「ずくめ」と「づくし」の違いについて考えましょう。
「ずくめ」と「づくし」意味と用例
どちらも同じような事や物が多くあることを示すのですが、「ずくめ」は「結果的にそのものばかりになっている状態」、「づくめ」は「意図的に同類を全部集めた状態」をさします
「ずくめ」(竦め)「づくし」(尽くし)
そもそもどうして「ずくめ」は「す」に濁点、「づくし」は「つ」に濁点で表記するのでしょう?これは、もとになる言葉が違うという説が有力です。
「ずくめ」
以下は三省堂国語辞典第七版と最新の核第八版の説明比較です。語義は同じで変わっていませんが、第八版の記載では、〔由来〕欄が加わり「竦める:同類のものでおおったりして、身動きできなくすること」が語源であるとしています。
「竦める」と漢字で書くとなじみが薄いですが、「肩をすくめる」などのように「恐かったり、びっくしたりして、身体が縮んだように動かなくなる」が「すくむ」、動かなくなる状態にすること」が「すくめる」です。
さらに「すくめる」の語源として、農林水産省のホームページ「うちの郷土料理」青森編に「鮫のすくめ」という郷土料理紹介記事中、「すくめ」の語源についての興味深い解説がありました。
そのまま引用させていただきます。
〔鮫のすくめ〕「すくめ」の語源は「酢で包む」。津軽地方で「すぐめ」と発音する。津軽地方では縄文時代の遺跡調査からサメを食べていたことが分かっており、地元の食文化とサメは切っても切れない関係である。
「すくめ」は「す(酢)でつつむ」。「鮫のすくめ」という料理は、鮫の頭の身を野菜と共に酢味噌で合えた料理、とのことです。青森では縄文時代から鮫を食していたとありますから、この「鮫のすくめ」という名も、可能性としてはけっこう古いものなのかもしれません。
「すくめる」の現代用法は「肩をすくめる」などのように、身体の一部を硬くし表面積を小さくする方向への動作、ですから「すくめる」→「酢で包む」→「魚の身がしまる」からの連想で「肩をすくめる」という使い方になったと考えれば、納得がいきます。
「ずくめ」の語義「①そればかりでかためること」も、別に「身がしまる」わけではありませんが、「魚を酢でしめる」ように「あるもので全体を処理する」というような感覚でとらえれば、なんとなく感覚がつかめてくるようです。
「づくし」
「づくし」については新明解国語辞典第八版の説明が詳しく、以下のように書いてあります。
「づくし」が造語された背景が、「教育上の目的」とあります。同類のものを網羅的に学ぶために作られた教材につけた名前が「…づくし」の初めだったのでしょうか。
ちなみに「国づくし」の写真が見つかりました。
なるほど、そういう語源をもつのなら「なるべく多く列挙(できるだけ多く集める)」という「づくし」の特徴的意味がよく理解できます。
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