「かわいそう」と「きのどく」の違いについて考えましょう。
「かわいそう」と「かわいい」
まず「かわいそう」という言葉ですが、これは「かわいい」と元は同じで古語の「かわゆし」から派生した言葉なのです。「かわゆし」は
かわゆし:弱い立場の者に対して抱く”慈悲”の気持ちを表す
もので、現代語の「かわいそう」も「かわいい」も「下位の者に抱く感情」であるという点では共通しています。
その感情が「慈しむ」方向に傾いたものが「かわいい」、「同情する」気持ちに重きをおくと「かわいそう」になります。
「かわいそう」は下位者へ向かう感情
ですから「かわいそう」は必ず上位者から下位者へ向かう感情であることを忘れないでください。
亀をいじめたらかわいそうだよと浦島太郎は言いました。
目上の人に向かって「かわいそう」と言うのは原則少し失礼であるということになります。しかし、例えば、お酒に酔って母親に乱暴するお父さんに向かって子供が「お母さんがかわいそう!」と言うのは自然で、この場合は上位者=父親、下位者=母親の位置づけの中での発話とみることになります。
「きのどく」
「きのどく」は「気の毒」と書きます。これは他者に発生したと思われるマイナス状況に対し、
「あまりがっかりすると、”気の毒” つまり ”お身体に触ること” になってしまいますよ。」
という婉曲に慰める表現が元になっているわけで、言葉自体に丁寧さが含まれています。「お」をつけて目上の人にも使えます。
せっかくの旅行も雨続きとは、お気の毒です。
「かわいそう」と「きのどく」
「かわいそう」と「きのどく」は次のようにまとめられます。
- 「かわいそう」:下位者に対し手を差し伸べたい気持ち
- 「きのどく」:同等だがたまたま不運、不遇のため不幸な状況にある人への同情
「かわいそう」と「きのどく」
ペットが死んだら?
例えば、ペットが死んだら飼い主は「きのどく」、死んだ犬は「かわいそう」ということになります。
(以上、気持ちをあらわす「基礎日本語辞典」森田良行 角川文庫 などを参考にさせていただきました)
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