「ところが」と「それなのに」(「けれども」「しかし」との違い)

「ところが」「それなのに」

 以前「けれども」「しかし」「しかしながら」「だが」「だけど」「でも」を取り上げました。これらは、言葉の硬さ、強さの程度の差はあっても、用法上の差異はほとんどありませんでした。今回は「ところが」「それなのに」について「けれども」「しかし」との用法上の差に注目しながら調べていくことにしましょう。

「けれども」「しかし」は、ほぼ万能

「けれども」「しかし」(「しかしながら」「だが」「だけど」「でも」も同じですが以下記載しません)は、前件と後件が相反する対比的なことであれば、あまり制約がなく

後件には「事実」以外「(話者の)判断」「(話者の)意志」「命令」など来てもOK
  • がんばった。(けれども/しかし)、だめだった。(事実)
  • 母は留学に反対だ。(けれども/しかし)いつか許可してくれるだろう。(判断)
  • 母は留学に反対だ。(けれども/しかし)なんとか説得するぞ。(意志)
  • 状況は厳しい。(けれども/しかし)頑張れ!(命令)

 では、それぞれのケースで「ところが」「それなのに」が使えるかどうか調べましょう。

事実  
がんばった。
  • 〇 しかし、けれども
  • 〇 ところが、それなのに
だめだった。

(後件が「事実」の場合はすべて使えます。)

判断  
母は留学に反対した。
  • 〇 しかし、けれども
  • ✕ ところが、それなのに
いつか許可してくれるだろう。
意志  
母は留学に反対した。
  • 〇 しかし、けれども
  • ✕ ところが、それなのに
なんとか説得するぞ。
命令  
状況は厳しい
  • 〇しかし、けれども
  • ✕ ところが、それなのに
頑張れ!

(後件が「判断」「意思」「命令」の場合、「ところが」「それなのに」は使えません)

「ところが」と「それなのに」の違い①

疑問  
熱があるんでしょう。
  • 〇 けれども、しかし
  • ✕ ところが
  • 〇 それなのに
仕事に行くんですか?
禁止  
熱があるんでしょう。
  • ✕ けれども、しかし
  • ✕ ところが
  • 〇 それなのに
仕事しちゃだめだよ。

「それなのに」は「そういう状況であるのにもかかわらず」という意味となり、上のような「疑問」「禁止」の表現で使用可能でです。

「ところが」と「それなのに」の違い②

「ところが」「それなのに」は以下のように、共に「意外な後件」を述べる時に使いますが、

意外な後件  
早く家を出た。
  • 〇 ところが
  • 〇 それなのに
間に合わなかった。

想定外の新状況の発生時は「それなのに」しか使えません。

想定外の新状況の発生  
早く家を出た。
  • 〇 ところが
  • ✕ それなのに
途中でお腹が痛くなった。

以下の想定内の新状況発生と比べてみましょう。

想定内の状況の発生  
お腹の薬を飲んで出た。
  • 〇 ところが
  • 〇 それなのに
途中でお腹が痛くなった。

以上、「初級を教える人のための日本語文法ハンドブック」(スリーエーネットワーク社)などを参考にしました。

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