、美術館は休館である」という「客観的根拠」のもとでの「確信」を示しています。これに対して②では、彼という人物の平素の行動から想像するという「主観的根拠」による「確信」を示しています。
「はず:客観的根拠、にちがいない:主観的根拠」による確信
以下にまとめます。

「はず」「にちがいない」違いまとめ
冒頭の「部屋の鍵は佐藤君が持っているに(はずだ/ちがいない)。」のような例は、「はずだ」を使えば、たとえば「今日佐藤君は鍵当番」だというような「客観的根拠」を元にした発話であることをにおわせ、反対に「ちがいない」だと「佐藤君は慎重でマメな性格だから」という主観的根拠で発話されているというニュアンスがあります。
〔参考〕「はずがない」と「ないはずだ」
「はず」の否定形は「はずがない」と「ないはずだ」の二種可能です。意味が少し異なります。
- 田中君は教室にいるはずだ。
- → 田中君は教室にいるはずがない。
- → 田中君は教室にいないはずだ。
これは次のように考えるとわかりやすいかもしれません。
「はず」というのは話者の確信的推量なので、「はず」は90%の確度で「いない」と考えると、
- 「はず+がない」は「90%のいない」確率を否定するので「いない確率は100%」
- 「ない+はずだ」は否定である「100%いない」に話者の確信90%を足すので「いない確率は90%」
たとえば以下の例文のような状況です。
- 田中君は今私と寮にいるのだから、教室にいるはずがない。
- 田中君はさっきは食堂に行くと言っていたから、教室にいないはずです。
以上
基礎日本語辞典 森田良行著 (角川書店刊)、初級を教える人のための日本語文法ハンドブック(スリーエーネットワーク社刊)などを参考にさせていただきました。


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